第七十一話 台無しな結末
第一幕 全てが消し飛ぶ
「もう、知らない! えいっ!」
ミルキィの拳が、ホエードの反撃と真正面からぶつかり合う。
「アストラルクランプ!」
「トライアングル・グローリー!」
次々と繰り出される、それぞれの必殺技。
「うわあああっ!」
クルーンの悲鳴と共に、会食の卓が、ものの見事に吹き飛んだ。
その中心にあった、ギャラクシーフルーツも、スイーツも――全てが、激しい衝撃の中に飲み込まれていく。
轟音が収まった後に残ったのは、見る影もなく破壊し尽くされた、会食会場の残骸だけだった。
「あ……」
我に返った一同が、呆然と辺りを見渡す。
「フルーツ、が……」
ミルキィが、震える声で呟いた。
どこにも、無事なギャラクシーフルーツの姿はなかった。
第二幕 残骸を味わう者
「あー……。もったいねえな……」
ゼラが、瓦礫の中から、辛うじて形の残ったフルーツ入りプリンの欠片を見つけ出した。
「無事なとこ、あったからちっと味見するわ」
息をふうふうと吹きかけ、埃を払うと、ゼラは、それを躊躇なく口に運んだ。
「んー、結構イケるな、これ!」
「みっともないだろうが……」
ロランが、額に手を当て、深く項垂れた。
「いいだろ別に、勿体ないんだから」
「せめて、少しは気にしろ」
「勿体ねえな……。ご馳走を、こんなにしちまって……」
同じように瓦礫を漁っていたキャンも、欠片を一つ拾い上げ、味見してみせる。
「ん、結構イケるな、これ」
「やめなよ……」
クルーンが、涙目でそう突っ込んだ。
第三幕 ミルフィーの秘密
「はぁ……。本当に、とんでもない事になったわね」
ミルフィーが、深いため息をついた。
「お姉ちゃんも、悔しいでしょ? せっかくのフルーツ、全部だめになっちゃって」
ミルキィが、しょんぼりとそう言う。
「まあ……。仕方ないわね」
ミルフィーは、意外にも、あっさりとそう答えた。
「あれ、お姉ちゃん、あんまり悔しそうじゃない?」
「べ、別に。……そうね」
ミルフィーは、僅かに視線を逸らしながら、静かに呟いた。
「実は、会食が始まる前に、味見を一切れだけ、しておいたから」
「ええっ!? ズルい!」
「準備の一環よ、これも」
涼しい顔でそう言い切るミルフィーに、ミルキィは、悔しそうに頬を膨らませた。
第四幕 台無しな結末、そして日常へ
「あの……。皆様……。この会場、弁償は、どちらに……」
銀河連合の上層部が、震える声で、恐る恐る尋ねた。
「そ、それは……」
クルーンが、気まずそうに視線を泳がせる。
「あはは……。それは、皆で、少しずつ……」
ミルキィが、へらりと笑いながら、誤魔化すようにそう言った。
結局、誰の手にも、ギャラクシーフルーツは残らなかった。
賑やかすぎる一日の終わりに、それぞれが、なんとも言えない苦笑いを浮かべながら、帰路につく。
「また、機会があったら、次は皆で仲良く食べようね」
ミルキィが、明るくそう締めくくった。
「その前に、まず、今日の後始末をしましょうね」
アストラが、静かに、しかし呆れ気味にそう返した。
賑やかな笑い声が、破壊された会場の跡に、しばらく響き続けていた。
(第十一部・完)




