第六十一話 小さな理論派
第一幕 膨れっ面の理論派
「アストラちゃん、お腹すいてない?」
ミルキィが、幼いアストラに、優しく声をかける。
「すいて、ないもん」
小さなアストラは、そう言いながらも、お腹をきゅるると鳴らしていた。
「あはは、じゃあ、少し食べよっか」
「べ、別に……。食べたいわけじゃ、ないの」
ぷいっとそっぽを向きながらも、差し出された食べ物には、しっかり手を伸ばしている。
「アストラさん、理論派なのに、意地っ張りなところは、変わらないんですね」
クルーンが、微笑ましそうに呟いた。
「り、りろんは……。今は、関係ないもん」
幼いアストラは、涙目になりながら、ぷっくりと頬を膨らませた。
その様子に、皆が、思わず笑みをこぼす。
第二幕 理屈が通じない歯痒さ
「ねえアストラちゃん、どうして空は青いか知ってる?」
ミルキィが、無邪気に問いかける。
「そんなの……。知ってる、もん」
「じゃあ、教えて?」
「――う」
幼いアストラは、言葉に詰まった。本来の彼女なら、瞬時に理路整然と説明できたであろう問いに、今は上手く答えられない。
「あ、あれは……。その……」
「アストラちゃん?」
「わ、わかんない! それは、今は関係ないもん!」
幼いアストラは、大きな声でそう叫ぶと、目にいっぱいの涙を溜めてしまった。
「あ、あはは……。理詰めできない自分に、一番腹が立ってるみたいですね」
クルーンが、苦笑いを浮かべながら、そっと頭を撫でた。
第三幕 解決策の提案
「――さて。そろそろ、対策を考えましょうか」
ホエードが、落ち着いた様子でそう切り出した。
「対策、あるの?」
ミルキィが、期待を込めて尋ねる。
「この星雲の幼児化は、時間が経てば自然と解けます。ですが、少し早める方法もあります」
「どうやって?」
「本人に、"本来の自分"の姿を、強く思い出させる事です」
ホエードが、静かに告げた。
「そこで、僕の変身能力の出番、という訳です。」
続けてホエードが付け足す。
「この星雲にいる間は、皆さんも変身能力が使えますよ」
第四幕 変身対決、開幕
「よし、それじゃあ、皆で協力しよう!」
ミルキィが、元気よくそう提案する。
「まずは、お題に沿った変身をして、アストラちゃんに見せてあげよう。一番"アストラちゃんらしい姿"を思い出させられた人が勝ち、ってルールでどう?」
「面白そうです! やってみましょう!」
クルーンも、乗り気にそう応じた。
「では――第一のお題は」
ホエードが、静かに告げる。
「『一番、知的に見えるもの』」
「よし、任せて!」
クルーンが、真っ先に名乗りを上げた。
賑やかな変身対決の幕が、静かに切って落とされようとしていた。
(つづく)




