↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/94

第四十三話 消えた三人

第一幕 手薄になった警備

 配信会場が最高潮の賑わいを見せる中、一人の人影が、そっと人混みを離れていった。



(皆、料理に夢中……。それに、あの香りの効果か、警備の連中の反応も鈍い)


 その脳裏には、事前に調べ上げていたらしい情報が、克明に刻まれていた。マゼラン星雲のどこかに眠る、封印された脅威の欠片――その所在地について。


「――さて、と」

 人影は、端末らしきものを確認しながら、静かに星域の奥深くへと足を進めていった。


 その背は、闇に紛れ、はっきりとは見えなかった。


第二幕 封印の地

 辿り着いたのは、厳重な結界に守られた、小さな祠のような場所だった。


「ここか……」

 その人物が、中心にある、小さな黒い掌のようなものに、そっと手を伸ばす。


「――待っていたよ」

 声にならない声が、脳内に直接響いた。


「これ、は……」


「お前は、力が欲しいのだろう? 誰かに認められる為の、確かな力が」


「私、は……いや、僕、は……」

 揺らめく声には、どこか性別すら判然としない、歪んだ響きがあった。


「同じ事だ。さあ、その手を、私に――」


 差し出された手が、掌に触れた、次の瞬間。

 その姿は、内側から、黒い靄に完全に飲み込まれていった。




「――ありがとう。これで、私は、自由に動ける」

 その声は、もはや誰のものとも判別がつかなかった。


第三幕 駆けつけたヴェガとレグルス

「――この気配、まさか!」


 異変を察知したヴェガが、レグルスと共に、封印の地へと駆けつける。


「くそ、遅かったか……!」

 既に、祠は破壊され、そこには黒い靄を纏った何者かが、静かに佇んでいた。


「お前……! 一体、何をした!」

 レグルスが、鋭く問い詰める。逆光の中、その輪郭だけでは、誰であったのかを見極める事はできなかった。


「決まっている。私の、体を取り戻す準備だ」

 その声に、二人は、はっと息を呑んだ。


「その声……! まさか――」


「久しいな、スターナイツ達よ」

 黒い靄を纏った何かが、ゆっくりと振り返る。その瞳には、これまでのどんな敵とも違う、粘着質な悪意が渦巻いていた。


「舐めるな! お前が本気を出す前に――」

 ヴェガが、飛びかかりながら光弾を放つ。


「無駄だ」

 その一言と共に、想像を絶する一撃が放たれた。


「ぐああっ!」

 二人は、なす術もなく、その場に吹き飛ばされる。


「ば、化け物か……!」

 朦朧とする意識の中、レグルスが、そう呟くのが精一杯だった。


 その視界の端に、最後まで、闇に覆われた顔だけが、はっきりと見えないまま残っていた。


第四幕 消えた三人

「――連れて行くとしよう。まだ、使い道はある」

 黒い靄を纏った何かは、倒れたヴェガとレグルスを、静かに見下ろした。


 そして、三人分の姿が、そのまま闇の中へと消えていった。


 賑やかな配信会場に、記者のフォカ、配信者のミャオリン、そしてヴェガとレグルス――複数の姿が、忽然と消えた事に気づいたのは、しばらく経ってからの事だった。



「あれ……。フォカさん、見当たらないね」

 ミルキィが、辺りをきょろきょろと見渡す。


「そういえば、ミャオリンさんの配信も、途中で止まったままです。それに、ヴェガさんとレグルスさんも……」

 クルーンが、不安げに呟いた。


「何か嫌な予感がします……」

 アストラが、静かに眉をひそめる。


「様子を、見に行った方が良さそうですね」

 和やかだった空気が、一転して、緊張感を帯び始めていた。


 誰が消え、誰が闇に飲まれてしまったのか――手がかりは、何一つ残されていなかった。

(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。