第三話 三角銀河のスターナイツ
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第一幕 美しき陣形(自称)
地球の空に、またしても唐突な光が降り注いだ。
今度は一人ではない。三つの人影が、示し合わせたようにビシッと着地を決める。
いずれも戦隊ヒーローを思わせる流線形のヒーロースーツを纏っているが、体格はまるで違った。
ひときわ背が高く堂々とした一人、トライ。
中肉中背でどこか神経質な一人、ラグル。
そして、頭一つ小さい、けれど妙に目つきの鋭い一人、アイル。
「見よ! これぞ我ら三角銀河スターナイツ、伝説の陣形――『トライアングル・グローリー』!」
リーダー格のトライが高らかに叫び、ビシッとポーズを決める。
だが、その隣でラグルが腕を組んだまま眉をひそめた。
「……いや、待て。お前、また少し右にズレてる。この陣形は正三角形が美しさの命だと、何度言えばわかるんだ」
「はあ? ズレてるのはお前だろ、まとめ役気取りが」
「な……! 僕はいつだって完璧な位置取りを――」
言い争いが始まったその横で、アイルがつまらなそうにそっぽを向いていた。
「……どうでもいいけど、俺様が一番強いんですけど。陣形とか正直興味ないんだけど」
「お前は黙ってろ子供! まだ実戦経験も浅いくせに!」
「はぁ!? 誰が子供だ、この前の戦闘で一番活躍したの俺だろ!」
美しい陣形を見せに来たはずが、三人はあっという間に、まるで美しくない大喧嘩を始めていた。
その様子を、丘の上でのんびり寝転がっていたミルキィが、むくりと起き上がって眺めている。
「あはは、賑やかだねー。まあまあ、みんな落ち着きなよ」
いつもの調子でひらひらと手を振るミルキィ。
だが、そこに漂う不穏な戦闘力の気配を、遠く離れたところで感じ取った者がいた。
「――この気配、まさか」
瞬時に星の道を駆け、アストラが駆けつける。
「ミルキィ! 大丈夫ですか、何が――」
「あ、アストラちゃん、平気平気。ちょっとした痴話喧嘩みたいなもんだから」
「痴話喧嘩というレベルの戦闘力じゃないんですが……」
そこへ、クルーンまでもが泣きそうな顔で飛んできた。
「ちょ、ちょっと待ってください! そんな力がぶつかり合ったら、この星が壊れちゃいますよ! お願いですからここで争わないで下さい!」
第二幕 消えたご馳走
「まあまあ、みんなちょっと落ち着いてさ。お腹すいてカリカリしてるんじゃない? ほら、これ食べなよ」
ミルキィはにっこり笑いながら、地球自慢のご馳走をずらりと差し出した。
――だが。
「下らない」(トライ)
「な――」
「美しくない」(ラグル)
「ちょ、ちょっと」
「引っ込んでろ」(アイル)
三人はそれぞれ容赦のない光弾を放ち、ご馳走の山を一瞬で消し飛ばしてしまった。もうもうと立ち上る煙だけが、そこにあった幸せの痕跡だった。
「……」
辺りの空気が、すっと冷えた。
ミルキィの笑顔から、表情がすとんと抜け落ちる。
「――いくら三角銀河のスターナイツの皆でも。仲間でも。地球のご馳走をこんなにしたら、許さないよ……?」
その声は、決して大きくはなかった。だが、そこに込められた圧に、三人はぴたりと言い争いを止めた。
「お、お前が強いのは知ってるが……俺達だって三角銀河最強の三人だぞ。お前がいくら最強でも、実力なら負けてない!」
トライが、震える声で虚勢を張る。
「なら――試してみる? 君達が強いのは私もよく知ってるから、手加減はしないよ」
ミルキィは静かにそう言うと、拳を構えた。
第三幕 束の間の交戦
三人が同時に飛びかかる。
放たれる光弾、突き出される拳――だがミルキィはそのすべてを紙一重で躱し、反撃の一撃を放った。
咄嗟に受け止めたのは、アイルだった。
「ぐ……!」
両腕をクロスして防御した体勢のまま、ズザザッと地面を削りながら後退し、そのまま片膝をつく。見た目に反して、彼が誰よりも耐えていたことは明らかだった。
「あ、ごめんね、ちょっとお腹空いてて、あんまり力出なかったよ……」
ミルキィが、悪びれもせずぽつりと呟く。
その一言を聞いたラグルの顔から、すっと血の気が引いた。
(今の一撃……本気じゃなかった、だと……!?)
「な……」
声にならない声を漏らし、ラグルはガタガタと震え始めた。
第四幕 仲裁、そして決着は食レポで
「――待って下さい」
張り詰めた空気を割って、アストラが二人の間に静かに割り込んだ。
「私達は、守護戦士スターナイツですよ。こんな事で争って銀河を消滅させて――それが、スターナイツのやる事なんですか?」
凛としたその声に、ミルキィもハッとした顔になる。
「……アストラちゃんの言う通りだよ。私達はスターナイツ。争うのは、やめようよ」
ふっと肩の力を抜き、いつもの笑顔に戻るミルキィ。
その変化に、三角銀河の三人は誰よりもホッとした顔を見せた。
「ま……まあ、ミルキィがそう言うんなら仕方ねぇな。み、見逃してやるよ」
トライが、まだ震える声で強がる。
「お、俺達最強の三人ならミルキィぐらい――!」
片膝をついたまま威勢よく言いかけるアイルの横で、ラグルが慌てて口を挟んだ。
「あ、ああ……! アイツも腹減ってるみたいだし、多分いけそうだけど……ま、まあ、今日はおあいこにしてやるか。ハハハ……」
(――怖くてちょっと漏らしちゃったよ……)
誰にも聞こえない小さな呟きが、ラグルの内心に虚しく響いていた。
空気が和らいだのを見て、ミルキィはにっこりと満面の笑みを浮かべる。
「それじゃ仲直りの証に――地球のご馳走、食べて感想言ってよ! それであなた達も、同じくらい美味しい料理作ってみてね!」
「ええええ!?」
三人の絶叫が、綺麗にハモった。
「ま、まあ……俺達は最強の三人だ。食レポと料理くらい、してやるよ!」(トライ)
「そ、そうだそうだ! それで黙らせてやるぜ!」(ラグル)
「……(小さくため息)俺様は最初から興味ないんだけど……」(アイル)
ぶつぶつ言いながらも、結局は三人揃って腕まくりを始める。
そんな彼らを眺めながら、クルーンは呆れ半分安堵半分の表情でぼそりと呟いた。
「争いを止めたと思ったら……次は料理対決ですか……」
星空の下、地球の台所は、にわかに騒がしくなるのだった。
(つづく)
次回はシリアス回になります。
ここまでポンコツ揃いのスターナイツ達は、シリアスな敵に立ち向かえるのか。
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