最強、参上!
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超戦士スターナイツ
銀河系にはただ一つ、絶対の称号が存在する。
スターナイツ――銀河の星々を、あらゆる災厄から守護する者たち。
その称号を持つ戦士は、それぞれの担当銀河に選ばれた存在。彼らは星の数ほどある文明の、最後の盾であった。
第一幕 撃退ならず
太陽系第三惑星、地球。
その空に、突如として禍々しい影が降り立った。
焦げ茶色の肌に、無数の吹き出物じみた突起が浮かぶ顔。横に大きく裂けた口からは、猪の牙のような二本の突起が覗いている。ずんぐりとした胴長短足の体には軽量な鎧のプレートを纏い、両腕にはゴム手袋じみたガントレット、足には長靴じみたブーツ。
それが嗤う。太々しく、耳障りに。
「グヒヒヒヒ……今日はどの星を潰そうかと思ってたが、ちょうどいい。ここにするか」
災厄生命体――銀河のあちこちで文明を蹂躙してきた、悪名高き破壊者。
その前に立ちはだかったのは、小さなリスの姿をした地球の守り神、クルーンだった。手には大きな宿り木の杖を携え、鋭い眼差しで敵を睨む。
「ここは僕が守る地球だ……! 好きにはさせない!」
勇ましく啖呵を切ったクルーンだったが、現実は非情だった。
杖から放たれる光弾は次々と災厄生命体に直撃するが、まるで意に介した様子がない。反撃の一撃を受けるたび、クルーンの小さな体は地面に叩きつけられていく。
「グヒヒヒヒ! ちっぽけな惑星の守り神にしては、よくやったほうだぜ!」
災厄生命体が拳を振りかぶる。この一撃で、地球という星そのものが終わる――そんな予感がクルーンの脳裏をよぎった。
(誰か……誰か助けて……)
クルーンは霞む意識の中で、遠い記憶をたぐり寄せた。銀河の星々を災厄から守るという、伝説の騎士たちの存在を。
(お願いだ、スターナイツ……! 力を貸してくれ……!!)
心の中で叫んだ、その瞬間。
災厄生命体の拳が振り下ろされ、世界は白い閃光に包まれた。
――終わった。誰もがそう思った、次の瞬間。
「――助けを呼ぶ声、銀河の果てでも聞こえたよ」
涼やかな声が、爆発の中心に響いた。
クルーンが目を開けると、そこには一人の少女が立っていた。見た目はおよそ十四歳。青いボブヘアに、星の飾りがついた大きなリボンをなびかせて、胸元には星の紋章が輝く小さなプロテクター、その下に青い半袖ワンピース。動きやすそうな短めのレギンスに、格闘家のような甲当てグローブ。
その左手は、たった今――災厄生命体渾身の一撃を、いともたやすく宇宙の彼方へと弾き飛ばした後だった。
少女は前歯を覗かせ、屈託のない笑顔でクルーンを振り返る。
「もう大丈夫だよ! ここからはこの銀河のスターナイツで一番強い、私ミルキィに任せてよ! ちなみに二番目は聞かないで、ちょっとややこしいから!」
クルーンの目に、みるみる涙が浮かんだ。
「あ、ああ……! ありがとう、ありがとうスターナイツ……!」
第二幕 遅刻上等の最強戦士
感激に打ち震えるクルーン。だがその感動的な空気は、次の瞬間、盛大な音によって粉々に打ち砕かれることになる。
「ギュルルルルルルル……」
辺り一帯に響き渡ったのは、およそ銀河最強の戦士から発せられたとは思えぬ、腹の虫の大合唱だった。
「え……今のミルキィから?」
「銀河の果てから瞬間移動してきたから……お腹空いて……もう指一本動かない……」
目をぐるぐると回しながら、ミルキィはか細い声で訴えた。
「そんな! さっきまでの神々しさどこ行った!?」
しかしクルーンは地球の神。すぐさま思い直し、目の前に山のようなご馳走を出現させる。
「ぼ、僕は地球の神だから、食べ物ならいくらでも出せる! さあ、食べて元気を出して!」
その瞬間、ミルキィの目に生気が戻った。
「わあああ! さっすが地球の神、話がわかる! いただきまーす!」
もの凄い勢いで頬張り始めるミルキィ。あっという間に山と積まれたご馳走は消えていく。
「美味しい……美味しくて幸せぇ……ここ、永住したいくらい……」
うっとりとした表情で完食したミルキィを前に、クルーンは希望に満ちた顔で叫んだ。
「さあ! 一緒に戦ってスターナイツ!」
「んー……お腹いっぱいになったら、眠くなってきちゃった……美味しくてつい、食べ過ぎちゃったかも、てへ」
言うが早いか、ミルキィはその場にごろんと寝転がり、すーすーと寝息を立て始めた。
「ええええ!? てへ、じゃない! うわあああ、使えねえこの馬鹿!!」
クルーンの絶叫が虚しく木霊する。
「ムニャ……少し寝れば大丈夫だよ……戦闘力は保証するから……」
寝言でそう呟くミルキィをよそに、地上では再び災厄生命体が力を漲らせていた。
第三幕 噛ませ犬、奮戦す
「アイツ、とんでもない強さだったのに、何しに来たんだこの寝坊助……! しかも保証とか言い出すし……クッ……!」
クルーンは涙目になりながらも、再び宿り木の杖を構えて立ち上がる。
「グヒヒヒヒ! 無力! 無力だなあ、いつやっても無力な星を潰すのは最高に楽しいぜ!」
卑劣な笑いを浮かべる災厄生命体に向かって、クルーンは捨て身の覚悟で飛び込んだ。
「こうなったら、やぶれかぶれだ……! 誰も頼れないなら僕がやるしかない!」
繰り出される拳をひらりとかわし、渾身の蹴りを叩き込む――が、あっさりとかわされてしまう。逆に羽交い締めにされるクルーンだったが、それはとっさに用意した身代わり。ボンッと軽い音を立てて煙に消える。
「この一撃に、地球の神の全ての力を込める……!!」
本体のクルーンが背後から放った渾身の光弾。しかし災厄生命体は事もなげにそれをかわす。
「は……外した……! 嘘だろ……!」
絶望に顔を歪めるクルーンをよそに、光弾は地球をあっさりと飛び越え、宇宙の彼方へと消えていった。
――そして遥か彼方、木星の表面には、大赤斑に匹敵するほど巨大な穴がぽっかりと空いていた。
「おお、危ねえ危ねえ。今のはまともに食らってたら、さすがの俺でもちょっとヤバかったかもな」
災厄生命体はニタァと笑うと、先ほどとは比較にならぬ絶大な威力の一撃を再び放とうとする。
もはや、これまでか――地球の命運が尽きようとした、その刹那。
「――と、思った?」
寝転んでいたはずのミルキィが跳ね起き、その一撃をあっさりと弾き返した。
「うおおおおお!? もう起きたのかよ!?」
驚愕する災厄生命体に向け、ミルキィが腰を捻りながら拳を放つ。それは避けたはずの空間そのものを歪め、まるで吸い寄せられるように災厄生命体の顔面へクリーンヒットした。
「ぐええええええ!!」
悲鳴を上げながらグルグルと回転し、災厄生命体は吹き飛んでいく。その勢いのまま、地球を二周してから墜落した。
「な、何だ今の拳は……!? 体が勝手に吸い寄せられただと……!?」
困惑する災厄生命体に向かって、ミルキィは腰を落とし、拳を振り上げながら不敵に微笑んだ。
「私の渾身のストレートはね――時空を引き裂いて、銀河をも消滅させちゃうよ。さっきの寝てた私とは思わないでね」
その言葉に込められた圧倒的な力の気配に、災厄生命体はようやく理解する。目の前の少女が、桁違いの存在であることを。
「わ、悪かった! もう悪い事はしない、だから助けてくれ!!」
泣き叫ぶようにそう懇願する災厄生命体。
するとミルキィは、あっさりと拳を下ろし、にっこりと笑った。
「うん、わかった。約束だよ」
災厄生命体はくしゃくしゃの泣き顔になりながら、逃げるように去っていった。
第四幕 銀河最強の在り方
「な、何故とどめを刺さなかったんですか!?」
クルーンが駆け寄りながら尋ねると、ミルキィは白い歯を見せてにっこりと笑った。
「スターナイツはね、力と恐怖で相手を縛るのが役割じゃないんだよ。銀河の平和って、命を奪うだけじゃ守れない事もあるの」
その言葉に、クルーンは静かな衝撃を受けた。
(ああ……これが、銀河最強のスターナイツ……なんて、尊いんだ……)
感動に打ち震えるクルーンに、ミルキィがすっと近づく。両手を頭の後ろで組みながら、にんまりと悪戯っぽい笑みを浮かべて。
「ところでさっき、『使えない馬鹿』って聞こえた気がするんだけど……何のことか、詳しーく聞きたいなあ? 尋問開始しちゃう?」
「あっ、いえ、その……! 気にしないでください! 何も聞こえてません!」
クルーンは今にも泣きそうな顔で、ぶんぶんと首を振った。
ミルキィはくすくすと笑いながら、明るい声で言う。
「まあいいや、今回は見逃してあげる。お互い頑張ったし、地球の危機も去ったんだから、一緒にご飯でも食べようよ」
「!」
その一言に、クルーンの顔がぱあっと輝いた。
「それなら、とびっきりのご馳走を用意しますよ! 沢山食べてください!」
「よし決まり! 実はさっきのご馳走、もう小腹空いてきてたんだよね」
「早い!?」
星空にきらめく雲の上で、二人は美味しい料理を囲みながら笑い合った。
クルーンはふと苦笑いを浮かべる。
(しかし……お腹が空くと動けなくなって、お腹いっぱいになっても何もできなくなるなんて。困った最強戦士だなあ……)
そんな心配をよそに、ミルキィは目を輝かせながら、ムシャムシャとご馳走を頬張っていた。
「んー! 幸せぇ! 地球最高!」
その屈託のない笑顔だけは、銀河のどんな災厄も敵わないほど、眩しく輝いていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
腹ペコで動けず、満腹で寝ちゃうミルキィですが、はたして銀河を守れるのか……!?
次回は「乙女座銀河団のスターナイツ」が登場します!
「ミルキィ可愛い!」「クルーン頑張れ!」
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