第九話 身内対決、そして持久の果て
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第一幕 弱点を晒す身内対決
「三回戦、第一試合。ミルキィ&クルーンチーム、対、アストラ&ウェルチーム」
ミルフィーの声が響き渡ると、会場は一気にどよめいた。
控え席の片隅では、既に勝ち点で優勝の目が消えたチームが、それぞれ気楽な様子で観戦を楽しんでいた。
「くそー、俺達、引き分けたのに勝ち点足りねえのかよ」
りょうけん座のキャンが、悔しそうにぼやく。
「まあ仕方ない。三角銀河との一戦は、実力負けだった」
しし座のレグルスが、案外あっさりとそう返す。
「僕らも、二回戦の変則対決でだいぶ点差をつけられちゃいましたからね……」
三角銀河のラグルも、苦笑しながら肩をすくめた。
「ま、俺達は俺達で、もう十分楽しんだしな!」
トライが呑気にそう言うと、アイルもケラケラと笑う。
そんな空気とは対照的に、舞台の上では、これまでで最も緊張感のある対決が始まろうとしていた。
「――正直、複雑な気持ちです」
アストラが、静かに呟く。
「相手が、ミルキィだから」
「僕も、同じです」
ウェルも、拳を強く握りしめた。
「でも……手を抜くのは、逆に失礼ですよね」
「そうだね」
ミルキィが、いつも通りの笑顔で頷く。
「私達も、全力でいくよ」
だが、その手には、これまでと変わらず小さな幕の内弁当箱が握られたままだった。
「はじめ!」
第二幕 じわじわ嬲る策
試合開始と同時に、アストラは大きく後方へ跳んだ。
「作戦通りです、ウェル。距離を取って、動き続けます」
「わかった!」
二人は、決して真正面から打ち合おうとしなかった。星を操るアストラの遠隔攻撃と、俊敏なウェルの牽制。二人がかりで、ミルキィを絶えず走らせ、動かし続ける。
「な、なんか今日、いつもよりよく動かされてる気がする……!」
ミルキィが息を切らしながら呟く。
「身内だからこそ、わかる事もあります」
アストラが、申し訳なさそうに、しかしはっきりと告げた。
「――ミルキィの弱点は、空腹。だから今回は、なるべく体力を消耗させる戦法でいかせてもらいます」
「ええっ、そんな露骨な!?」
「すみません……! でも、勝つ為には……!」
ウェルも、心苦しそうな表情を浮かべながら、それでも攻撃の手を緩めなかった。
少ない燃料で戦い続けるミルキィの動きは、次第に精彩を欠いていく。
「ギュルル……」
「あ、来た……」
クルーンが、後方で青ざめる。
「ま、まだ、大丈夫……!」
ミルキィは、小さな弁当箱の中身を、慌てて口に運んだ。だが、その量では焼け石に水だった。
第三幕 覚醒したクルーンの援護
「ミルキィ、下がって!」
クルーンが、鋭い声を上げて前に出た。
「あとは、僕が食い止める!」
これまで幾度となく格上の相手との戦いを経験してきたクルーンの動きは、以前とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされていた。
「ほう……」
アストラが、僅かに目を見張る。
クルーンは、アストラの遠隔攻撃の軌道を的確に読み、ウェルの踏み込みに合わせて反撃を差し込んでいく。
「これは……ホエードとの経験が、活きてるみたいだね」
ウェルが、驚きを滲ませながら呟いた。
「僕だって、大会を通して強くなってるんです!」
クルーンが、杖を構えながら叫ぶ。
その隙に、ミルキィが素早く残りの弁当を掻き込む。
「んぐんぐ……ふう、生き返った!」
「あ、ちょっとミルキィ、僕が稼いだ時間!」
「ありがとうクルーン! おかげでちょっと動けるようになったよ!」
ミルキィの動きに、再び精彩が戻り始めた。
第四幕 決着、そして激戦の代償
「これで、終わりにするよ」
ミルキィが、静かに拳を構える。
「対抗策は……もう、ないみたいですね」
アストラが、小さく息を吐いた。
「悔いはない。全力を出し切った」
ウェルも、静かに構えを解いた。
ミルキィの拳が、二人の隙をすり抜けるように、鋭く突き出される。だがそれは、これまでのような殺気立った一撃ではなく、どこか優しさを含んだ軌道を描いていた。
「そこまで! 勝者、ミルキィ&クルーンチーム!」
審判の声が響く。
「ふう……。今回は、本当に危なかったよ」
ミルキィが、額の汗を拭いながら笑う。
「私達の負けです。でも――いい経験になりました」
アストラが、清々しい表情でそう告げた。
「クルーンさん、正直、あなたの成長には驚かされました」
ウェルの言葉に、クルーンは照れくさそうに頭を掻いた。
「えへへ……ありがとうございます」
第五幕 持久の果て
同じ頃、もう一つの三回戦、ゼラ&ロラン対ホエードの戦いも、佳境を迎えていた。
「なんだこのグニャグニャは!? 俺の攻撃が、全然届かねえ!」
ゼラが苛立たしげに叫ぶ。
「空間移動能力か……厄介な相手だ。だが……!」
ロランが冷静に分析を続けるも、ホエードの掴みどころのない戦法の前に、二人は次第に消耗していった。
攻撃を当てる度に、僅かずつホエードに体力を吸い取られていく。持久戦に持ち込まれた末、まずゼラが膝をつく。
「くそ……体が、動かねえ……」
「……万策は尽きた。俺達は、大会を降りる」
ロランが、静かにそう告げた。潔い、彼らしい撤退だった。
「そこまで! 勝者、ホエード!」
こうして、ホエードは、初戦でのミルキィへの勝利、そして今回のマゼラン星雲コンビへの勝利という、二つの大きな戦果を引っ提げ、決勝へと駒を進めた。
「決勝は――ミルキィ&クルーンチーム、対、ホエード」
ミルフィーの声が、静かに、しかし確かな重みを持って会場に響き渡った。
王道の再戦。大会は、いよいよ最終決戦を迎えようとしていた。
(つづく)
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次回はホエードとの再戦です。
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