表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超戦士スターナイツ  作者: 海原ナギサ
銀河闘争編
PR
4/33

第四話 三角銀河の危機

最初のシリアス回の第4話、ご覧頂きありがとうございます

第一幕 玉砕覚悟

 三角銀河は、かつて数多の知的生命体が築き上げた、銀河でも屈指の超文明圏だった。

 その繁栄を、たった一人の存在が食い荒らそうとしていた。

「――力とは、選ばれし者だけが正しく振るえるものだ。私はこの銀河のあらゆる知を極め、あらゆる力を凌駕した。ならば、この銀河は私が支配するに相応しい」

 声には一切の熱がない。ただ静かに、事実を述べるような口調だった。

 名を、ゼノン。三角銀河が生んだ最高峰の知性体でありながら、その力と孤独の果てに、己こそが銀河の支配者たるべきだという結論に辿り着いてしまった、悲劇の怪物だった。

「て、てめえ! 自分の生まれた銀河を滅ぼす気か!」

 トライが叫びながら光弾を放つ。だが、ゼノンは指先一つでそれを弾き返した。

「滅ぼす、ではない。作り替える、が正しい」

「ぐっ……!」

 弾かれた衝撃だけで、トライの体が大きくよろめく。

「僕らだけでこの相手は……!」

 ラグルの声にも、隠しきれない恐怖が滲んでいた。

「けど、逃げたらこの銀河終わりだろうが!」

 アイルが吠える。三人とも、目の前の相手が今まで戦ってきたどんな敵とも一線を画すことを、痛いほど理解していた。

 勝てない。

 それでも。

「――時間を稼ぐ。それだけでいい」

 トライが低く呟いた。

「アストラが応援を呼んでる。ミルキィが来るまで、俺達で持たせる」

「……玉砕上等ってか」

 アイルが小さく笑う。ラグルは震える手で、それでも構えを崩さなかった。

「あんな奴に……美しい陣形すら見せられなかったなんて、僕は許せない」

 三人は、示し合わせたわけでもなく、同時に前へ踏み出した。


第二幕 美しき、最後の陣形

 繰り出される光弾も、拳も、ゼノンの前ではことごとく意味をなさなかった。

 それでも三人は、何度弾かれても、何度地面に叩きつけられても、立ち上がり続けた。

「無駄な足掻きを」

 ゼノンが冷たく呟き、次の一撃を放とうとした、その時。

「トライ、右に回れ! ラグル、そこ! アイル、真ん中!」

 誰からともなく声が上がり、三人の体が、まるで長年連携してきたかのように綺麗に動いた。

 偶然だった。

 死力を尽くした果てに、疲労で余計な力みが抜け、三人の呼吸だけが噛み合った、ただの偶然。

 トライを頂点に、ラグルとアイルが左右対称に構える。

 それは、何度練習しても揃わなかった、伝説の陣形――『トライアングル・グローリー』、そのものだった。

「――決まった……」

 ラグルが呆然と呟く。

「見ろよ……俺達、完璧じゃねえか……」

 アイルの声も、震えていた。

「ああ……なんて、美しいんだ……」

 トライの目に、涙が浮かぶ。

 三人はしばし、その完璧な三角形の中で、時が止まったかのように立ち尽くしていた。

 その隙を、ゼノンが見逃すはずもなかった。

「感傷に浸る時間があるとは、羨ましい限りだ」

 放たれた一撃が、綺麗に整った三角形をそのまま呑み込んだ。

「「「ぐああああああああ!!」」」

 三人は声を揃えて吹き飛び、地面に叩きつけられ、動かなくなった。

 だが――その顔は、なぜか誰もが晴れやかだった。

「……やっと、揃った……」

 トライが、意識を失う寸前、小さくそう呟いた。


第三幕 ナンバー2、参上

「トライさん! ラグルさん! アイルさん!」

 星の道を駆け抜けてきたのは、細身の体に星の意匠が入った道着を纏った、格闘家然とした佇まいの少年だった。

「間に合わなかったか……!」

 名を、ウェル。銀河広しといえど、ミルキィに次ぐ実力を持つとされるスターナイツである。

 その後ろから、大きな重箱を背負ったクルーンが必死の形相で追いついてくる。

「ま、待ってくださいウェルさん! 僕まだ空を飛ぶの慣れてなくて……!」

「クルーンさん、無理を言ってすみません。でも、ミルキィが到着するまでに、絶対にお腹を空かせるわけにはいかないので……」

「わかってます! このお弁当、僕の全力で作りましたから!」

 二人は、決意を胸に戦場へと降り立った。

「――お前が、次に来た刺客か」

 ゼノンが、値踏みするようにウェルを見据える。

「僕は、ミルキィほど強くはありません。それは自分が一番わかっています」

 ウェルは静かに構えを取った。

「でも――彼女が来るまで、僕がナンバー2として、この場を持たせてみせます」

「威勢のいい事だ。だが、覚悟と実力は、必ずしも比例しない」

 放たれた一撃は、これまでの誰よりも速く、重かった。

「くっ……!」

 ウェルは全力で応戦する。鍛え抜かれた拳技で幾度も攻撃を捌くが、力の差は歴然だった。

 このままでは、いずれ捌ききれなくなる――そう判断したウェルは、素早く後方に跳んだ。

「クルーンさん、少しの間だけ、力を貸してもらえますか」

「え? 僕がですか!?」

「僕の能力は、直接攻撃だけじゃないんです――闘気付与」

 ウェルの体から淡い光が溢れ、それがクルーンの持つ宿り木の杖へと流れ込んでいく。

「うわ……! 体が、熱い……! なんだかいつもの倍くらい力が漲ってきます!」

「クルーンさんの光弾なら、連射が利く。僕が隙を作ります。援護をお願いします!」

「は、はい! やってやります!」

 ウェルが果敢にゼノンへ斬り込む一方、力を得たクルーンの杖から、これまでにない密度の光弾が連続して放たれた。

「グォオオオオオ!」

 小さなリスとは思えない気迫の連弾に、さすがのゼノンも僅かに眉を動かす。

「ほう。数の暴力、というわけか。悪くはない」

 だが、それも長くは続かなかった。

「!」

 連弾の隙間を縫って放たれたゼノンの一撃が、ウェルの脇腹を捉える。

「がはっ……!」

「ウェルさん!」

 膝をつくウェルに、追い討ちの一撃が振り下ろされようとした――その時。


第四幕 スターナイツの意地

 空から降り注いだ無数の光の礫が、ゼノンの一撃を弾き逸らした。

「これは……コメットシュート!?」

 ウェルが目を見開いた瞬間、星の道を駆けてアストラが舞い降りる。

「お待たせしました。ここから先は、私も参戦します」

「アストラさん……! でも、この相手は――」

「わかっています。それでも――スターナイツの意地です!」

 アストラの瞳に、これまでにない強い光が宿る。

「星の衝撃、アストラルクランプ――全力起動」

 彼女が両手を掲げると、はるか彼方から、銀河でも指折りの規模を誇る二つの巨大な星団が、まるで瞬間移動するかのように引き寄せられてくる。

「これが……アストラちゃんの、本気……!」

 ウェルが息を呑む中、二つの巨大な質量がゼノンを左右から挟み撃ちにした。

 轟音と共に、辺り一帯を衝撃波が薙ぎ払う。

「や、やった……のか……?」

 クルーンが恐る恐る煙の向こうを見つめる。

 だが――

「――残念だが」

 煙が晴れたその中心で、ゼノンは傷一つなく、静かに佇んでいた。

「今のは、悪くない発想だった。だが――私には届かない」

「そんな……! 銀河最大級の星団を、正面から受け止めるなんて……!」

 アストラの声が、震えた。

「ば、化け物か……!」

 ウェルも、力なく片膝をつく。

「化け物ではない。私は、この銀河の頂点に立つべき存在だと言っているだろう」

 ゼノンが淡々とそう告げ、二人に向けて次の一撃を放とうとする。

 アストラもウェルも、もはや立ち上がる力すら残っていなかった。

「――ここまで、か……」

 ウェルが、霞む視界の中で小さく呟いた。

(僕は……ナンバー2として、この場を持たせるはずだったのに……)

(せめて……ミルキィが来るまで……)

 その願いが届いたかのように――


第五幕 本気の一撃

「――随分と、賑やかにしてくれたようだね」

 静かな、けれど確かな怒気を孕んだ声が、戦場に響いた。

「ミルキィ……!」

 クルーンが振り返る。そこには、これまで見たどんな時よりも、静かな表情のミルキィが立っていた。

「クルーン、お弁当、ありがとう。ちゃんと道中で食べさせてもらったから――今日は、お腹の心配はないよ」

「は、はい! 三段重ねの特製弁当、渾身の出来です!」

「うん。だから――今日は、最後まで戦える」

 ミルキィは、倒れ伏すトライ達、そしてウェルとアストラを一度見渡した。その目に、静かな怒りが灯る。

「みんな、精一杯戦ってくれたんだね。ありがとう」

 そして、ゆっくりとゼノンへ向き直る。

「――ねえ。銀河には、謝って許される事と、許されない事があるんだよ」

「ほう」

「君の行動は、どっちだと思う?」

 その問いに、ゼノンは初めて、僅かに沈黙した。

「――秩序の再構築に、謝罪という概念は不要だ。私はただ、正しい事をしているに過ぎない」

「うん、そっか」

 ミルキィは、それ以上何も言わなかった。

 ただ、静かに一歩、踏み出した。

「いつもなら、まあまあ落ち着いて、って言うところだけど。今回は――ちゃんと、痛い目見てもらうから」

「――くだらない感傷だ。だが、いいだろう。銀河最強と謳われる力、この目で確かめさせてもらおう」

 ゼノンが、これまでにない絶大な力を練り上げる。

 だがミルキィは、それを待たなかった。

「私の渾身のストレートは――時空を引き裂いて、銀河をも消滅させちゃうよ。」

 腰を捻り、拳を放つ。

 それは、これまでのどんな戦いでも見せたことのない、正真正銘、全力の一撃だった。

「なっ――」

 ゼノンが初めて、驚愕に表情を歪めた。

 時空が唸りを上げて歪み、拳が――ただの一撃が、ゼノンの築いてきた全ての傲慢ごと、まとめて撃ち抜いた。

「ぐ、あああああああああああ――!!」

 絶叫と共に、ゼノンの体が光の奔流に呑まれ、彼方へと消えていく。

 辺りに、静寂が戻った。

「……終わった、の……?」

 クルーンが、恐る恐る呟く。

 ミルキィは小さく息を吐くと、いつものように、ふわりと笑った。

「うん。今日はちゃんと、最後まで戦えたよ」

 その笑顔には、いつもの緩さと、確かな強さが同居していた。

 少し離れた場所では、アストラがウェルに肩を貸しながら、小さく呟いていた。

「……次は、私ももう少し、力になれるように」

「いえ……アストラさんの本気、初めて見ました。それだけで、十分すぎるくらいです」

 ウェルがそう言って笑うと、アストラは少しだけ照れたように視線を逸らした。

 銀河の遥か彼方。

 一人の女性が、その一部始終を静かに見つめていた。

 ミルキィによく似た、けれどどこか大人びた面差し。優雅に佇むその姿には、一切の隙がない。

「……あら。少しは、成長したのかしら」

 小さく呟くと、彼女――ミルフィーは、静かにその場を後にした。

(つづく)


本気のミルキィ達、いかがでしたか?

スターナイツカッコいいと思って下さったら、


ページ下部の【ポイント評価】や【ブックマーク追加】をしていただけると、執筆の大きな励みになります!よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ