第十話 決勝、リベンジの刻
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第一幕 決勝、開幕
「これより、スターナイツ大会、決勝戦を執り行います」
ミルフィーの声が、これまで以上に静かな緊張感を纏って響いた。
「対するは、ミルキィ&クルーンチーム。そして――初戦でミルキィを、二回戦でマゼラン星雲の二人を破った、ホエード」
会場の熱気が、一気に高まる。
「ここまで来たら、負けられないよ」
ミルキィが、拳を握りしめて呟く。
「はい。今度こそ、僕が――」
クルーンもまた、静かに決意を滲ませていた。
「まずは、僕から行かせてください」
「クルーン……」
「大丈夫。今の僕なら、何かできる気がするんです」
その真剣な眼差しに、ミルキィは小さく頷いた。
「うん。信じてるよ」
第二幕 クルーンの一撃
「はじめ!」
審判の声と同時に、クルーンはホエードへと肉薄した。
「今度こそ……!」
これまでの戦いで培った経験の全てを込め、クルーンは全身全霊で攻撃を叩き込んでいく。
ホエードは、相変わらず無表情のまま、その全てをふにゃりと受け流していた。だが――
「!」
その動きの中に、クルーンは一瞬の"癖"を見出していた。
(空間へ回避する直前、ほんの僅かに、体の輪郭が固くなる……! そこだ……!)
クルーンは、渾身の力を込めた一撃を、その僅かな隙へと差し込んだ。
「これで――!」
拳が、確かにホエードの体を捉えた。回避が、僅かに間に合わなかったのだ。
「ぐ……!」
ホエードの体が、初めて痛みを堪えるように歪んだ。
だが、それも一瞬だった。
「――やるね」
ホエードの反撃が、そのままクルーンを打ち抜く。
「が……はっ……」
クルーンは、大きく後方へ吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「そこまで!」
審判の声が響く。決着だった。
「クルーン!」
ミルキィが慌てて駆け寄る。
クルーンは、痛みに顔を歪めながらも、満足そうに笑っていた。
「ミルキィ……今度は、一撃入れたよ」
「うん……! ちゃんと見てたよ、クルーン!」
「あとは……頼んだよ」
クルーンがそう言い残し、選手席へと運ばれていく。
その傍らで、ホエードが小さく呟いた。
「君、本当に強くなったね」
その声に、いつもの無感情な響きとは、少しだけ違う何かが混じっていた。
第三幕 ミルキィ、再戦
「さあ、大一番。ミルキィ、対、ホエード――再戦です!」
実況の声が響き渡り、ミルキィが舞台に上がる。
「今度こそ、決着つけよう」
ミルキィが構えを取ると、ホエードは静かに頷いた。
「――僕も、同じ気持ちだよ」
「はじめ!」
試合開始と同時に、ミルキィは空間ごと歪ませる渾身の一撃を放つ。
だが、ホエードはその一撃が届く直前、体をグニャリと液状に変化させ、まるで水面をすり抜けるように回避した。
「空間を歪ませても……回避できるって事ね」
「そう。僕には、この体しかないから」
ホエードは淡々とそう告げると、体の一部を鋭く伸ばし、ミルキィの隙を突いてくる。
一撃、また一撃と、着実にミルキィの体力を削っていく。派手さはないが、確実に相手を追い詰める戦法だった。
「くっ……!」
「――そろそろ、頃合いかな」
ホエードが、小さくそう呟いた。
第四幕 豪華な罠、そして答え
ミルキィの動きが、僅かに鈍り始めた頃。
ホエードの体が、再びグニャグニャと形を変えていく。
現れたのは――初戦のケーキとは比較にならない、豪華絢爛なご馳走のフルコース。艶やかに焼き上がった高級肉のステーキ、幾重にも層を成したパフェ、湯気の立つスープまで、精巧に再現されている。
「うわ……美味しそう……」
ミルキィの視線が、思わずそちらへ吸い寄せられる。
「ギュルルルルル……」
会場に、聞き慣れた音が響いた。
「ああ……万事休すか……」
選手席で、クルーンが半泣きの表情を浮かべる。
だが。
「――美味しそう。だけどね」
ミルキィは、動きを止めたまま、静かに、けれどはっきりとそう言った。
「私の心とお腹を満たしてくれるのは……クルーンの料理なんだよ」
「!」
「どんな豪華なご馳走も、もう惑わされない。勝って、クルーンと食べる――クルーンの料理が、銀河で一番美味しいの」
迷いのない、まっすぐな声だった。
ミルキィの瞳には、空腹の揺らぎではなく、確かな覚悟の光が宿っていた。
「――どうやら、僕の負けだ」
ホエードが、静かにそう呟いた。豪華なご馳走の姿が、ふっと元の体へと戻っていく。
「それは、戦闘だけの話じゃない」
その言葉に、ミルキィは静かに拳を構え、一気に距離を詰めた。
「私のパンチは――時空を引き裂いて、銀河をも消し飛ばすよ」
放たれた一撃が、ホエードの体を捉える。
「――ああ。それでいいよ」
ホエードは、避けようともせず、静かにその一撃を受け止めた。
「そこまで! 優勝、ミルキィ&クルーンチーム!」
審判の声が、高らかに会場に響き渡った。
第五幕 エピローグ
地面に横たわりながら、ホエードは静かに空を見上げていた。
(僕にも……心の通わした守り神が、いた)
その脳裏に、遠い記憶が過ぎる。かつて共に戦い、そしてもういない、誰かの姿。
(僕がもっと、あの子を信頼してあげていれば……)
その先の記憶を、ホエードはそっと胸の奥にしまい込んだ。
「ホエード、大丈夫?」
気づけば、ミルキィが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「……ああ。大丈夫だよ」
ホエードは、いつもの抑揚のない声でそう答えると、ゆっくりと体を起こす。
「今度は……僕の話も、聞いてくれる?」
「うん、もちろん!」
ミルキィが、満面の笑顔で頷いた。
会場には、優勝を祝う歓声が響き渡っていた。クルーンが選手席から飛び出し、ミルキィに抱きつく。
「やったね、ミルキィ! 優勝だよ!」
「うん! クルーンのおかげだよ!」
二人の元へ、アストラやウェル、トライ達も次々と駆け寄ってくる。
審査員席では、ミルフィーが、そんな賑やかな光景を、優しい眼差しで見つめていた。
「本当に……あなたは、規格外ね」
その呟きには、確かな誇らしさが滲んでいた。
こうして、スターナイツ大会は、幕を閉じた。
だが、ホエードの過去に眠る物語は――まだ、始まったばかりだった。
(つづく)
ここまでの大会編は、スターナイツの紹介も含めた王道バトルの見せ場として書いてみました。
次回からは、ミルキィと他スターナイツ達が、宇宙へ旅立つ冒険の話になります。
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