第七十七話 代わりに立つ者
第一幕 迫る対峙
「クレド……!」
ミルキィが、混乱の中、真っ直ぐにクレドへと向き合おうとした。
その時――
「――待て」
その進路を、キャンが、静かに塞いだ。
「キャン?」
「お前は、コイツと戦いたくないだろ。仲間を殴るのが、一番辛いって事、知ってるからな」
その声からは、これまでにない、確かな覚悟が滲み出ている。
「だから――俺が、代わりに立つ」
第二幕 鏡合わせの対峙
「お前が、俺の相手か」
クレドが、静かに、キャンを見据える。
「ああ。俺は――お前の気持ち、正直、わからなくもねえんだよ」
拳を構えたキャンが、静かに告げた。
「力の差ってやつに、絶望した事もある。誰かに認めてもらいたくて、闇に呑まれかけた事もある」
「だから、俺は、力で証明するしかなかった、お前の痛みが、少しはわかる。……それでも」
キャンの瞳に、確かな光が宿った。
「俺は、心で救われた。だから、お前とは、違う道を選んだ」
その言葉に、クレドは、僅かに動揺したように見えた。だが、すぐに、感情を押し殺すように、表情を引き締める。
「――綺麗事だ」
「かもな。それでも、俺は、この綺麗事を、信じ続ける」
二人は、静かに、しかし確かな決意を持って、拳を構え対峙する。
ミルキィと戦いたくないクレドにとって、これは、実質的な"逃げ道"であり――同時に、力で自分を証明せざるを得ない、避けられぬ戦いでもあった。
第三幕 燃える闘志と、冷静な指摘
「うおおおおお! 燃えて来たぜえええ! 力だって言うんなら、やってやるよ!」
少し離れた場所で、ゼラが、力派のスターナイツの一人と、勢いよく対峙していた。
「待て、ゼラ」
ロランが、冷静に、その肩を掴む。
「なんだよ、ロラン! 今更、止めるのか!?」
「違う。よく見ろ」
ロランが、静かに、力派のスターナイツ達を見渡した。
「あいつらが言ってるのは、腕試しじゃない。暴力だ」
「それに――あいつらは、俺達のように、一つの心で繋がるつもりはない相手だ」
その指摘に、ゼラは、僅かに冷静さを取り戻した。
「……確かに、な」
ゼラとロランは、かつて一つだった魂を持つ者同士だからこそ、感覚的に見抜けるものがあった。力派の結束の裏にある、本質的な"孤独"を。
第四幕 力と力、そして想い
「行くぞ、キャン」
クレドが、鋭く踏み込む。
「おう!」
キャンも、力強く応戦する。
拳と拳がぶつかり合う度に、二人の間に、言葉にならない何かが、確かに交わされていく。
「お前の痛みは、わかる。でも、それを、力だけで片付けさせやしねえ」
「綺麗事を、力で黙らせてやる」
激しい応酬の中、キャンは、ふと、クレドの拳に、僅かな迷いを感じ取った。
(コイツ……。本当は、迷ってるのか……?)
その微かな気づきを胸に、キャンは、なおも真っ向から、クレドと向き合い戦う。
互いの想いをぶつけ合う、痛みを伴う戦いが、静かに、しかし確かに、続いていった。
(つづく)




