第三十四話 最終試験
第一幕 最終試験、宣言
「――さあ、修行の総仕上げよ」
ミルフィーが、一同の前に堂々と立った。
「これから、私が一人で、皆の相手をします。全力で、かかってきなさい」
「お姉ちゃん一人で、全員相手にするの!?」
「あら、不服? それとも、自信がない?」
ミルフィーが、挑発するように微笑む。
「上等だよ! 皆、いくよ!」
ミルキィの号令と共に、最終試験の火蓋が切られた。
第二幕 一斉に挑む
「僕からいきます!」
ウェルが、真っ先に踏み込んだ。以前とは違う、迷いのない鋭い踏み込み。
「ほう、良い動きね」
ミルフィーが、軽やかにそれを受け流しながら、感心したように呟く。
「僕も!」
クルーンが、輝く球体のオーラを纏い、飛び込んでいく。
「キャンディクルーンだ!」
その輝きは、以前よりも遥かに安定し、長く力強く持続していた。
「あら、随分と粘り強くなったじゃない」
「アストラルクランプ、改!」
アストラの放つ、無駄なく収束した星の一撃が、ミルフィーの防御を僅かに揺るがせる。
「これは……! 綺麗に纏まった一撃ね」
ミルフィーが、初めて僅かに、驚いた表情を見せた。
三人の連携は、以前とは比べ物にならないほど、洗練されたものになっていた。
第三幕 ミルキィの試練、そしてくしゃみ事件
「よし、私も!」
ミルキィが、静かに拳を構える。
「今回は、全力でぶつかるんじゃなくて――加減を、しっかり見せてみなさい」
ミルフィーの言葉に、ミルキィは頷いた。
「うん! これくらいの力で……!」
放たれた一撃は、以前よりも遥かに精密に調整され、必要以上の威力を伴わない、絶妙な加減の一撃だった。
「あら、やるじゃない」
ミルフィーが、感心したように微笑む。
だが――
「くしゅっ!」
突然、ミルキィが大きなくしゃみをした。
「え……」
その反動で、力の制御が一瞬乱れ、次の拳に、思わぬ全力の威力が乗ってしまう。
「ちょ、ちょっと待っ――」
「危ない!」
放たれた渾身の一撃が、ミルフィーめがけて突き進む。
「くっ……!」
ミルフィーは、とっさに全力でそれを弾き返した。
轟音と共に、周囲に激しい衝撃波が広がる。
「あ……危な……」
「あ、あわわ、ごめんなさい、お姉ちゃん!」
ミルキィが、慌てて両手を振って謝った。
「はぁ……。全く、肝心なところで、詰めが甘いんだから」
ミルフィーが、額に手を当てながら、深いため息をついた。
第四幕 講評、そして口喧嘩
「――さて。総評を言うわね」
試験を終え、ミルフィーが一同を見渡す。
「ウェル、動きに迷いがなくなったわね。見違えたわ」
「ありがとうございます」
「クルーン、力の持続力、格段に上がっているわね。よく頑張ったわ」
「えへへ、嬉しいです!」
「アストラ、無駄のない一撃、見事だったわ。及第点よ」
「光栄です」
次々と褒め言葉を送られる中、ミルキィだけが、そわそわと自分の番を待っていた。
「そして――ミルキィ」
「は、はい!」
「加減の精度は、確かに上がっていたわ。それは、認める」
「や、やった!」
「でも――肝心なところで、くしゃみで台無しにするのは、どうかと思うわよ」
「え、そこ!?」
ミルキィが、思わず声を上げる。
「だって、くしゃみは、私のせいじゃないよ! 不可抗力だよ!」
「言い訳は見苦しいわよ」
「お姉ちゃんだって、さっき危うく食らいそうになってたじゃん!」
「あれは、油断していただけよ」
「絶対、動揺してたよね!?」
姉妹の言い合いに、一同から、思わず笑いが零れた。
「まあまあ、お二人とも」
アストラが、苦笑いを浮かべながら間に入る。
「とにかく、皆さんの成長は、しっかり確認できました。この修行、無駄ではなかったという事ですね」
「ふん……。まあ、認めてあげてもいいわ」
ミルフィーが、そう言いながらも、僅かに口元を緩めた。
厳しくも温かい修行の日々は、こうして幕を閉じた。
だが、それぞれの胸の内には、確かな自信と、次なる戦いへの予感が、静かに宿り始めていた。
(第四部・完)
ここまでご覧頂きありがとうございます。
三部が重い話だったので、少しコメディ回を挟んでみました。次回の5部もコメディ&戦闘で作ってます。
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