第十八話 蠢く影の群れ
ご覧頂きありがとうございます、ここから本戦の回です。
第一幕 蠢く闇
ヴォイド宇宙の奥深く、光の一切届かない暗闇の中を、一行は慎重に進んでいた。
「……何か、いますね」
アストラが、静かに歩みを止める。
暗闇の奥から、次々と黒い影が滲み出るように姿を現した。人型とも獣型ともつかない、輪郭の曖昧な、無数の影の群れだった。
「幻影、でしょうか」
「いや……。反応を見る限り、実体はあるようだ」
ホエードが、冷静にそう分析する。
「本物か偽物かはさておき、来るぞ!」
トライが叫ぶと同時に、影の群れが一斉に襲いかかってきた。
第二幕 三角銀河トリオ&アストラ、応戦
「ラグル、アイル、隊列を組むぞ!」
「了解です!」
「おうよ!」
三人は息を合わせ、影の群れへと踏み込んでいく。
だが――影は、これまでの敵とは違う不気味な性質を持っていた。攻撃を受けると、その体がぐにゃりと形を変え、まるで攻撃者の動きそのものを模倣するように、次の一撃を繰り出してくるのだ。
「な……! 今の攻撃、僕の動きと同じ……!」
ラグルが、驚愕の声を上げる。
「学習してる、という事ですね」
アストラが、冷静に告げながら、遠隔で星の礫を降らせる。
「厄介ですね……このままだと、こちらの手の内が読まれ続けます」
「なら、読まれる前に決めるしかないな!」
トライが吠える。
「トライ、右! ラグル、そこ! アイル、真ん中!」
合図と共に、三人は綺麗な三角形の陣形を組んだ。
「――『トライアングル・グローリー』!」
完璧に噛み合った一撃が、目の前の影を纏めて吹き飛ばす。
「よし、決まった!」
「ですが……」
アストラが、僅かに表情を曇らせる。
「数が、減っていません」
見れば、吹き飛ばされたはずの影が、再び形を成し、じわじわと数を増やしていた。
「きりがない、という事か……」
ホエードが、静かに呟いた。だが、その目には、何か閃くものがあった。
「――ちょうどいい」
「え?」
「これだけの数がいるなら、まとめて頂こう」
ホエードは、体を瞬時に伸ばし、次々と押し寄せる影の群れへ、鋭く指先を突き刺していく。
「!」
一体、また一体と、影の生命力がホエードの中へ吸い込まれていった。数の多さが、そのまま彼にとっての糧となる。
「ホエード……!」
クルーンが、その意図に気づいて目を見開いた。
「クルーン、いくよ。今度は――君の本来の力で」
「僕の……本来の?」
ホエードから流れ込む力は、前回の戦いの時のように全てを託すものではない。だが、確かにクルーンの内側で、青いオーラが力強く輝きを増していく。
「これが……! すごい、力が漲ってくる!」
クルーンを包むオーラが、飴玉のように艶やかな球体へと形を変えた。
「いくぞ! キャンディクルーンだ!」
「ええっ! なにそれ!?」
選手席ならぬ戦場で、ミルキィが驚きの声を上げる。
「今度は、僕自身の力でもあるんです!」
クルーンは、誇らしげにそう叫ぶと、輝く球体のオーラを纏ったまま、影の群れの中心へと飛び込んだ。
「キャンディウェーブ!」
弾ける光の波動が、群がる影を次々と飲み込んでいく。一体倒しても湧き上がってきた影の群れが、今度こそ、纏めて祓われていった。
第三幕 絆で紡ぐ盾
「ミルキィ、下がってて!」
キャンディクルーンの姿のまま、クルーンが叫ぶ。
「え、でも――」
「ここは僕とホエードに任せて。ミルキィは、体力を温存してほしいんだ」
クルーンの真剣な眼差しに、ミルキィは頷いた。
「わかった。お願い、クルーン、ホエード!」
「うん!」
「……ああ」
輝く球体のオーラを纏ったクルーンが、迫り来る影の群れを次々と薙ぎ払っていく。時に自らの体で庇い、時に反撃を織り交ぜながら、ミルキィの周囲だけは、決して影を寄せ付けなかった。
その傍らでは、ホエードが淡々と影を吸収し続け、クルーンへ力を送り続けている。
「クルーン、すごい……!」
ミルキィが、感嘆の声を漏らす。
「これくらい……! 皆が頑張ってるんだから、僕だって!」
クルーンの声には、確かな自信が滲んでいた。
ミルキィは、余計な体力を使う事なく、静かにその場で待機を続けた。まだ見ぬ本戦の為に、力を蓄えながら。
第四幕 深部への道
しばらくの激闘の末、ようやく影の群れの勢いが弱まり始めた。
やがて最後の一体が祓われると、クルーンを包んでいた輝く球体のオーラも、静かに収まっていった。
「はぁ……はぁ……。何とか、なりましたね」
いつもの小さな姿に戻ったクルーンが、息を切らしながら呟く。
「クルーン、ありがとう! おかげで、まだ全然動けそう!」
「よかった……! ミルキィが本調子なら、この先も何とかなるはずだよ」
トライ達も、肩で息をしながら、それでも達成感に満ちた表情を浮かべていた。
「にしても……こんな影の群れを操れるなんて、この先にいる本体は、相当な力を持っているという事ですね」
アストラが、暗闇の奥をじっと見据える。
「行きましょう。ここから先が、本当の戦いです」
一行は、再び暗闇の奥へと足を踏み入れた。
その先――ヴォイド宇宙の中心に、これまでのどんな敵とも一線を画す、正体不明の脅威が、静かに待ち構えていた。
(つづく)
ここまでご覧頂きありがとうございます、いよいよヴォイド宇宙編の本戦になります。ここまで描いて途中のテンポがちょっと悪かったなと思ったので、ヴォイド宇宙編以降の話は、よりテンポ重視のラノベらしい感じにしています。
【ポイント評価(☆☆☆☆☆)】や【ブックマーク追加】をしていただけると、執筆の大きな励みになります!よろしくお願いします!




