第八十五話 教えて、あなたの事を
第一幕 語り始める言葉
「俺の、事……?」
クレドが、戸惑うように、その言葉を繰り返した。
「うん。クレドが、何を見て、何を感じてきたのか。私、ちゃんと知りたい」
ミルキィの瞳には、一切の駆け引きのない、素直な好奇心と、優しさが浮かんでいた。
クレドは、しばし、押し黙った。
「――俺は」
ぽつり、ぽつりと、言葉が溢れ始める。
「ずっと、声を上げられない場所にいた。誰にも、聞いてもらえない。だから、力で、示すしかなかった」
「うん」
「その先で、対話が通じない敵に、何度も出会った。仲間を、目の前で失った事もある」
その言葉の一つ一つに、ミルキィは、静かに耳を傾け続けた。
第二幕 背景で続く戦い
その間も、少し離れた場所では、クルーンの戦いが、続いていた。
「まだまだ、これからです!」
「く……! 何なんだ、この地球の守り神は……!」
力派のスターナイツが、驚愕の声を漏らす。
クルーンは、単独の力で、着実に、相手を押し込んでいった。
「僕は、皆を守りたいから、戦ってるんです。力を誇示する為じゃ、ありません」
その言葉と共に放たれた一撃が、相手を、静かに沈黙させた。
「僕らの想いは、力の大きさだけじゃ、測れませんから」
クルーンの、その静かな強さもまた、見ていた者達の心に、確かな爪痕を残していた。
第三幕 ミルフィーの告白
「クレド」
ミルフィーが、静かに、二人の間に加わった。
「あなたが負った悲しみも――私の責任でもあるわ」
「!」
クレドは静かに視線をミルフィーに向ける。
「私も、あなたがスターナイツになるずっと前から、戦い続けてきた。」
ミルフィーはクレドを見て続ける。
「対話する事のできない相手、改心する見込みのない相手を、この手で、消滅させてきたわ」
その声には、これまで見せた事のない、深い重みがあった。
「救えた命が、目の前で散る瞬間も見た。この手を汚す任務だって、あったわ」
「ミルフィー、さん……」
「だけど――その度に、己の無力さを嘆いて、涙を流しても。誰かが、助けてくれるわけじゃないの」
ミルフィーは、静かに、しかし確かな重みを持って、そう続けた。
「だから、私達にも、手を取り合って、信じて頂戴」
第四幕 揺らぐ心
「きっと、クレドは、本当は優しいのに」
ミルキィが、静かに、そっと付け加えた。
「周りが、優しいクレドでいさせてくれなかったんだね」
その言葉に、クレドの瞳が、大きく揺れた。
「私達を、信じて。一人で、抱え込まないで」
ミルキィの瞳が優しくクレドを見つめる。
「理解できなくてもいい。だから、クレドの事を、教えて」
その言葉は、クレドの心を少しづつ、解きほぐしてゆく。
「一人じゃできない事、皆で、考えていこうよ」
積み重ねられた言葉の数々が、クレドの心の奥深くに、静かに、しかし確実に、届き始めていた。
これまで、誰にも見せた事のなかった、彼の本当の弱さが――少しずつ、その表情に、滲み出していく。
(つづく)




