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超戦士スターナイツ  作者: 海原ナギサ
銀河闘争編
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第二話 乙女座銀河団のスターナイツ

スターナイツ2話目ご覧頂きありがとうございます

第一幕 伝令、参上

 地球の空は、今日も平和だった。

 平和すぎて、ミルキィは丘の上でお腹いっぱいご飯を食べたあと、すやすやと惰眠を貪っていた。

「んむ……もう食べられない……」

 寝言まで幸せそうなミルキィのすぐ隣で、クルーンが呆れ顔でため息をついていたその時。

 空間が僅かに歪み、一つの光が舞い降りた。

 現れたのは、きっちりと編み込まれた長い髪に、星図を思わせる意匠のケープを纏った少女。手には小さな星の形をした端末を携え、佇まいには一分の隙もない。

「――お休み中のところ失礼します。ミルキィ、いらっしゃいますか」

「あ、あなたは……!?」

 クルーンが身構えるのを尻目に、少女はすっと一礼した。

「申し遅れました。私、乙女座銀河団のスターナイツ、アストラと申します。担当銀河団より、ミルキィ宛の緊急伝令を持って参りました」

「ミルキィなら、ほら、そこで爆睡してますけど……」

「……相変わらずですね、あの人は」

 アストラは小さくため息をつくと、寝ているミルキィに近づき、律儀に肩を揺すった。

「ミルキィ、起きてください。緊急の連絡です」

「んん……あと五分……いや五時間……」

「起きてください」

 三回ほど揺すられたところで、ミルキィはようやく片目を開けた。

「あれ、アストラちゃんじゃん! 久しぶり! 何しに来たの?」

「呑気ですね……。実は乙女座銀河団の方で、新たな災厄生命体の出現が確認されまして。応援を――」

 言い終わる前に、遠くの空で轟音が響いた。

「――と、伝えている最中に、もう追いついてきてしまったようです」

 アストラは眉一つ動かさず、そう呟いた。


第二幕 全然痛くない

 降り立った敵は、これまでのものとはまた違う、鋭い刃のような突起を全身に纏った生命体だった。

「グオオオオ! おらぁ! スターナイツだかなんだか知らねえが、まとめてブッ潰してやる!」

「私が食い止めます。ミルキィはまだ休んでいてください」

「え、いいの? ありがと、じゃあお言葉に甘えて……」

 律儀に礼を言ってから、ミルキィは再び目を閉じ、地面に横たわる。二秒で寝息が聞こえ始めた。

(この人、本当に緊急事態への温度感が独特ですね……)

 アストラは内心そう思いながらも、静かに構えを取った。

 彼女の戦い方は、ミルキィのような直接打撃ではない。星を、天体を、意のままに操る遠隔戦術。だが、目の前の敵はその力量差を正確に測る余裕さえ与えてはくれなかった。

「くっ……!」

 連続する斬撃をかろうじて躱すも、体勢を崩したところに強烈な一撃をもらう。

「ぐ……!」

 吹き飛ばされ、地面を転がるアストラ。

「弱えなあ、スターナイツの伝令役なんてこんなもんか!」

 嘲る敵の声を聞きながらも、アストラは立ち上がろうとする。だがその隙に、追撃の一撃が振り下ろされた。

 その一撃は――ミルキィの背中に、まともに直撃した。

「え……」

 驚くアストラをよそに、寝転がったままのミルキィがのんびりと呟く。

「んー……全然痛くないよ。ただ、眠いだけだから……」

「ミ、ミルキィ!? 起きて……いえ、起きなくていいので、心配だけしてください!」

「大丈夫大丈夫、おやすみー……」

(この人、本当に規格外すぎる……!)

 アストラは半ば呆れながらも、状況を立て直すべく再び敵と対峙した。


第三幕 「では少し離れて下さい」

「おいスターナイツ、お前弱いんだろ! 技くらい見せてみろよ!」

 挑発するように笑う敵に、アストラは至って冷静に、しかし律儀に応じた。

「――では、少し離れて下さい」

「あ? まあいいけど」

 敵が数歩下がる。

「離れたぞ!」

「もっと離れて下さい」

「ああ?」

 敵はさらに距離を取った。

「もっと……」

「まだかよ!」

「もっと離れて下さい」

 さらに敵が下がる。

「この辺ー?」

 アストラは真面目な顔でこくこくと頷いた。

「――星の衝撃、アストラルクランプ」

 その瞬間、遠く離れた二つの惑星が瞬間移動したかのように動き、敵を左右から挟み撃ちにした。

「うぎゃあああああ!?」

 情けない悲鳴が響き渡る。

「な、なんつう卑怯な技だ! 卑怯だぞ!」

 距離を詰めて詰め寄る敵に、アストラは至極真面目な顔で答えた。

「……だって、あなたが技を見たいと言ったんじゃないですか」

「ぐぬぬ……! だがこの距離ならさっきの技は使えまい! 覚悟しろ!」

「――コメットシュート」

「え」

 ゴチーン、と鈍い音がして、隕石が敵の脳天に直撃した。

「あでーっ!? イテーだろ!!」

「だって、あなたが覚悟しろと言うので」

「な、なら今の程度なら何てことねえ! 至近距離ならこっちのもんだ、覚悟しな!」

「では、いっぱいあげます」

「え、待っ――」

 大量の隕石が降り注ぎ、敵は瞬く間にその下敷きになった。

「イテーだろおおおお!! もう許さん!」

 怒り狂う敵から距離を取るため、アストラは星形のボードを呼び出し、高速で離脱を始める。

 追ってくる光弾を紙一重で躱しながら、アストラはぽつりと呟いた。

「……私は、ミルキィのようには戦えない」

 その声には、悔しさとも憧れとも取れる、複雑な響きがあった。


第四幕 アストラちゃーん!

「――と、思った?」

「は……?」

 敵の背後から響いた声。振り返る間もなく、拳が炸裂した。

「アストラちゃーん!! 待っててくれてありがとー!!」

 寝起きとは思えぬ全力の一撃を受け、敵は絶叫を上げる間もなく、そのまま銀河の外へと吹き飛んでいった。光の点となり、やがて見えなくなる。

「あちゃあ……1割の力に加減したつもりだったんだけどなー。どっか行っちゃったよ」

 のんびりとそう言いながら頭を掻くミルキィ。空を見上げるアストラは、しばし言葉を失っていた。

「ま、まあいいや! アストラちゃんもお疲れ様、遠くから応援しててくれたんだよね!」

「いえ、応援ではなく交戦し……」

「そうだ! アストラちゃん、地球って星、すっごく美味しいご飯があるんだよ! 一緒に行こうよ!」

「は、話を聞いてください……」

 だが、ミルキィはすでに満面の笑みでアストラの手を引いていた。強引に。とても強引に。

 連れて行かれながら、アストラは小さくため息をついた。だがその口元は、ほんの少しだけ緩んでいた。

「……全く、この人はどこまで予想外なの」

 星空の下、二人分の足音が地球へと向かっていった。

(つづく)


ここまでご覧頂きありがとうございました。

次回はミルキィに負けず劣らず困った三人組の、三角銀河スターナイツが登場します。

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