第六十六話 一人で戦っていた者
第一幕 立ち止まる時間
「――一旦、退きましょう」
ミルフィーの声に、皆は、傷ついた体を庇いながら、赤い星から距離を取った。
「キャン、大丈夫?」
ミルキィが、心配そうに問いかける。
「……悪い。情けねえとこ、見せちまったな」
キャンは、力なく笑いながら、そう答えた。
「もう、辞めたい、なんて言った俺が、一番情けねえよ」
「そんな事、ないよ」
ミルキィが、静かに首を振った。
だが、その場の空気は、依然として重苦しいままだった。
第二幕 語られる真実
「――世の中、綺麗な事だけしていたら、解決出来ない問題があるのよ」
ミルフィーが、静かに、しかし確かな重みを持って、語り始めた。
「長く生きていると、世の中の理不尽にも、汚いものにも、沢山触れなければならない」
「お姉ちゃん……」
「きっと、ラクリマも――綺麗なままでいたかったはずよ。でも、世の中の色んなものに触れすぎて、限界だったの。本当は、誰かに、助けてほしかったのかもしれない」
その言葉に、キャンが、はっとした表情を浮かべる。
「私達スターナイツと違って、ラクリマは、一人で戦ってきた。ずっと、一人でね」
「一人で……」
アストラが、静かにその言葉を繰り返した。
第三幕 託された祈り
「感じたでしょう。ラクリマから溢れてきた、色んな感情」
ミルフィーが、静かに続ける。
「悲しみ、怒り、優しさ、愛……。そして最後に流れてきたのは――愛と、悲しさと、諦めと。それから、確かな希望だった」
「希望……?」
クルーンが、驚いたように問い返す。
「ええ。もう、後戻りできない自分を、自覚していたんだと思う。だから――負の感情も、悪も、全部もろとも、消滅させてほしい。そう願っていたんじゃないかしら」
ミルフィーの声に、深い悲しみが滲んだ。
「そしてきっと――こんな悲劇を、繰り返さないでほしい。そう、次の世代に託していたのよ」
第四幕 果たすべき役目
「もし、ラクリマが赤い涙を流し始めた時代に……。私達スターナイツが、生まれていたら」
ミルフィーが、静かに、そう呟いた。
「誰かが、寄り添ってあげられていたら――こんな結末には、ならなかったかもしれない」
その悔恨の言葉に、一同は、しばし沈黙した。
「だから、今度は私達が、その役目を果たすの」
ミルフィーが、皆を見渡しながら、静かに、しかし力強く告げた。
「一人で苦しみの限界に達してしまった、かつての英雄を――安らかに、眠らせてあげましょう」
「……ああ」
キャンが、静かに、力強く頷いた。
「あいつの分まで、俺達が、ちゃんと見送ってやらねえとな」
絶望に沈みかけていた仲間達の目に、再び、確かな決意の光が灯り始めていた。
(つづく)




