第三十二話 美の暴力
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第一幕 合流、アストラの特訓
「お、来たか! ちょうどいいタイミングだ」
トライが、満面の笑みで一同を出迎えた。見れば、既にアストラが、三角銀河トリオと共に特訓に励んでいたらしい。
「アストラちゃん、もう始めてたの?」
「はい。少し早めに、こちらで指導を受けていました」
アストラが、汗を拭いながら答える。
「一体、どんな特訓を?」
「美しい配置による、アストラルクランプの改良です」
「美しい配置……?」
ミルキィが、首を傾げた。
第二幕 美の暴力
「アストラ、お前のアストラルクランプは、確かに強力だ。だが――星々の配置が、雑だ」
トライが、腕を組みながら、真剣な顔で告げる。
「雑、ですか」
「ああ。狙った箇所に向けて、ただがむしゃらに天体をぶつけているだけでは、力が分散してしまう」
ラグルが、指を動かしながら説明を続けた。
「正確な幾何学的配置――例えば、正三角形、あるいは黄金比に基づいた並びで天体を配置すれば、衝撃が一点に収束し、破壊力は飛躍的に高まります」
「美しさは、そのまま効率に繋がる。俺達が、身をもって証明してきた通りにな」
アイルが、得意げに胸を張った。
「なるほど……。美学が、そのまま合理性に繋がるという事ですか」
アストラが、感心したように呟く。
「試してみましょう」
アストラは、彼方の星々を呼び寄せながら、慎重に、正確な配置を組み上げていく。
「――星の衝撃、アストラルクランプ、改」
放たれた一撃は、これまでとは比較にならないほど鋭く、そして無駄のない威力を伴っていた。
「これは……! 同じ力を使っているはずなのに、これほどの差が……!」
アストラが、自らの拳を見つめながら、驚きを隠せずにいた。
「美は、力なり。覚えておくといい」
トライが、満足げに頷いた。
第三幕 キャンディクルーンの美学調整
「よし、次はクルーン、お前の番だ」
トライが、クルーンへと向き直る。
「え、僕もですか!?」
「見せてみろ、例の変身とやらを」
クルーンは、恐る恐る、いつもの飴玉のようなオーラを纏った。
「――キャンディクルーンだ!」
「ふむ……。美しさの比率は、悪くない。だが、惜しい」
トライが、じっくりと観察しながら呟く。
「もう少し、波動を左に。それと、艶をこう――もっと際立たせて」
「え、えっと……こう、ですか?」
クルーンが、戸惑いながらオーラの形を微調整していく。
「うむ。あとは、大きさを、もう少しだけ絞って……」
「こう、でしょうか」
「――完璧だ!」
トライが、満足げに頷いた。
「不思議と、動きも軽くなった気がします!」
クルーンが、驚いたように呟く。無駄な力みが削ぎ落とされた事で、オーラの制御そのものが洗練され、以前よりも遥かに滑らかに力を扱えるようになっていた。
「美は、無駄を削ぎ落とす事でもあるのさ」
ラグルが、誇らしげにそう告げた。
第四幕 突然の美しい選手権
「――さて、諸君。ここで、我々からの余興を発表しよう」
特訓の合間、突如としてトライが、仰々しく声を張り上げた。
「余興?」
「銘打って、『第一回、美しい選手権』だ!」
「な、なんですかそれ!?」
クルーンが、思わず声を上げる。
「今日一日の特訓を通して、最も美しい動きを見せた者に、特別賞を授与する!」
「い、いつの間にそんな企画が……」
アストラが、呆れたように呟いた。
「栄えある第一回、特別賞は――」
トライが、勿体ぶるように一同を見渡す。
「ウェル、お前だ!」
「え、僕ですか!?」
ウェルが、驚いた様子で目を丸くする。
「今日の特訓、実に美しかった。無駄のない動き、そして――迷いを振り切った、まっすぐな気迫。あれは、見ていて実に清々しかったぞ」
トライの言葉に、ラグルとアイルも頷いた。
「お前、思ったより筋がいいな」
「これから先、君の動きに、注目させてもらいます」
「あ、ありがとうございます……」
ウェルは、少し照れくさそうに、それでも嬉しそうに頭を下げた。
「勝手に選手権開いて、勝手に賞まで用意するの、本当に自由ですね……」
クルーンが、苦笑いを浮かべながら呟く。
「まあ、それも三角銀河トリオらしいという事で」
ミルキィが、笑いながらそう言うと、一同から和やかな笑い声が上がった。
賑やかで、それでいて確かな成長を伴う特訓の日々は、まだ続いていく。
(つづく)
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