第八十話 もう一つの物語
第一幕 旅立ちの理想
スターナイツとなったクレドは、当初、心の中に、僅かな期待を抱いていた。
(もしかしたら……。俺にも、心で救える相手が、いるかもしれない)
守り神から受け取った、その心の光を頼りに、クレドは、初めての任務に赴いていた。
「頼む、話を聞いてくれ!」
彼もまた、最初は、対話を試みていた。だが――
第二幕 届かなかった声
「無駄だ」
対峙した敵は、まるで意志の通じない、災害そのもののような存在だった。
「言葉なんて……。俺の攻撃を、耐える為の時間稼ぎにしかならねえ!」
クレドの声は、虚しく響くだけだった。
結局、彼は、力でその敵を打ち倒すしかなかった。
「くそ……。また、力でしか、解決できなかった……」
その悔しさを、クレドは、何度も、何度も味わう事になる。
ゼノンのような、傲慢な知性を持つ者。エールバードのような、孤独に暴走した者。
クレドもまた、ミルキィ達と同じような、対話不能な脅威に、幾度となく直面していた。
だが、彼には――ミルキィのような、絆を持つ仲間達との、決定的な"何か"が、足りなかったのかもしれない。
第三幕 仲間の犠牲
「クレド……! 助け、て……」
ある戦いで、共に戦っていた仲間が、目の前で、力尽きた。
「そんな……! 俺が、もっと早く、決着をつけていれば……!」
優しさを優先し、一瞬の躊躇いを見せた事が、致命的な隙になった。
「何で、俺達が……。何で、心を大事にした方が、こんな目に遭うんだ……!」
その悲痛な叫びは、クレドの中に、深い傷跡として刻まれていった。
仲間を失う度に、彼の中で、一つの確信が、静かに、しかし確実に育っていった。
(優しさだけじゃ、守れないものがある。ならば――俺は、力で、皆を守るしかない)
第四幕 割り切りへの道
「もう、迷わない」
クレドは、静かに、そう心に決めた。
「悲しむ者を、これ以上増やさない為に。俺は、力を、正しく使う」
その決意は、次第に、彼の周囲に、同じ痛みを抱えた仲間達を、静かに引き寄せていった。
「クレドさんの言う事、正しいと思います。俺達も、目の前で仲間を失ってきたから……」
「力があれば、あの時、あいつを救えたかもしれない」
共感する声が、少しずつ、しかし確実に、広がっていく。
「これは、平和の為だ」
クレドは、その言葉を、まるで自分自身に言い聞かせるように、繰り返し口にするようになっていた。
己の正義を貫いた先に、本当の平和があるのか――その問いに、彼自身、まだ、確かな答えを出せないまま。
もしかしたら、ミルキィ達が辿るかもしれなかった物語は、こうして、静かに、しかし確実に、形作られていった。
(つづく)




