第八十三話 橋渡しの日々
第一幕 出発前の軽口
「――力派を、納得させる方法があるわ」
出発の準備をしていると、ミルフィーが、唐突にそう切り出した。
「えっ、本当!?」
ミルキィが、目を輝かせる。
「ええ。私が、全員ねじ伏せて、強引に言う事を聞かせるのよ」
「それじゃ、何も解決してないし……。力で封圧じゃないですかー」
クルーンが、思わず声を上げた。
「冗談に決まってるでしょ」
ミルフィーが、涼しい顔で、そう答える。
「こんな話に、まさか賛同してくる人がいないか、試したのよ」
「お姉ちゃん、笑えない冗談、やめようよ……」
ミルキィが、げんなりした様子で、そう突っ込んだ。
張り詰めた空気の中、そんな他愛のないやり取りが、ほんの少しだけ、心を軽くしてくれた。
第二幕 友情の橋
出発の前日、ミルキィは、思いがけない再会をしていた。
「あ……! お久しぶりです」
声をかけてきたのは、以前、共に任務をこなした事のある、力派に属するスターナイツだった。
「実は……。僕達も、困ってるんです」
「え?」
「どちらかを、強制的に選ばないといけないなんて……。正直、しんどくて」
その言葉に、ミルキィは、優しく頷いた。
「だよね。やだよね、そんなの」
「ミルキィさんに、こんな事言うの、変かもしれませんけど……」
「ううん、そんな事ない。ねえ、今日は――戦いでも、話し合いでもなく、ただ楽しくやろうよ」
ミルキィは、そう誘うと、力派の何人かを連れて、賑やかな食事の席を設けた。
「あはは、こんな風に一緒にご飯食べるの、久しぶりですね」
「うん! やっぱり、皆で食べると、美味しいよね!」
和やかな時間が、静かに流れていく。
第三幕 示された力の意味
その、穏やかな時間を切り裂くように――突如、遥か彼方から、強烈なガンマ線バーストが、この一帯へと迫ってきた。
「!」
「な、なんだ、あれは……!」
力派のスターナイツ達が、驚愕の声を上げる。
「危ない、皆下がって!」
ミルキィが、即座に前へと躍り出た。
「――えいっ!」
放たれた渾身の一撃が、迫り来るガンマ線バーストを、真正面から打ち消す。
「な……!」
その絶大な力を目の当たりにし、力派のスターナイツ達は、言葉を失った。
「危なかったね」
ミルキィが、いつもの笑顔で、皆を振り返った。
「私の力は、皆を守る為の力だから。私がいる限り、怪我なんてさせないよ! ……多分ね」
その最後の一言に、僅かな緊張が緩む。
「絶大な、力……。守る、為の……」
一人の力派のスターナイツが、呆然と呟いた。
「まだ……。僕には、わからない……」
その葛藤は、確かに、彼の中に、小さな一石を投じていた。
第四幕 旅立ちの時
「――さあ、そろそろ、行きましょう」
翌朝、ミルフィーが、静かに告げた。
「うん! クレド達と、ちゃんと話してくる!」
「僕も、お弁当、たくさん持ってきましたから!」
クルーンが、大きな包みを背負いながら、そう答えた。
「皆さんの無事を、祈っています」
見送りに来たアストラが、静かに告げた。
その言葉には、これまでの騒動を見てきた者としての、静かな実感が滲んでいた。
「アストラちゃん、ありがとう。行ってくるね!」
「三人だけで、大丈夫でしょうか」
「大丈夫だよ。それに――少人数だからこそ、伝わるものも、あると思うから」
ミルキィの言葉に、ミルフィーは、静かに頷いた。
「留守中の事は、任せてください。今回の件についての報告書も、既に完成しています」
アストラが、静かに告げる。
「相変わらず、仕事が早いね、アストラちゃん」
「信念のぶつかり合いというのは……。恐ろしいものですね」
アストラのその声には、直接同行できない事への、僅かな悔しさも滲んでいるようだった。
「うん。だからこそ、ちゃんと、話してくる」
ミルキィが、力強く、そう頷いた。
三人は、ファントム銀河――クレド達が集う場所へと、静かに、しかし確かな決意を持って、旅立っていった。
(つづく)




