第七十二話 見守るという選択
第一幕 一人で行くという事
「クルーン、私も一緒に――」
「ミルキィ…」
クルーンが、いつになく、真剣な顔で、ミルキィの言葉を遮った。
「今回は、僕達、惑星の守り神だけの集まりなんです。だから――ミルキィさんは、ここで、僕達が戻ってくるのを、待っていてください」
「え……」
「心配しないでください。これは、僕達自身の事ですから」
クルーンは、そう言い残すと、一人、惑星の守り神達の会合へと向かっていった。
その背中を見つめながら、ミルキィの胸には、言葉にならない寂しさが、静かに広がっていた。
(クルーンに……。置いていかれちゃった……)
しばらく、その場に立ち尽くしていたミルキィだったが――やがて、そっと、後を追う事にした。
第二幕 陰からの見守り
銀河の片隅で開かれた会合には、様々な星から集まった、惑星の守り神達の姿があった。
「――それでは、強化合宿の方針と、選抜する惑星について、話し合いましょう」
主催者らしき存在の声に合わせ、クルーンが、皆をまとめながら、方針を決めていく。
「クルーン、頼りにしてるよ」
「僕にできる事は、精一杯やります」
その頼もしい姿を、ミルキィは、物陰から、そっと見つめていた。
(クルーン、こんな所でも、頑張ってるんだ……)
寂しさと、誇らしさが入り混じった気持ちで、ミルキィは、静かにその様子を見守り続けた。
第三幕 突然の襲撃
「――ぐぎゃああ!」
突如、複数の災厄生命体が、会場に押し寄せた。
「な……!」
その場にいた守り神達が、一斉に色めき立つ。
ミルキィは、とっさに拳を構えかけた。
「もし、ここで私が出たら……。クルーンに、バレちゃう……」
だが、すぐに、その手を止めた。
「ううん……。そんな事は、いいの。クルーンが、一人で行くと決めた事……。万が一の時に、一人で戦う覚悟を決めた事を、踏みにじる事になっちゃう……」
拳を、静かに下ろす。不安げな瞳で、ミルキィは、物陰からクルーン達を見つめ続けた。
「――キャンディクルーンだ!」
クルーンが、即座に変身し、応戦する。だが、敵の数は、想像以上に多かった。
「くっ……!」
他の守り神達も、次々と参戦していく。数の上では、守り神が圧倒的に優勢だった。
だが――攻撃が、ほとんど通用しない。
「痛くない……。まるで、生半可な力なんて、意味がないみたいだ……!」
誰かの悲鳴が、響き渡る。
全体の戦闘力では、明らかに、災厄生命体側が上回っていた。
クルーンは、他の守り神を庇いながら、次第に劣勢へと追い込まれていく。
「クルーン……!」
ミルキィの瞳に、堪えきれない涙が浮かんだ。それでも――彼女は、拳を構えなかった。
(信じる……。クルーンの想いを、尊重するって、決めたから……)
第四幕 葛藤の果てに
「グヒヒヒ! 面白そうな集会じゃねーか!」
「グヒ! 壊しがいがあるってもんよ!」
突如、後方から、三体の災厄生命体が姿を現した。
「く……! ここは、通さないよ!」
ミルキィは、思わず拳を構える。だが、すぐに、また葛藤に襲われた。
「この三体なら……。私が倒しても、いいよね……。でも――本当に、それを、クルーンが望んでるのかな……」
悲しげな表情で、ミルキィは、なおも自問し続ける。
「グヒ! コイツ、さては勝てないと悟ったな! いくぞ!」
災厄生命体が、勢いよく襲いかかろうとした、その瞬間。
三体が、揃って大きく仰け反った。
「いってぇ! なんだ、今のは!?」
「戦意喪失した相手を殴るなど……」
「美しくない」
「ミルキィに代わって、我ら三角銀河のスターナイツが、相手をしよう!」
颯爽と現れたのは、トライ、ラグル、アイルの三人だった。
「み、みんな……! でも、これは、クルーンの――」
ミルキィの言葉を遮るように、トライが、はっきりと告げた。
「これは、偶然通りかかったスターナイツの仕事だ。ミルキィとクルーンに何があったかは知らんが――これは、我々が勝手に引き受けた事。気にするな」
「みんな……。ありがとう……!」
ミルキィは、堪えていた涙を、静かにこぼした。
クルーンの覚悟を守りながらも、決して一人ぼっちにはさせない――そんな優しい配慮が、その場に、確かに存在していた。
(つづく)




