第五部 第三十五話 開いてしまった穴
第一幕 いつも通りの一撃、のはずが
ミルフィーによる修行を終えて、しばらく経ったある日。
地球の空の下、久しぶりに現れた災厄生命体を相手に、ミルキィは軽い調子で戦っていた。
「よーし、修行の成果、見せちゃうよ!」
加減を意識しながら放った一撃が、敵の攻撃と真正面からぶつかり合う。
「グヒヒヒ、この程度か!」
挑発するような相手の言葉に、ミルキィの中で、ほんの僅かに、闘志の火が過剰に灯った。
「――むっ、その言い方、ちょっとムカつくかも」
「え……ミルキィさん?」
クルーンが、嫌な予感を覚えて声をかける。
「えいっ!」
放たれた一撃は、加減の意識を僅かに振り切った、久々の全力に近いパンチだった。
「うわあああああ!?」
災厄生命体は、あっさりと消し飛ぶ。
だが――その拳の余波が、空間そのものを、大きく引き裂いてしまった。
「あ……」
目の前に広がったのは、ぐにゃりと歪んだ、見た事のない裂け目だった。
第二幕 異次元からの来訪者
「な、なに、これ……!」
クルーンが、恐る恐る裂け目を見つめる。
その裂け目の奥から、ひょっこりと、一人の青年が顔を覗かせた。
「あれ、ここどこだ……。俺、また変な所に迷い込んだか……?」
疲れた表情の青年――レギオンが、辺りを見回しながら呟く。
「係長、また迷子ですか? 呆れちゃいますね」
その後ろから、ピンク髪のツインテールに、妖精のような羽を生やした少女、ナビビが、ひょいと顔を出した。
「うるせえな、俺だって好きで迷い込んでるわけじゃ……。お、なんか賑やかな星だな」
レギオンが、興味深そうに裂け目から足を踏み入れる。
「わあ、面白そうな次元ですねー。ちょっと覗いてみましょうか」
ナビビも、軽やかにその後に続いた。
「な、なんですか、あなた達!?」
クルーンが、慌てて杖を構える。
「お、こっちの世界にも、それなりに戦える奴がいるみたいだな」
レギオンが、興味深そうにクルーンを見やった。
第三幕 叱責、そして修復作業
「ミルキィ! 一体、何をやらかしたのよ!」
異変を察知したミルフィーが、瞬時に駆けつけてきた。
「あ、あはは……。ちょっと、力が入りすぎちゃって」
「空間を引き裂くだけならまだしも、まさか、次元の壁まで破ってしまうなんて……!」
ミルフィーが、頭を抱える。
「ご、ごめんなさい!」
「とにかく、これは早急に塞がないと、大変な事になるわ。ミルキィ、あなたも手伝いなさい」
「え、私も戦いたいんだけど……」
「今回ばかりは、あなたを戦わせるわけにはいかないの。原因はあなたなんだから、責任持って、こっちを手伝って頂戴」
有無を言わさぬ様子のミルフィーに、ミルキィは渋々頷いた。
「わかった……。じゃあ、皆をお願いね」
こうして、ミルキィは戦線から外れ、姉と共に、次元の穴の修復作業に取り掛かる事になった。
第四幕 迎撃態勢
「――この気配、まさか」
異常な力の反応を察知し、アストラが星の道を駆け抜けてきた。
「アストラさん!」
「クルーンさん、状況は?」
「わかりません、突然、空間に穴が空いて、あの二人が……」
クルーンが、困惑した様子で説明する。
「お、また新手か。にしても、次から次へと、賑やかな世界だな」
レギオンが、軽い調子でそう呟いた。
「あなた達は、何者ですか。目的は?」
アストラが、油断なく問いかける。
「別に、大した目的はねえよ。ちょっと、面白そうだったから、覗きに来ただけだ」
「係長、あんまり気を抜いてると、痛い目見ますよー?」
ナビビが、にこやかにそう茶々を入れる。
「うるせえな……。まあ、俺だって、宇宙で戦う企業の人間だ。この世界の連中がどれくらいやるのか、ちょっとだけ、試させてもらうぜ」
レギオンが、気だるげながらも、静かに拳を構えた。
その一挙一動から漂う力の気配に、アストラは、思わず息を呑んだ。
(これは……。今までの敵とは、明らかに、質が違う……!)
招かれざる来訪者達との、予期せぬ戦いの幕が、静かに切って落とされようとしていた。
今回は、異次元から現れたキャラ達との話です。
ここで登場するキャラは、別の作品として執筆予定の登場人物で、異次元からの来訪者として登場させました。
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