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第七十八話 揺れる拳

第一幕 磨かれた牽制

「かつての俺の戦闘は、力押しだけだった」

 キャンが、拳を構えながら、静かに告げた。


「だが、今は――少しは、考えてるぜ」


「ウルフファング!」


 キャンの拳から、無数の光る矢が放たれ、クレドを取り囲むように迫る。



「――牽制技か」

 クレドは、冷静にそう見抜くと、最小限の動きで全てを弾き返し、そのまま鋭い反撃を叩き込んだ。



「ぐっ……!」

 キャンが、大きくよろめく。


 だが、それでも、諦めなかった。


「つえーな……。力量も、測らせねえってか……!」


第二幕 挑発と、乗らない意地

「力押しで、来てみろよ」

 クレドが、静かに、そう挑発する。


「――ムカつく言葉だが」

 キャンは、荒い息のまま、それでも冷静に構え直した。


「俺は、その挑発には、乗らねえ」


「ほう」

 クレドの目に、僅かな興味の色が浮かぶ。


 だが、実力の差は、依然として大きかった。


 キャンは、幾度も攻撃を繰り出すが、そのほとんどが、冷静に捌かれてしまう。


「くっ……!」

 次第に、キャンの動きが、押され始めていた。


第三幕 迷えるヴェガとレグルス

 その頃、少し離れた場所では、別の攻防が繰り広げられていた。



「ハッキリしろよ! お前ら、どっちの味方なんだ!」

 力派のスターナイツの一人が、苛立たしげに、ヴェガとレグルスへ拳を振るう。


「うわっ!」


「ぐっ!」


 二人は、なす術もなく吹き飛ばされた。


「んな事言ったって、俺達だってよ……」

 ヴェガが、痛む体を起こしながら、ぼやく。


「いきなり、どちらか選べって言われても、なあ……」

 レグルスも、困り果てた表情で頭を掻いた。



 深刻な対立の裏で、まだ態度を決めかねている者達もまた、少なくなかった。


 その姿は、この対立が、決して単純な二極化ではない事を、静かに物語っていた。


第四幕 見透かされた迷い

「――お前、迷ってるな」

 クレドが、キャンとの応酬の中、ふと、そう呟いた。


「な……! 何を――」


「拳に、迷いが出てる。俺の事を、まだ、完全に敵だと思いきれてないんだろう」


 図星を突かれ、キャンは、僅かに息を呑んだ。

「まさかお前に、それを言われるとはな……」


「お前のその甘さが――俺には、羨ましくもあり、腹立たしくもある」

 クレドの言葉には、これまでにない、複雑な響きが滲んでいた。


 その瞳の奥に、キャンは、一瞬だけ、深い孤独の色を見た気がした。

(コイツ……。本当に、俺達を憎んで、戦ってるわけじゃ、ねえのかもしれねえ)


 激しい拳の応酬の中、キャンの心にも、静かな迷いと、確かな覚悟が、同時に渦巻いていた。

(つづく)


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