決勝、リベンジの刻
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「これより、スターナイツ大会、決勝戦を執り行います」
ミルフィーの声が、これまで以上に静かな緊張感を纏って響いた。
「対するは、ミルキィ&クルーンチーム。そして――初戦でミルキィを、二回戦でマゼラン星雲の二人を破ったホエード」
会場の熱気が一気に高まる。
「ここまで来たら、負けられないよ」
ミルキィが拳を握りしめて呟く。
「はい。今度こそ、僕が――」
クルーンも決意を滲ませていた。
「まずは、僕から行かせてください」
「クルーン……」
「大丈夫。今の僕なら何かできる気がするんです」
その真剣な眼差しにミルキィは小さく頷いた。
「うん。信じてるよ」
「はじめ!」
審判の声と同時に、クルーンはホエードへと肉薄した。
「今度こそ……!」
これまでの戦いで培った経験の全てを込め、クルーンは全身全霊で攻撃を叩き込んでいく。
ホエードは、相変わらず無表情のまま、その全てをふにゃりと受け流していた。だが――
「!」
その動きの中にクルーンは一瞬の"癖"を見出していた。
(空間へ回避する直前、ほんの僅かに、体の輪郭が固くなる……! そこだ……!)
クルーンは渾身の力を込めた一撃を、その僅かな隙へと差し込んだ。
「これで――!」
拳が、確かにホエードの体を捉えた。回避が僅かに間に合わなかったのだ。
「ぐ……!」
ホエードの体が、初めて痛みを堪えるように歪んだ。
だが、それも一瞬だった。
「――やるね」
フオンッ!!
空を切る音と共に、ホエードの反撃が、そのままクルーンを打ち抜く。
「が……はっ……」
クルーンは、大きく後方へ吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「そこまで!」
審判の声が響く。決着だった。
「クルーン!」
ミルキィが慌てて駆け寄る。
クルーンは痛みに顔を歪めながらも、満足そうに笑っていた。
「ミルキィ……今度は一撃入れたよ」
「うん……! ちゃんと見てたよクルーン!」
「あとは……頼んだよ」
クルーンがそう言い残し、選手席へと運ばれていく。
その傍らでホエードが、ボソッと呟いた。
「君、本当に強くなったね」
その声に、いつもの無感情な響きとは、少しだけ違う何かが混じっていた。
「さあ、大一番。ミルキィ、対、ホエード――再戦です!」
実況の声が響き渡り、ミルキィが舞台に上がる。
「今度こそ決着つけよう」
ミルキィが構えを取ると、ホエードは静かに頷いた。
「――僕も、同じ気持ちだよ」
「はじめ!」
試合開始と同時に、ミルキィは空間ごと歪ませる鋭い一撃を放つ。
だが、ホエードはその一撃が届く直前に体をグニャリと液状に変化させ、まるで水面をすり抜けるように回避した。
「空間を歪ませても……回避できるって事ね」
「そう。僕には、この体しかないから」
ホエードは淡々とそう告げると、体の一部を鋭く伸ばし、ミルキィの隙を突いてくる。
一撃、また一撃と、着実にミルキィの体力を削っていく。派手さはないが確実に相手を追い詰める戦法だった。
「くっ……!」
「――そろそろ、頃合いかな」
ホエードが小さく呟いた。
ミルキィの動きが、僅かに鈍り始めた頃。
ホエードの体が、再びグニャグニャと形を変えていく。
現れたのは――初戦のケーキとは比較にならない、豪華絢爛なご馳走のフルコース。
艶やかに焼き上がった高級肉のステーキ、幾重にも層を成したパフェ、湯気の立つスープまで精巧に再現されている。
「うわ……美味しそう……」
ミルキィの視線が思わずそちらへ吸い寄せられる。
「ギュルルルルル……」
会場に聞き慣れた音が響いた。
「ああ……万事休すか……」
選手席で、クルーンが半泣きの表情を浮かべる。
――だが。
「――美味しそう……だけどね」
ミルキィは動きを止めたまま静かに、けれどはっきりとそう言った。
「私の心とお腹を満たしてくれるのは……クルーンの料理なんだよ」
「!」
「どんな豪華なご馳走も、もう惑わされない。勝ってクルーンと食べる――クルーンの料理が銀河で一番美味しいの」
迷いのない、まっすぐな声だった。
ミルキィの瞳には空腹の揺らぎではなく、確かな覚悟の光が宿っていた。
「――どうやら、僕の負けだ」
その姿を見たホエードが観念したように呟く。
すると豪華なご馳走の姿が、ふっと元の体へと戻っていった。
「それは、戦闘だけの話じゃない」
その言葉に、ミルキィは静かに拳を構え、一気に距離を詰めた。
「私のパンチは――時空を引き裂いて、銀河をも消し飛ばすよ」
放たれた一撃が、ホエードの体を捉える。
「――ああ。それでいいよ」
ホエードは避けようともせず、静かにその一撃を受け止めた。
「そこまで! 優勝、ミルキィ&クルーンチーム!」
審判の声が、高らかに会場に響き渡った。
地面に横たわりながら、ホエードは静かに空を見上げていた。
(僕にも……心の通わした守り神が、いた)
その脳裏に、遠い記憶が過ぎる。かつて共に戦い、そしてもういない誰かの姿。
(僕がもっと、あの子を信頼してあげていれば……)
その先の記憶を、ホエードはそっと胸の奥にしまい込んだ。
「ホエード、大丈夫?」
気づけば、ミルキィが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「……ああ。大丈夫だよ」
ホエードは、いつもの抑揚のない声でそう答えると、ゆっくりと体を起こす。
「今度は……僕の話も、聞いてくれる?」
「うん、もちろん!」
ミルキィが満面の笑顔で頷いた。
会場には優勝を祝う歓声が響き渡っていた。クルーンが選手席から飛び出し、ミルキィに抱きつく。
「やったねミルキィ! 優勝だよ!」
「うん! クルーンのおかげだよ!」
二人の元へ、アストラやウェル、トライ達も次々と駆け寄ってくる。
そんな賑やかな光景を、審査員席でミルフィーが、優しい眼差しで見つめていた。
「本当に……あなたは規格外ね」
その呟きには、確かな誇らしさが滲んでいた。
こうして、スターナイツ大会は、幕を閉じた。
だが、ホエードの過去に眠る物語は――まだ、誰も知る者はいなかった。
ここまでの大会編は、スターナイツの紹介も含めた王道バトルの見せ場として書いてみました。
次回からは、ミルキィと他スターナイツ達が、宇宙へ旅立つ冒険の話になります。
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