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超戦士スターナイツ  作者: 海原ナギサ
銀河闘争編
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第六話 スターナイツ大会・開幕

ご覧頂きありがとうございます、今回からスターナイツ大会編です。

第一幕 大会開幕

「――というわけで、今回は各銀河から選りすぐりのスターナイツが集結する、記念すべき大会よ」

 会場中央、審査員席に優雅に腰掛けたミルフィーが、涼やかな声で開会を告げた。

「ルールは至って単純。チーム対抗の総当たり戦、勝ち点制。細かい事は気にしなくていいわ。最終的に成績上位のチームで、決勝を戦ってもらうから」

「ゆるっ!」

 クルーンが思わず声を上げる。

「細かすぎるルールなんて、覚える方も疲れるでしょう? それに――」

 ミルフィーは、悪戯っぽく微笑んだ。

「単純な方が、番狂わせも起きやすくて面白いじゃない」

 会場には、これまで積み重ねてきた縁のある顔ぶれが揃っていた。三角銀河のトライ・ラグル・アイル、アストラとウェル、そして今回初参戦となる、マゼラン星雲のゼラとロラン、くじら座不規則星雲のホエード。

 そして――くじ引きの結果、初戦の組み合わせが発表される。

「第一試合。ミルキィ&クルーンチーム、対、ホエード――単独エントリー」

「単独!?」

 どよめく会場。

「そう、彼、一人でエントリーしてきたのよ。変わってるでしょう」

 ミルフィーは涼しい顔でそう言うと、続けてもう一つ、爆弾のような発表をした。

「あ、それと今回、ミルキィには特別ルールを設けさせてもらったわ。試合中に食べられるのは、この小さなお弁当箱一つだけ。それ以外の間食は禁止よ」

「ええっ!?」

「規格外すぎる戦力を、多少なりとも試合として成立させる為の、審査員特権。文句は受け付けないわよ」

 ミルフィーはにっこりと笑ってそう告げた。ミルキィは、渡された小さな幕の内弁当を見つめ、露骨に肩を落とす。

「うう……いつもの十分の一もない……」

「が、頑張ろうミルキィ。僕も先鋒として頑張るから!」

 クルーンが、拳を握りしめて意気込んだ。


第二幕 先鋒クルーン、決死の一撃

 舞台に上がったのは、クルーンと――言葉も表情もない、グニャリとした人型のスライムじみた姿の戦士、ホエードだった。

「はじめ!」

 審判の声と同時に、クルーンは矢のように飛び出した。

「はあああっ!」

 連撃を叩き込む――が、ホエードの体は、まるで最初からそこに実体がなかったかのように、ふにゃりとかわされる。

「なら、これでどうだ!」

 宿り木の杖から放たれた光弾が、ホエードの体に触れる寸前――ふっとかき消えた。

「な……!?」

「そんな攻撃なら、いくらでもしてきなよ」

 ホエードが、抑揚のない声でぽつりと呟く。

「僕には、触れる事すらないから」

 クルーンの背筋を、冷たいものが這い上がった。

(コイツ……普通のスターナイツじゃない。何か……ヤバイ)

 だが、逃げるわけにはいかない。クルーンは唇を噛み、決意の表情に切り替えると、全身に力を込めた。

「僕だって……戦闘力を上げた……! 勝てないのは百も承知……! だけど、かすり傷くらいはつけてやる!」

 全身に青いオーラを纏い、クルーンは目にもとまらぬ速さでホエードへと肉薄する。

 ホエードは、無表情のまま、じっとその接近を見つめている。

「これが……最強のスターナイツ……! の、食事係の力だ!」

「ああ、そうか。君、地球の守り神」

 ぽつりとそう呟いたホエードに向けて、クルーンは至近距離から渾身の青い光弾を放った。

 直撃。

 なんと、ホエードの上半身が、そのまま吹き飛ぶように消え失せた。

 会場が、どよめきに包まれる。

「うそ……もしかして、本当にスターナイツを倒しちゃったの……?」

 クルーンが呆然と呟いた、その時。

 グニャリと、ホエードの体が変形する。あろうことか、その姿はクルーンを包み込むように、優しく抱きしめていた。

「ぐ……! な、なんだと……!」

 不気味に光る二つの目が、間近でクルーンを見つめる。

「びっくりしたよ。惑星の守り神が、ここまで強かったのは――僕の人生で、君が二番目だよ」

 その言葉と同時に、クルーンの体からすとんと力が抜け、そのまま崩れ落ちた。

「え……クルーン! ホエード、何したの!?」

 ミルキィが叫ぶ。

「安心しなよ。少しだけ、体力を吸い取っただけだよ。しかし凄いね――地球の神の力は」

「そこまで!」

 ミルフィーの声が、会場に響く。

「決着はついたわ。次はあなたの出番よ、ミルキィ」

 クルーンは、そのまま選手用の席へと運ばれていった。

「い、今何されたのか、分からなかったよ……体からみるみる力が抜けて……ごめんね、ミルキィ。少しもダメージ与えられなかった」

 申し訳なさそうに目を伏せるクルーンに、ミルキィは笑顔を向けた。

「ううん。さっきのクルーン、凄かったよ。もう、最初の頃に戦った災厄生命体くらいなら、一人で倒せるね」

「えへへ……ありがとう。でも、気をつけてミルキィ。アイツ、普通じゃないよ。多分――僕が今まで会ったスターナイツ達より強い……!」

 その言葉に、ミルキィは僅かに表情を引き締めた。

「うん。ホエードとは、一度だけ一緒に戦った事あるんだけど……本当に強いよ。それに、攻撃を空間の彼方に飛ばす能力も持ってるんだよね」

 それを聞いて、クルーンはようやく合点がいった。

(そうか……僕の攻撃が全く効かなかったのは、全部、空間の彼方に消し飛ばされていたからだったんだ。上半身が消えたのも、一瞬だけ自分の体を彼方に飛ばして、回避していたって事……)

「さあ、大会の目玉、ミルキィの登場です!」

 実況の声が響き渡り、ミルキィが舞台に上がる。


第三幕 ミルキィ登場、そして罠

「……よろしく」

 ホエードが、抑揚のない声でぽつりと呟く。

「君とは、初めて手合わせするね」

 ミルキィは静かに構えを取った。

「はじめえええ!」

 試合開始の合図と同時に、ホエードの全身から黒いモヤが立ち上り、その姿がふっとかき消える。

「――私は、気配でどこにいるかわかるよ。ううん、スターナイツならみんなそうだと思うけど。狙いは目眩ましじゃないよね」

 黒いモヤは、やがて一箇所に集まり、形を成していく。そこに現れたのは、一回り大きくなったホエードの姿だった。

「やっぱり……さっきクルーンから吸い取った体力の分、パワーアップしたって事ね」

 ホエードが指先から放った青い光弾を、ミルキィはいとも容易く弾き飛ばす。

「あ……あれ、僕の技!?」

 選手席から、クルーンが驚きの声を上げた。

「君の技と、君の力。真似させてもらったよ」

 ホエードが無表情のまま呟く。

 ミルキィは瞬時にホエードの背後へ回り込み、フックを叩き込んだ。

「――空間を吸い寄せるフックか。空間回避、できないな」

 ホエードは慌てる素振りも見せず、その一撃を受けきり、じりじりと後退する。

「浅い……!」

 ミルキィが、悔しそうに呟いた。

「ああ……ミルキィ、幕の内弁当ひとつしか食べてない……。それに、ホエードは体がグニャグニャしてるから、ダメージが通りにくいんだ……」

 選手席から見守るクルーンの顔に、不安が色濃く浮かぶ。

(本調子じゃないのに、今の一撃……これ、僕負けるな)

 ホエードもまた、内心でそう呟いていた。

「いくよ、ホエード! 空間を引き裂く私のパンチ! かわせないよ!」

 ミルキィがホエードめがけて踏み込み、拳に全力を込める。

 その瞬間――ホエードの体が、グニャグニャと形を変えていった。

 現れたのは、苺の乗ったショートケーキ。色も質感も、まるで本物としか思えないほど精巧に再現されている。

「ええ! ケーキ! おいしそー……」

 ミルキィの拳が、ぴたりと止まった。

「ギュルルルルル……」

 会場中に響き渡る、聞き慣れた音。

「嘘でしょ……」

 クルーンが、泣きそうな顔で見つめる。

「お腹減った……ご馳走、殴れない……」

 ミルキィの目が、ぐるぐると回り始めた。

(作戦通りだ)

 ホエードは、青い光弾を静かに放ち、隙だらけのミルキィに直撃させた。

 ミルキィは目をぐるぐるとさせたまま、それでも口元だけは笑顔のまま、ゆっくりとその場に倒れ込む。

「そこまで!」

 審判の声が、会場に響き渡った。

 ――ミルキィの、敗北だった。


第四幕 決着、そして次戦への火種

「ああ、ミルキィ……! 大丈夫!?」

 クルーンが慌てて駆け寄る。

 ミルキィは、一瞬だけ、ひどく悔しそうに唇を結んだ。

(強かった相手に負けたんじゃない……ケーキに気を取られただけ……)

 その表情は、すぐにいつもの笑顔にかき消された。だが、それは無理に作った笑顔だと、クルーンにはわかっていた。

「ごめん、ドジ踏んじゃった。てへ」

「い、いいよ……。こんな時くらい、僕が介抱するよ。お腹減ってるのに、ありがとうミルキィ」

 クルーンはそっとミルキィを支え、選手席へと連れていく。

(危なかった……ミルキィ、恐ろしい奴)

 ホエードは静かにそう考えながら、スタスタと舞台を去っていった。

 審査員席から、ミルフィーの涼やかな声が響く。

「今回は、ホエードの作戦が上手かったわね。次の試合も、盛り上げて頂戴」

 そして、少しだけ声のトーンを落として、付け加えた。

「――ミルキィ。食いしん坊も、程々にね」

「うっ……返す言葉もないよ、お姉ちゃん……」

 選手席で小さくなるミルキィを見て、クルーンは思わず苦笑いを浮かべた。

 控え席では、初戦の熱気に当てられたのか、一人の戦士が待ちきれないとばかりに立ち上がっていた。

「うおおおお! 燃えて来たぜええ! あいつと戦いてぇ!」

 マゼラン星雲のスターナイツ、ゼラが吠える。

「ちっ、うるせーな。耳元で叫びやがって」

 もう一人のマゼラン星雲のスターナイツ、ロランが、苛立たしげに呟いた。

 大会は、まだ始まったばかりだった。

(つづく)


ここまでお読み頂きありがとうございました。

怪しいスターナイツ相手に、初戦から敗北してしまったミルキィチームですが、リベンジできるのか。

次回は、ミルキィチーム以外の戦いの話です。

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