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第十六話 幻影の入口

ご覧頂きありがとうございます

第一幕 思わぬ再会

 ヴォイド宇宙の入口に、一足先に降り立ったミルキィは、そこに見知った姿を見つけて目を丸くした。

「あ、お姉ちゃん! もう着いてたの!?」

「あなたこそ、遅れて来たはずなのに、もう追いついてくるなんて」

 ミルフィーが、残念そうにため息をつく。

「ところで、なんかいい匂いしない? 美味しい食べ物の匂いだよ」

 ミルキィが、あたりをキョロキョロと見回しながら、鼻をクンクンとひくつかせる。

「そうかしら? 私は特に何も感じないけれど」

 ミルフィーは、涼しい顔でそう答えた。

 ――その、直後だった。


第二幕 誤爆

 突如として、巨大な影のような存在が、二人の頭上から襲いかかった。

「!」

 ミルフィーは、面倒くさそうに、しかし軽やかにそれをかわす。

 一方、ミルキィはその一撃をまともに受けた。

「今までの災厄生命体とは、比べ物にならないくらい強いね。でも――!」

 全くダメージを負った様子もなく、ミルキィは不敵に拳を構える。

「私の渾身のストレートは、時空を引き裂き、銀河をも消滅させちゃうよ!」

 放たれた渾身の一撃が、巨大な影へと吸い込まれるように叩き込まれた。

「――このバカ……痛いでしょ……!」

「え!?」

 なんと、拳を打ち込んだ相手は、姉のミルフィーだった。

「な、なんで……! ごめん、お姉ちゃん、怒らないでいいからね!」

 ミルキィが、慌てて両手をブンブンと振りながら謝る。

「べ、別に怒らないわよ。全く、あんたの馬鹿力だけは、私以上なんだから……」

 ミルフィーは、そう言いつつも、その目には隠しきれない怒りがちらついていた。

(痛くて動けないなんて、妹に言えるわけないでしょ……!)

 内心で悲鳴を上げながら、必死に平静を装う。

 そして、ふと気づくと――先程まで確かにそこにいたはずの、巨大な影は、跡形もなく消えていた。


第三幕 幻影の気配

「え……なんで? どこ行ったの?」

 ミルキィが、きょろきょろと辺りを見渡す。

「どうやら……この先には、私達ですら幻覚を見せてしまう何かが、いるようね」

 ミルフィーが、静かにそう告げた。

(うぅ……まともに食らったから、痛くて涙が出そう……。ミルキィ、早くどっか行って頂戴……)

 その内心の呟きは、決して妹には届かなかった。

「幻覚……? じゃあ、さっきの敵、本物じゃなかったって事?」

「かもしれないわね。ここは、想像以上に厄介な場所のようよ」

 ミルフィーは、痛みを押し隠しながら、慎重に周囲を見渡した。

 視界の端に、ヴォイド宇宙特有の、光を失った漆黒の空間が、静かに広がっている。

 どこまでも続く暗闇の奥に、正体不明の何かが潜んでいる――その事実だけが、確かに二人の間に横たわっていた。

「お姉ちゃん、大丈夫? さっきの一撃、本当にごめんね」

「大丈夫、大丈夫。それより、他のみんなが到着する前に、少し調べておきましょう」

 ミルフィーは、そう言って先に立ち上がろうとする。だが、その足取りには、僅かな危うさが滲んでいた。

 二人の後ろで、暗闇がゆっくりと、脈打つように蠢いていた。

(つづく)


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