第四十七話 目覚めの一撃
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第一幕 絶望の中で
「クルーン、まだ……!」
ゼラの声が、虚しく響く。
地に伏したクルーンは、それでも、必死に体を起こそうとしていた。
「僕、は……。まだ……」
「無駄な足掻きだ」
フェクトが、冷たく見下ろす。
「もう、終わりにしよう。全員、頂いていくとする」
絶望的な空気が、辺りを包み込んでいた。
その時――少し離れた場所で、静かに眠っていたはずのミルキィの瞼が、ゆっくりと開いた。
第二幕 目覚め
「――クルーンの、声……」
ミルキィは、ゆっくりと体を起こす。
先程、フェクトの一撃を弾き返し、抗いがたい空腹に襲われ、クルーンの特製弁当を口にした後、満腹で動けなくなっていたのだ。
「んん……。もう、大丈夫」
すっかり満たされた体には、確かな力が漲っていた。
「待たせて、ごめんね」
ミルキィは、静かに、しかし力強く立ち上がった。
「な……! 何者だ貴様は!」
フェクトが、驚愕に目を見開く。
「これで、終わりにするよ」
ミルキィの声には、迷いのない決意があった。
第三幕 制御された一撃
「舐めるな! こちらには、人質もいるのだぞ!」
フェクトが、体内に取り込んだロランの気配を、威圧するように滲ませる。
「大丈夫」
ミルキィは、静かに拳を構えながら、頷いた。
「今の私は、ちゃんと、力を加減できるから」
それは、姉ミルフィーの修行で身につけた、精密な制御の力だった。
全力を出しながらも、取り込まれた仲間達を傷つけない、絶妙な一撃を放つ為の。
「私の渾身のストレートは、時空を引き裂いて銀河をも消滅させちゃうよ」
拳が、静かに、しかし確かな速度で放たれる。
「――でも今回は、フェクトだけを、綺麗に打ち抜く」
その一撃は、まるで狙いすましたかのように、フェクトの中心――負の感情の核とも言うべき部分だけを、正確に撃ち抜いた。
「ぐ、ああああああ……!」
フェクトの叫びと共に、その黒い靄が、急速に崩れ始めた。
第四幕 解放
「ロラン!」
崩れゆく靄の中から、ロランの体が、静かに解放される。
「ゼラ……。悪い、な」
「馬鹿野郎、謝る必要なんてねえよ!」
ゼラが、涙ぐみながら、駆け寄ったロランを抱きしめた。
同時に、フォカとミャオリンの姿も、闇の中から力なく現れる。
「私……、一体……」
「僕、は……」
二人は、困惑した様子ながらも、確かに無事だった。
「終わった……。本当に、終わったんだ……」
クルーンが、安堵の息を吐きながら、ゆっくりと体を起こす。
「クルーン、大丈夫?」
ミルキィが、優しく手を差し伸べた。
「はい……。皆のおかげで、大丈夫です」
フェクトの姿は、最後に、僅かな未練を残すように、静かに闇の中へと消えていった。
その最期の瞬間、その表情には、どこか安堵にも似た色が浮かんでいたようにも見えた。
マゼラン星雲に、長らく渦巻いていた負の連鎖は、ようやく、静かに解けたのだった。
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