第二十八話 決着、そして芽生えた闇
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第一幕 二人がかりの意地
「くそ……! キャンが、まさかあっさりとやられるとは……!」
レグルスが、悔しげに歯を食いしばる。
「だが、俺達は、まだやれる!」
ヴェガが、力を漲らせながら前に出た。
「二人がかりでも、いいんだよね?」
ミルキィが、静かに問う。その声には、既に迷いはなかった。
「舐めるな!」
二人が、同時に飛びかかる。
放たれる拳と光弾の連携は、確かに息が合っていた。だが、ミルキィはその全てを、冷静に見極めながら捌いていく。
「二人の連携、悪くないよ。でも――」
軽やかに一歩踏み込み、ミルキィはレグルスの拳を弾き、そのまま鋭い一撃を叩き込んだ。
「ぐああっ!」
レグルスが、大きく吹き飛ぶ。
「レグルス!」
ヴェガが叫ぶも、その隙を、ミルキィは見逃さなかった。
「六割の力でも、まだ十分だよ」
放たれた一撃が、ヴェガの体を捉える。
「が……はっ……」
声にならない呻きと共に、ヴェガもまた、静かに地に沈んだ。
辺りに、静寂が戻る。
「……終わった、のかな」
クルーンが、恐る恐る周囲を見渡す。
「うん。……でも」
ミルキィが、ふと振り返った、その先。
第二幕 異変
「ウェル……?」
地に伏したままのウェルの体から、これまで見た事のない、昏い光が立ち上っていた。
「アストラちゃん、ウェルの様子が――!」
「!」
アストラが、慌てて駆け寄る。だが、その手が触れる前に、ウェルの体は、ゆっくりと起き上がった。
「……ウェルさん?」
クルーンが、恐る恐る声をかける。
「僕、は……」
ウェルの瞳は、キャン達と同じ、光を失った昏さを湛えていた。
「ウェル! しっかりして下さい!」
アストラが、悲痛な声で叫ぶ。
「アストラ、さん……」
ウェルは、掠れた声でそう呟くと、静かに視線を上げた。
「僕は……もう、これでいいんです」
「そんな……! 一体、何を言ってるんですか!」
「僕は、ずっと……怖かった。ミルキィさんに、追いつけない自分が。皆を、守りきれない自分が」
ウェルの声は、これまでのどんな時よりも、弱々しかった。
「この力があれば……もう、迷わずに、戦える」
「ウェル、違います! そんな力に頼らなくても――」
アストラが叫ぶも、その声は、ウェルの耳には届いていないようだった。
彼の体を包む昏い光が、次第に強さを増していく。
第三幕 資格という名の呪縛
「――お前は、もう、スターナイツと名乗る資格はない」
どこからともなく、闇そのものが囁くような声が響いた。
「!」
「正義を捨てた者に、その称号は相応しくない。だが、それでいい。お前はただ、力だけを求めればいい」
「僕は……」
ウェルの瞳から、更に光が失われていく。
「そんな事――絶対に、言わせません」
アストラが、静かに、しかし強い意志を込めて前に出た。
「資格なんて、誰にも奪えるものじゃありません。それを決めるのは、力でも、闇の声でもない」
「アストラ、さん……」
「あなたが、皆を守りたいと思う、その気持ちこそが、あなたをスターナイツたらしめているんです」
アストラの言葉に、ウェルの瞳に、ほんの一瞬、迷いが差した。
だが――
「――遅い」
闇の力が、一気にウェルを飲み込んでいく。
「ウェル!」
「ウェルさん!」
アストラとクルーンの叫びも虚しく、ウェルの姿は、完全な闇の力に覆われてしまった。
「僕は……もう、迷わない」
昏い光を纏ったウェルが、ゆっくりと立ち上がる。その姿は、もはや、これまでの穏やかな青年の面影を、僅かにしか残していなかった。
「これが、僕の――本当の力です」
その声には、悲しいほどの決意と、拭いきれない孤独が滲んでいた。
ミルキィは、その姿を見つめながら、静かに拳を握りしめる。
「ウェル……。私が、絶対に、取り戻すから」
激闘の末に得た勝利の余韻も冷めやらぬまま、一同は、新たな、そして最も辛い戦いへと向き合う事になった。
(つづく)
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