第五十二話 究極の二択
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第一幕 もう一つの用件
「――そういえば」
激闘を終えた後、アルキンが、ふと思い出したように口を開いた。
「俺達、実はもう一つ、用があって来たんだ」
「用、ですか?」
アストラが、首を傾げる。
「プレアデスの教官達から、預かった通達がある。地球の守り神――クルーンという者に、渡すように、と」
アトラスが、一通の書状を取り出した。
「え、クルーンに?」
その場の空気が、一瞬で緊張したものへと変わる。
「これって、まさか……」
ウェルが、僅かに眉をひそめた。
「せっかくだ。このまま俺達とも、手合わせしてもらいたいところだが……」
アルキンが、期待に満ちた目で辺りを見渡す。
「――それは、今はやめておいた方がいい」
ウェルが、静かに、しかしはっきりとそう告げた。
「彼は今、そんな事より、ずっと大きな問題と向き合わなければならない」
その言葉に、アルキン達も、ただならぬ空気を察したように、口をつぐんだ。
第二幕 届けられた運命
書状は、すぐさま地球のクルーンの元へと届けられた。
「――スターナイツ選抜試験、正式招集通知」
クルーンは、震える手で、その一文を読み上げた。
「これに応じれば、僕は……。皆と、ずっと一緒に戦える」
だが、その先には、これまで見てきたのと同じ、動かしがたい条件が記されていた。
「任命された者は、以後、出身の星への帰還を禁ずる……」
クルーンの瞳から、光が失われていく。
「僕が、選ばれなかったら……。もう、皆とは、一緒に戦えない」
「でも、選ばれたら……。この星を、永遠に離れる事になる」
二つの未来、そのどちらもが、彼にとって、あまりにも大きな代償を伴っていた。
第三幕 皆との対話
「クルーンさん」
異変を察したホエードが、静かに地球へと訪れていた。
「ホエード……」
「一人で、抱え込む必要はないよ」
ホエードが、穏やかにそう告げる。
程なくして、ウェル、アストラ、そして三角銀河トリオも、次々と駆けつけてきた。
「クルーンさん、どんな選択をしても、僕らはあなたの味方です」
ウェルが、真っ直ぐにそう告げる。
「あなたの実力は、もう、私達と肩を並べるに相応しいものです」
アストラも、優しく頷いた。
「どちらを選んでも、美しい決断になるだろう。それだけは、保証する」
トライも、珍しく静かな声でそう言った。
だが、皆の温かい言葉を受けても、クルーンの心は、簡単には定まらなかった。
第四幕 涙と沈黙
「僕は……。皆と、もっと一緒にいたい……。でも……」
クルーンの瞳から、堪えきれない涙が溢れ出す。
「地球を、見捨てる事も……。この星の生命を見守る約束を、破る事も……。僕には、できない……」
言葉は、そこで途切れた。
あとは、ただ、静かな嗚咽だけが、その場に響いていた。
「――大丈夫。今すぐ、答えを出さなくていい」
ホエードが、そっとクルーンの肩に手を置く。
「君が、心から納得できる答えが出るまで、僕らは、いくらでも待つよ」
その優しい言葉に、クルーンは、ただ静かに頷く事しかできなかった。
地球の空の下、一人の小さな神様が、その双肩に、あまりにも大きな決断を背負おうとしていた。
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