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第六十九話 幻の果実

第一幕 幻の果実

「――ねえクルーン、聞いた? ヴォイド宇宙で、ギャラクシーフルーツが栽培されるようになったんだって!」

 ミルキィが、目を輝かせながら、そう切り出した。


「え、本当ですか?」


「まだ流通量は少ないし、高価らしいんだけど……。私とクルーンの分くらいなら、確保できそうな気がする!」


「行きましょう、ミルキィさん!」


 二人は、すぐさま意気投合し、ヴォイド宇宙へと向かう算段を立て始めた。


 その会話を、たまたま伝令に訪れていたアストラが、静かに聞いていた。

(ギャラクシーフルーツ……。二人だけで、食べに行こうとしてる……)


 アストラの表情に、これまでにない、静かな闘志が滲む。


「実は、ヴォイド宇宙では今、ミルフィー様が銀河連合との会合に出席されています」

 アストラが、伝令の内容を、静かに呟く。


「会合……。という事は、きっと、ギャラクシーフルーツが振る舞われる……。私に黙って……。それに、ミルキィは、もう一度食べた事があるのに……」


 その呟きは、誰の耳にも届かないまま、静かに消えていった。


 同じ頃、くじら座不規則星雲の独自の情報網にも、ギャラクシーフルーツ栽培の噂は届いていた。


ホエードは、既に、密かにヴォイド宇宙へと向かっていた。


第二幕 会合に潜む乙女心

 会合の場、紫のレースがあしらわれた、黒く美しいロングドレスに身を包んだミルフィーは、銀河連合から丁重に迎え入れられていた。


「いつもありがとうございます、スターナイツ。この宇宙の平和は、我々の文明力だけでは――」

長々と続く、連合上層部の話。


(ギャラクシーフルーツ……)


「ミルフィーさん、こちらの議案については、いかがでしょう」


「私としても、提案に賛成です。これにより、銀河の――(ギャラクシーフルーツ……)」


「銀河連合が現在直面している問題について、スターナイツにお伺いしたい」


「方針は良いですが、これでは、銀河のエネルギー問題が解決されません。こちらは小規模の連合に任せ、文明力の低い地域は、我々スターナイツが――(早く、出てこないかしら……)」


 笑顔で議案に真剣に応じながら、その内心は、妹に負けず劣らずの乙女心で溢れていた。


 やがて会合が一段落し、盛大な会食の場が設けられる。


 ギャラクシーフルーツが、いよいよ運ばれてきた。


「ああ、やっと来たわ」

 ミルフィーは、口元だけで、静かに微笑んだ。


第三幕 姉妹、鉢合わせ

 その少し前。



「ええっ!? ギャラクシーフルーツ、もうないんですか!?」

 ヴォイド宇宙の農場に到着したミルキィは、涙目で生産者に詰め寄っていた。


「なんでも、銀河連合の会合が開かれるみたいで、今年の生産分は、全部出ちゃったんだよ……」


「そ、そんなぁ……」


 肩を落とすミルキィに、生産者は、思い出したように提案した。


「でも、あんたスターナイツでしょ? 銀河の平和に貢献してる存在だから、会合に行けば分けてくれるはずだよ」


「え、本当!? でも……。怒られたり、迷惑じゃないかな?」


「平気だよ。連合も、スターナイツには頭が上がらないからね」


「やったぁ! じゃあ行こう、クルーン!」


「え、待って、僕はスターナイツじゃ……」


 クルーンの不安をよそに、ミルキィは、瞬間移動でクルーンの手を引き、会合の場へと向かった。




 そして――




「お姉ちゃん、また私に黙って!」


「な……! なんで、あんたがいるのよ……」


「なんで、お姉ちゃんがいるの?」



 ギャラクシーフルーツを美味しそうに見つめるミルキィと、それを死守しようとするミルフィー。



 二人の視線が、真正面からぶつかり合った。



「あのね……。私はスターナイツのリーダーだから、こういった場に出席する義務があるの。それでね……」

 ミルフィーが、呆れたように取り繕う。


「嘘だ! お姉ちゃん、前にもフルーツの情報を、こっそり消そうとしたよね!」


「あ、あのねミルキィ、こういう場で、そういう話は――」

 ミルフィーが、苛立ちを抑えながら、焦り気味にミルキィを窘めようとする。



「あの……。スターナイツ様……?」

 銀河連合の上層部が、心配そうに、じりじりと距離を取り始めていた。


 平穏だったはずの会食の場に、不穏な空気が、静かに立ち込め始めていた。

(つづく)


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