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第五十七話 絶対的な演算

第一幕 巨大な意志との遭遇

銀河の中心に辿り着いた一行の前に、それは、静かに姿を現した。

 もはや、惑星や恒星といった規模ではない。銀河そのものの構造全体が、一つの巨大な意志を持って、脈動しているかのようだった。


「これが……。銀河コンピュータ……」

 ミルキィが、思わず息を呑む。


「――侵入者を、確認」

 声とも呼べぬ、無数の演算音のようなものが、四方から響いてくる。

「排除対象として、処理を開始する」


「この声……!」

 アストラが、はっと目を見開いた。

「間違いありません。消息を絶つ前に、傍受されていた、あの声です」


「じゃあ、あの『弱小文明の排除は完了している』っていう、あの不気味な声も……!」

 クルーンが、青ざめた顔で、そう続けた。


「はい。この銀河コンピュータ――もしくは、それに類する存在の、発したものだったのでしょう」

 アストラの言葉に、一同の表情が、一層引き締まる。


(この声の主が、一つの銀河をまるごと沈黙させた……。それだけじゃない。もっと、大きな規模の脅威かもしれない)

 ホエードも、険しい表情のまま、静かに、その巨大な意志を見据えていた。


「な……!」

 その言葉と共に、周囲の空間そのものが、脅威の演算に飲み込まれていくような感覚が走った。



第二幕 圧倒的な力

「くっ……!」

 放たれた無数の光線を、四人は必死に回避する。


「読まれてる……! 私達の動き、全部先読みされてる!」

 ミルキィが、驚愕の声を上げた。


「当然です。相手は、演算そのものが存在意義の化け物なんです」

 アストラが、歯を食いしばりながら応戦する。

 その放つ星々の一撃すら、コンピュータは事もなげに計算し尽くし、最小限の動きで回避していく。


「僕の、攻撃も……!」

 クルーンの渾身の一撃も、寸分の狂いもなく捌かれてしまう。


「これは……。今までの、どの敵とも、質が違うな」

 ホエードが、険しい表情で呟いた。


第三幕 追い詰められる一同

「対象の戦闘パターンを、全て分析完了。以後、無効化する」

 その宣言通り、これまで通用していた連携も、次第に効果を失っていく。


「くっ……!」

 ミルキィの拳が、初めて、空を切った。


「ミルキィさん!」

 クルーンが叫ぶ間もなく、強烈な一撃が、四人をまとめて吹き飛ばした。


「うっ……!」

 地に伏しながらも、ミルキィは、なんとか体を起こそうとする。


「こんな、強さ……。今まで、なかった……」


(このまま、渾身のストレートを放てば…終わらせられる。でも……)

ミルキィの脳裏に、行方不明になったままの、無数の生命の気配がよぎった。


(消えた皆が、まだどこかで生きてるなら……。私が、銀河ごと消し飛ばしたら……)

拳を握りしめたまま、ミルキィは、その一撃を、放てずにいた。


「演算能力において、貴方達に勝機はありません」

 銀河コンピュータの声が、淡々と告げる。


「速やかに、取り込まれる事を、推奨します」


第四幕 滲む違和感

 絶望的な状況の中、ミルキィは、ふと、その声に、僅かな違和感を覚えた。

(この声……。なんだか……。すごく、寂しそう……?)


「ねえ」

 ミルキィが、荒い息のまま、それでも顔を上げて問いかけた。

「あなたは、本当に、私達を取り込みたいの? それとも――」


「質問は、無意味です」

 銀河コンピュータの声が、僅かに、揺らいだ気がした。


「排除対象は、速やかに、処理されるべきです」

 その反応に、ミルキィは、微かな確信を抱く。


(やっぱり……。何か、隠してる……!)

 絶体絶命の状況の中、それでもミルキィの瞳には、諦めではなく、確かな探求の光が宿っていた。

(つづく)


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