第八話 変則対決! 料理と人気投票
ご覧頂きありがとうございます、
第一幕 変則対決、開幕
「さあ、二回戦は少し趣向を変えて――純粋な戦闘力だけじゃない、スターナイツの総合力を試す種目よ」
ミルフィーの声が、会場に響き渡る。
「一つ目は、料理対決。二つ目は、この星域の生物達による人気投票対決。どちらも、真剣勝負である事に変わりはないから、気を抜かないでね」
「料理対決……」
選手席で、ミルキィの目がキラリと光った。
「僕らのお手のもの、って感じですね」
クルーンが、やる気満々に呟く。
その一方――三角銀河スターナイツの三人は、静かに、しかし異様な気合いを漲らせていた。
「聞いたか、ラグル、アイル。料理対決だ」
トライが低く呟く。
「ええ。ここは――『美』で圧倒しましょう」
ラグルの目に、これまでにない真剣な光が宿っていた。
「腕によりをかけてやるぜ」
アイルもまた、不敵な笑みを浮かべる。
三人の視線の先には、既に完成された芸術への確信めいたものがあった。
第二幕 料理対決
「よーい、はじめ!」
合図と共に、各チームが一斉に調理を始めた。
クルーンは、素早く手際よく、地球伝統の料理を丁寧に仕上げていく。味付けも盛り付けも堅実そのもので、審査員達が静かに頷きながら試食を進めていった。
「……美味い。地味だが、実に丁寧な仕事だ」
「地球の守り神、恐るべし……」
隣のブースでは、ホエードがグニャリと体を変形させ、まるで自分自身が調理器具であるかのように、鍋や泡立て器の形になって手際よく調理を進めている。
無言のまま、その完成度は淡々と、しかし確実に高かった。
「……無言だけど、仕事は丁寧ね」
ミルフィーを含む審査員が、感心したように呟く。
そして、問題の三角銀河ブースでは――
「トライ、皿の角度がまだズレている。三度、いや五度は右に回すべきだ」
「わかってる! この人参の飾り切りだって、正三角形の断面にこだわった渾身の一品なんだぞ!」
「いや待て、そもそもこのソースの掛け方が美しくない。もっと放物線を意識するべきだ」
三人は、味そっちのけで盛り付けの角度、配置の対称性、皿と皿の間隔にまで果てしなくこだわり続けていた。
「おい、そろそろ肉が冷めるぞ!」
「美しさの前では些細な問題だ!」
「ふざけるな、冷めた肉に美なんてあるかー!」
やがて三人は、盛り付けの美学を巡って本格的な言い争いを始めてしまう。
その一部始終を、少し離れた場所から眺めていたミルキィは、なぜか懐かしそうに目を細めていた。
「あはは……三角銀河の皆の料理って、美味しかったなー……」
ちなみに、肝心の自分のチームの料理対決には、いつの間にかまるで参加していなかった。
「あ、あの、ミルキィ、僕一人で作ってるんですけど……!」
クルーンの悲痛な声も、他のブースの見物にすっかり夢中なミルキィには届いていないようだった。
近くのブースからは、賑やかな声も聞こえてくる。
「燃えて来たぜえええ! 見てくれこの、闘志の炎のようなソース!」
ゼラが炎を上げながら鍋を振るう。
「おい……ほんとに燃えてるだろ、それ」
ロランが冷静に指摘するも、ゼラは気にする様子もなくノリノリのままだった。
やがて審査時間が終わり、結果発表となる。
「――地球チーム、味・完成度共に優秀。三角銀河チーム……」
審査員が、冷め切って崩れかけた芸術的な一皿を前に、複雑な表情を浮かべた。
「見た目への情熱は、確かに伝わってきました」
オブラートに包んだ講評に、三人は揃って項垂れた。
第三幕 人気投票対決
続く種目は、この星域に暮らす生物達による人気投票対決だった。
クルーンは、いつも通りの人懐っこさで子供達に囲まれ、地道に人気を獲得していく。
ホエードは、次々と姿を変え、大きなうさぎになったり、ふわふわの雲になったりして子供達を沸かせていた。
中でも一番人気だったのは――
「ケーキお兄さん! こっち向いて!」
「わあ、苺のショートケーキだ!」
精巧に再現されたケーキへの変身芸が、子供達に大好評だったのだ。
「……ケーキお兄さん、か。悪くない称号だ」
ホエードは、無表情のままそう呟いていた。
そして、三角銀河トリオは――
満を持して、特撮ヒーローショーさながらの華麗なパフォーマンスに打って出た。
「見よ! 我らこそ、正義の三角銀河スターナイツ!」
トライが、決めポーズと共に高らかに名乗りを上げる。
「その構えは、右足がもう少し前です」
「うるさい! これが俺の型だ!」
「いえ、美しさの基準から言えば、明らかに――」
ポーズの最中、些細な角度の違いから、三人はまたしても言い争いを始めてしまう。
「て、てめえ、俺のポーズにケチつけんな!」
「僕はただ、より美しい構図を提案しているだけです!」
やがて言い争いは、本気の小競り合いへと発展していった。
だが――観客達には、その光景がまるで最初から仕組まれた"演出"のように映っていたらしい。
「うおおお! 仲間割れするヒーロー、燃える展開!」
「かっこいい! 続き見せて!」
子供達も大人達も、本気の喧嘩をそのまま迫真の演技だと受け取り、大盛り上がりを見せていた。
「あ……あれ? 俺達、めちゃくちゃ受けてないか?」
我に返ったトライが、戸惑いながら呟く。
「……結果オーライ、という事にしておきましょうか」
ラグルも、少し照れくさそうに頬を掻いた。
こうして、人気投票対決は、三角銀河トリオ、クルーン、ホエードの三者が、それぞれ違った方向性で健闘を見せる結果となった。
第四幕 結果発表、そして三回戦へ
ミルフィーが、集計結果を手に、涼やかな声で告げる。
「料理対決、人気投票対決、共に接戦だったわ。でも――どちらの種目も、皆それぞれの持ち味がよく出ていて、見ていて楽しかった。審査員として、これは素直な感想よ」
その言葉に、選手達の間に、どこか和やかな空気が流れた。
「さて。次はいよいよ三回戦。ここからは、決勝進出をかけた、本格的な戦いになるわ」
ミルフィーの視線が、控え席のミルキィ達へと向けられる。
「ミルキィ&クルーンチーム、次の相手は――」
その一言に、会場中の視線が集まった。
大会は、ついに佳境へと差し掛かろうとしていた。
(つづく)
ここまでご覧頂きありがとうございます、
今回は息抜きギャグ回でした。
こんな戦いするスターナイツの姿も良いと思って下さったら、【ポイント評価☆☆☆)】や【ブックマーク追加】をしていただけると、執筆の大きな励みになります!よろしくお願いします!




