第四十話 部長、参上
第一幕 係長と係長補佐
「――さて、と」
キラを担ぎ上げたレギオンが、ふと、ナビビへと視線を向けた。
「こいつら、悪い奴らじゃないみたいだし……どうする?」
「えー? 係長、逃げるんですかー?」
ナビビが、にやにやとしながら茶々を入れる。
「逃げるって訳じゃ、ねえけどよ……」
レギオンが、気まずそうに頬を掻く。
「係長補佐の私が、代わりに本気を出してもいいですけどー。それじゃ、係長が成長しないので、我慢してるんですよ、私」
「お前の場合、本気出したら、この一帯の星ごと消し飛ぶだろうが……」
「あはは、それは否定しませんけどー」
ナビビは、軽やかに笑いながら、ふと空を見上げた。
「まあ、そろそろ潮時ですかね。部長が本気出したら、私達、宇宙の塵になっちゃいますもんねー」
その一言に、レギオンの顔から、さっと血の気が引いた。
「お、おい、まさか――」
第二幕 降臨
その時、天より一筋の光が降り注いだ。
「あら。ここは――スターナイツの次元ね」
柔らかな、けれど不思議と芯の通った声が響く。
現れたのは、見た目十四歳ほどの、可憐で神々しい少女ミリアだった。
「ぶ、部長……!」
レギオンが、慌てて背筋を伸ばす。
「レギオン君? 部下を負傷させて、こちらの皆様にも迷惑をかけたそうね」
ミリアの微笑みは、変わらず柔らかい。だが、その言葉には、有無を言わさぬ圧があった。
「始末書二十枚と、銀河百個分の報告書、お願いね」
「ま、待って下さい! これは……!」
「いいのよ、それより。お茶、淹れてくれる?」
「ここで、それは……!?」
レギオンが、涙目で崩れ落ちた。
第三幕 底知れぬ笑顔
「それにしても――」
ミリアが、ふと視線をアストラ達へと向けた。
「お強いんですね」
その微笑みは、あくまで穏やかだった。
だが、その奥に潜む、底の見えない気配に、アストラは思わず息を呑んだ。
(この人……。普通じゃない、何かを感じます……!)
幾多の死闘を潜り抜けてきたスターナイツ達だからこそ、直感的に理解できてしまう。
目の前の存在が、これまで対峙してきたどんな敵とも、根本的に格の違う何かである事を。
「あの人から……。普通じゃない何かを感じます」
アストラが、震える声でそう呟いた。
「何もしませんよ」
ミリアが、変わらぬ笑顔のまま、静かに告げる。
「あなた方が、何もしなければ、ね」
その一言だけで、辺りの空気が、ぴりりと張り詰めた。
誰も、動けなかった。
第四幕 嵐の後の静けさ
「ふふ、冗談よ。そんなに、怖い顔しないで」
ミリアが、くすくすと笑いながら、その場の緊張をふっと解いた。
「レギオン君、ナビビちゃん。此度は、色々とご迷惑をおかけしました」
ミリアが、深々と一礼する。
「い、いえ、そんな……!」
クルーンが、慌てて手を振った。
「この子達、悪気があった訳ではないの。許してあげてくれると嬉しいわ」
「ええ、もちろんです」
アストラが、緊張の解けた表情で頷いた。
「それでは、私達は、そろそろ失礼するわね」
ミリアが、静かにそう告げた。
開かれたままの次元の扉の向こうへ、帰る時が近づいていた。
(つづく)




