第九十話 故郷への帰還
第一幕 緊張の帰郷
「――ここが、私の故郷です」
アンドロメダ銀河に降り立ったアストラが、僅かに緊張した面持ちで、そう告げた。
「綺麗な所ですね」
ウェルが、辺りを見渡しながら、そう呟く。
「あ、あの、変に期待しないでくださいね。特に、何もない、普通の場所ですから」
アストラが目線を逸らし、ウェルに告げる。
「アストラさんが、緊張してるところ、初めて見ました」
ウェルが優しい笑顔で話す。
「そ、そんな事、ないです」
言葉とは裏腹に、アストラの声は、僅かに上ずっていた。
第二幕 母校にて
「まあ! アストラ、久しぶりね!」
母校を訪れると、恩師らしき人物が、懐かしそうに駆け寄ってきた。
「お久しぶりです、先生」
「そちらの方は……。もしかして、恋人?」
「ち、違います! 同じスターナイツの、仲間です!」
アストラが、慌てて否定する。
「あら、そう。それにしても、アストラも、立派になったわねぇ。小さい頃は、あんなに好き嫌いが多くて、困ってたのに」
「せ、先生!」
慌てて会話を止めようとするアストラ。
「虫歯ができた時なんて、大泣きしてねぇ」
悪気のない笑顔で話を続ける先生。
「そ、その話は……!」
アストラの顔が、みるみる赤くなっていく。
「あはは、アストラさんにも、そんな頃があったんですね」
ウェルが、微笑ましそうに、その様子を見つめていた。
第三幕 更なる暴露
「そういえば、宿題のデータ、登校中に壊しちゃった事、あったわよねぇ」
先生が顎に指を当てながら呟く。
「そ、それは……!」
視線を逸らすアストラ。
「泣きながら、家に帰ろうとしてたの、覚えてるわ」
優しい笑顔の先生、その笑顔に悪意がないからこそ、アストラは余計に動揺する。
「うう……」
アストラは、もはや、顔を覆いたい気持ちだった。
「先生、もう、そのくらいで……」
「あら、恥ずかしがらなくても、いいじゃない。可愛かったわよ」
容赦のない暴露に、アストラは、なす術もなく、ただ縮こまるしかなかった。
「アストラさんの子供時代、なんだか、想像すると微笑ましいです」
ウェルが、優しく、そうフォローする。
「か、からかわないでください……」
その反応に、ウェルは、ますます楽しそうに笑うのだった。
第四幕 小さな異変
「――ん?」
賑やかなやり取りの最中、ウェルが、ふと、遠くの気配に気づいた。
「あれは……」
街の外れから、住民達の、慌てたような声が聞こえてくる。
「なんだか、騒がしいですね」
二人は気を引き締める。
「様子を、見に行きましょうか」
アストラが、幾分、話題が逸れた事にほっとしながら、そう提案した。
だが、その先で待っていたのは――彼女にとって、決して忘れられない、ある"再会"だった。
(つづく)




