第六十七話 安らかな眠り
第一幕 再びの対峙
出発の直前、ミルキィが、ふいに立ち止まった。
「――待って」
その声に、皆が振り返る。
「ラクリマは……。誰もいない宇宙で、たった一人で、皆を守ってきたんだよね」
ミルキィの拳が、震えていた。
「なのに……。なんで、私達が、ラクリマを消さなきゃいけないの……! おかしいよ、そんなの……!」
その叫びに、誰も、すぐには答えられなかった。
ミルフィーもまた、静かに、目を伏せる。
「私だって……。本当は、生き返らせてあげたい。助けてあげたい」
「!」
「でも、ミルキィ。もう、ラクリマの体は――限界を、超えてしまっているの」
ミルフィーの声にも、堪えるような響きがあった。
「これは、罰でも、裁きでもないわ。ラクリマを、これ以上、苦しませない為の――最後の優しさよ」
ミルキィは、しばし、唇を噛んだまま、動けずにいた。
だが、やがて、静かに、涙を拭う。
「……うん。わかってる。わかってるよ、本当は」
「ラクリマ」
ミルフィーが、静かに、赤い星の前に立った。
「あなたの想い、確かに受け取ったわ」
第二幕 最後の力
「皆、力を貸して」
ミルフィーの呼びかけに、一同は、静かに頷いた。
「ラクリマ……。あんたも、精一杯、頑張ったんだよな」
キャンが、涙を堪えながら、静かに拳を構える。
「今度は、俺達が、あんたの分まで、ちゃんと戦うから」
「あなたの願い通り、私達が引き継ぎます」
アストラが、静かに、星々を呼び寄せる。
「もう、苦しまなくていい」
クルーンが、優しく、そう呟いた。
「安らかに――眠ってください」
ホエードの声にも、深い慈しみが込められていた。
第三幕 解き放たれる想い
「ラクリマ」
ミルキィだけでなく、その場にいた全員の声が、静かに重なった。
名前を呼ばれたその瞬間――赤い光の奔流が、一瞬だけ、揺らいだ。
「私の、渾身の一撃は」
ミルキィが、静かに拳を構える。
「時空を引き裂いて、銀河をも消滅させちゃうよ」
その声には、これまでのどんな時よりも、優しさが滲んでいた。
「――でも今回は、あなたを、楽にしてあげる為の一撃」
拳を構えたまま、ミルキィの腕が、ほんの一瞬、止まった。
(本当に……。これでいいの……?)
だが、その迷いを断ち切るように、ミルキィは、静かに目を閉じた。
(ラクリマ。あなたの戦いを、ちゃんと、受け継ぐから)
放たれた一撃が、皆の想いを乗せ、赤い星へと吸い込まれていく。
「ありがとう」
誰の耳にも、確かにそう聞こえた気がした。
赤い星が、まるで長い眠りにつくように、静かに、優しい光へと変わっていく。
第四幕 静かな終わり
やがて、光は、ゆっくりと空へと溶けていった。
後に残ったのは、穏やかな、静寂だけだった。
「――終わった、のね」
ミルフィーが、静かに空を見上げる。
「ラクリマ……。ありがとう。そして、ごめんね」
ミルキィが、涙を拭いながら、静かにそう呟いた。
「あんな悲劇、二度と起こさせねえ」
キャンが、拳を握りしめながら、力強く告げる。
「それが、俺達の役目だからな」
一同は、しばし、無言のまま、静かな空を見つめ続けていた。
悲しみと共に、確かな決意を胸に刻みながら。
超戦士スターナイツの物語は、この静かな終わりを経て、また新たな一歩を踏み出そうとしていた。
(つづく)




