第五十四話 神様の選んだもの
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第五十四話 神の選んだもの
第一幕 迷いの果てに
夜の帳が降りた地球で、クルーンは、一人、静かに星空を見上げていた。
スターナイツになれば、皆とずっと一緒に戦える。だが、この星を、二度と見守れなくなる。
その二つの想いの間で、幾度となく心が揺れ動いていた。
(僕は……。何の為に、戦ってきたんだろう)
脳裏に蘇るのは、これまでの旅の記憶。ミルキィと出会った日。ホエードと共に戦った日々。皆と笑い合った、数え切れない時間。
そして――毎朝、地球の生命達に降り注ぐ、変わらない光。
その全てを見つめながら、クルーンは、静かに、一つの答えに辿り着いていた。
第二幕 皆への告白
「皆さん……。僕の、答えが出ました」
翌朝、集まった仲間達を前に、クルーンは、ゆっくりと口を開いた。
「僕は――地球の神様で、居続けます」
「クルーン……」
ミルキィが、静かにその言葉を受け止める。
「皆と、もっと一緒にいたかった。本当に、そう思ってます。でも……」
クルーンの声が、僅かに震えた。
「地球の神である責務を、放棄する事は、できませんでした。この星の生命を、見守るという約束を……。僕は、破りたくなかったんです」
その言葉には、迷いの果てに辿り着いた、確かな覚悟が込められていた。
第三幕 涙、そして温かい言葉
「……っ」
言葉を紡ぎ終えた瞬間、クルーンの瞳から、堪えきれない涙が溢れ出した。
声にならない嗚咽だけが、その場に響く。
「クルーンさん」
ホエードが、静かに歩み寄り、その肩に手を置いた。
「よく、決めたね。それは、簡単な事じゃなかったはずだ」
「ホエード……」
「君の選んだ道は、間違ってなんかいない。地球の神として、皆を見守り続ける事も――立派な、戦い方だ」
その言葉に、クルーンは、声を上げて泣いた。
「僕、は……。皆と、もっと……!」
「わかってるよ。皆も、同じ気持ちだ」
アストラも、ウェルも、三角銀河トリオも、それぞれ静かに、温かい眼差しを向けていた。
第四幕 朗報
「――クルーン、聞いて」
少し落ち着きを取り戻した頃、ミルキィが、涙の跡が残る顔で、明るく告げた。
「私とお姉ちゃんの戦いの後、通達、取り下げられたんだよ」
「え……」
「だから――クルーンは、スターナイツにならなくても。これからも、ずっと、私達と一緒に戦えるんだよ!」
「そんな……! 本当、ですか……!?」
クルーンの瞳に、驚きと、抑えきれない喜びが広がっていく。
「本当だよ。まあ、色々あったんだけど……。とにかく、これからも、よろしくね」
ミルキィが、満面の笑顔でそう告げた。
「はい……! これからも、よろしくお願いします!」
クルーンは、涙と笑顔が入り混じった表情で、大きく頷いた。
地球の神様であり続ける事を選んだ小さな守り神は、それでも、これまでと変わらず、大切な仲間達の隣で戦い続ける道を、手にする事ができたのだった。
その頃、時を同じくして遠く離れた巨大銀河では異変が起きていた。
「まさか我ら超文明の兵器、惑星砲台も恒星戦艦までもがやられるだと…!?」
「司令官!付近のスターナイツが応援に駆けつけてくれました!」
巨大銀河を統治する超文明の船団が、その戦力を総動員し激しい戦いを繰り広げている。
その渦中で、感情の読めない、演算めいた声が静かに響き渡った。
「――解析、完了。弱小文明の排除は、既に完了している」
「次は、貴方達、超文明の番だ。抵抗は、無意味と、判定する」
その声には、怒りも、誇示も、憎悪すらもなかった。
ただ、淡々と、既に決定された事実を告げるような、冷たい響きだけがあった。
銀河のどこかで、また新たな冒険が、二人を、そして仲間達を待っている。
今回のお話は、エゴと正論。
そして、友か責任か。
大人として生きる為に割り切る事と、その悲しさを描きました。
次回は、今までとは違った強さを持った存在が現れます。




