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超戦士スターナイツ  作者: 海原ナギサ
心の影編
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第二十五話 滲む影

第一幕 賑やかな再会

「よう、ウェル! 久しぶりだな!」

 キャンが、明るく手を振りながら駆け寄ってきた。その後ろには、レグルスとヴェガの姿もある。

「キャン、レグルス、ヴェガ。皆さん、お元気そうで何よりです」

 ウェルが、穏やかな笑みで応じた。

「わあ、皆さんこんにちは! 私、ミルキィです!」

「お、あんたがナンバー1スターナイツか! 噂通り、明るい子だな」

 キャンが、快活に笑う。

「美味しい食べ物あるって聞いて、テンション上がっちゃって!」

「あはは、そりゃいい。噂には聞いてたが、こんなに豪華だとはな」

 ご馳走を前に、レグルスも満足げに頷いた。

 賑やかな食卓を囲みながら、しばらくは和やかな時間が流れていた。


第二幕 滲む影

「そういや、大会以来だよな。ウェル、あれから随分、名を上げたみたいじゃないか」

 キャンが、笑いながらそう言った。だが、その声には、ほんの僅かに硬さが混じっていた。

「いえ……。まだまだ、ミルキィさんには及びません」

「そうか? ナンバー2ってのは、それだけで大したもんだろ」

「……はい」

 ウェルは、素直にそう返す。だがその一言に、キャンの表情が、微かに歪んだ気がした。

「ナンバー2、ね……」

 ヴェガが、静かに呟く。

「俺達は、大会でも全然目立てなかったもんな」

「まあ、実力の差、ってやつだ」

 レグルスが、努めて軽い口調でそう言うが、その笑顔はどこかぎこちなかった。

「そういえば――」

 キャンが、ふと話題を変えるように口を開く。

「見舞いに行ったんだよ、この前。ヴォイドの一件で、重傷負った奴のところにな」

「え……」

 ウェルの表情が、僅かに強張った。

「あいつ、随分と参ってたよ。世の中には、やる気だけじゃ超えられない壁がある、ってな」

 その言葉に、場の空気が、微かに冷えていく。

「……大変な思いを、されたんですね」

 ウェルが、静かにそう返した。

「ま、俺達には関係ない話さ。忘れてくれ」

 キャンが、そう言って笑ってみせる。だが、その笑みは、どこか無理をしているように見えた。


第三幕 闇の芽生え

 食事の後、キャン達三人は、少し離れた場所で休憩を取っていた。

「……なあ」

 キャンが、ぽつりと切り出す。

「俺達、このままでいいのか?」

「どういう意味だ」

「ウェルは、ナンバー2だ。俺達は、大会でも一回戦負け。実力の差は、確かにある。……でも、それだけか?」

 キャンの声に、これまで押し殺してきた何かが滲み始めていた。

「俺とウェルは、同期だった。スタートラインは、一緒だったはずなんだ。なのに、いつの間にか、こんなにも差がついちまった」

「キャン……」

「俺達だって、もっと強くなれるはずなんだ。なのに、なんで俺達は、こんな所で燻ってるんだ」

 その時、どこからともなく、暗い靄のようなものが、三人の足元に忍び寄ってきた。

「……なんだ、これ」

「気をつけろ、何か――」

 レグルスとヴェガが、身構えようとした瞬間には、既に靄は三人の体を包み込んでいた。

「――もっと、強くなりたいか」

 声とも呼べない何かが、三人の内側に、直接語りかけてくる。

「お前達の中にある、その悔しさ、その渇望。それこそが、力になる」

「これは……」

「正義や、優しさなど、捨ててしまえばいい。そんなものは、お前達を弱くするだけだ」

「俺は……。俺は、もっと――」

 キャンの瞳から、光が失われていく。

「強く、なりたい……!」

 その叫びと共に、三人の体を、黒い靄が完全に覆い尽くした。


第四幕 豹変

「ウェル……」

 覚束ない足取りで戻ってきたキャンの姿に、ウェルは違和感を覚えた。

「キャン? どうかしましたか?」

「……お前、ずっと、ナンバー2として、良い気になってたんだろ」

 その声は、先程までとは明らかに違う、昏く冷たい響きを帯びていた。

「え……」

「お前も、どうせ、俺達と同じようになるんだよ」

 キャンの瞳が、黒い靄のように濁っていく。

「キャン、様子が……!」

 ウェルが、慌てて構えを取る。

「俺達は、もう、燻ってなんかいない」

 レグルス、ヴェガも、同じように昏い瞳で、静かに立ち上がった。

「俺達は今、正義なんて、どうでもよくなった。あるのは――ただ、力への渇望だけだ」

「そんな……! 一体、何が――」

 クルーンが、恐怖に顔を歪めながら後ずさる。

「ミルキィさん、下がって下さい。これは――尋常じゃない」

 ウェルが、鋭くそう告げた。

 三人の体から立ち上る、これまでとは比較にならない禍々しい力の奔流。

「久しぶりの手合わせだな、ウェル。俺達の、本当の実力を――見せてやるよ」

 キャンが、昏い笑みを浮かべながら、そう告げた。

 賑やかだったはずの再会は、静かに、しかし確実に、戦いの気配へと変わっていった。

(つづく)


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