第二十話 託された力、アストラの覚醒
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第一幕 託された力
「クルーン、まだ動けそうか?」
ホエードが、息を切らすクルーンに問う。
「はい……多分、あと一回分くらいなら」
クルーンは、震える手で杖を握りしめた。
「なら、決めましょう。誰に、この力を託すか」
ホエードの言葉に、一同がはっとした。
「僕は、決勝の時のような全力の力添えは、もうできません。でも――今の僕とホエードの力を合わせれば、あと一人くらいは、大きく後押しできると思います」
「私が適任だと思います」
真っ先に声を上げたのは、アストラだった。
「な、なぜ、アストラちゃんが?」
ミルキィが、驚いた様子で問う。
「あのフルーツを奪い取るには、力任せの一撃ではなく、精密な一手が必要です。私の遠隔操作の力なら、他の誰よりも正確に、あの一点だけを射抜けます」
その冷静な分析に、誰も異論を挟めなかった。
「わかりました。アストラさん、僕らの力を――」
クルーンとホエード、二人分の力が、静かにアストラへと注ぎ込まれていく。
第二幕 覚醒、アストラ
「これは……」
アストラの全身が、淡く輝き始めた。これまでの理知的な佇まいはそのままに、しかしその奥に、これまで見せた事のない鋭い力が漲っていく。
「星の力、増幅――限界突破」
アストラが静かに呟くと、彼女の周囲に、これまでとは比較にならない規模の星々が集結し始めた。
「アストラちゃん、すごい……!」
ミルキィが、目を見張る。
「私は、ミルキィのような瞬発力はありません。でも――」
アストラの瞳に、強い決意が宿る。
「今の私になら、あの一点を正確に撃ち抜けます」
「三角銀河トリオ、ウェル、ミルフィー様! 陽動をお願いします!」
アストラの声に、傷だらけの体を起こしながら、それぞれが頷いた。
「よし……! 派手に暴れてやるさ!」
トライが、痛む体に鞭打ちながら前に出る。
第三幕 奪取作戦
「行くぞ! 三人一丸となって、奴の目を引き付けろ!」
トライ、ラグル、アイルが、ヌルの左側面から一斉に攻撃を仕掛ける。
「私も、加勢します」
ウェルが、右側面から鋭い蹴りを叩き込んだ。
「痛みなんて、後回しよ」
ミルフィーが、なけなしの力を振り絞り、正面から光弾を放つ。
四方から集中する攻撃に、ヌルの意識が完全に分散した、その瞬間。
「――アストラルクランプ、極」
アストラが、静かに、しかし力強く技名を紡ぐ。
彼方から集結した巨大な星の群れが、寸分の狂いもなく、ヌルの体内に埋め込まれたギャラクシーフルーツへと、まっすぐに収束していく。
「な……!?」
ヌルの体が、初めて明確な驚きを見せた。だが、もう遅かった。
「――取った!」
衝撃と共に甲殻の一部が弾け飛び、その中から、淡く輝く果実が宙に舞い上がる。
第四幕 フルーツ、ミルキィの手に
「ミルキィ、受け取って下さい!」
アストラが叫ぶと同時に、果実は真っ直ぐにミルキィの元へと飛んでいった。
「これが……ギャラクシーフルーツ……!」
ミルキィが、両手でしっかりとそれを受け止める。
手のひらに伝わる、これまで感じた事のない優しい温もり。ほのかに漂う、この上なく甘美な香りが、疲弊しきった体に、一筋の活力を灯した。
「アストラちゃん、皆、ありがとう……!」
ミルキィの瞳に、確かな力が戻ってくる。
一方、フルーツを奪われたヌルは、怒りとも呼べぬ、ただの空虚な反応を見せながら、再びその体を大きく震わせ始めていた。
「……まだ、終わっていませんね」
アストラが、荒い息のまま、油断なく前を見据える。
「むしろ、ここからが――正念場だと思います」
ミルキィは、手の中の果実を、静かに見つめた。
これを口にした瞬間、自分がどう変わるのか。そして、目の前の敵と、本当の意味で決着をつける時が、すぐそこまで迫っていた。
(つづく)
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