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超戦士スターナイツ  作者: 海原ナギサ
旅立ち!ヴォイド宇宙編
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第十三話 継がれた力

ご覧頂きありがとうございます

第一幕 遠い記憶

 ――遠い記憶。

 ホエードのそばには、いつも一匹の猫がいた。

 くじら座不規則星雲に存在する、小さな惑星の守り神。

 二人は共に、銀河を荒らす強大な災厄生命体と戦っていた。

「君は、僕の知る限り一番強い惑星の神だ。でも、コイツは危険すぎる。僕がやるから、君は下がって」

 ホエードは、無表情のまま、猫型の守り神にそう告げた。

 その直後、災厄生命体の強烈な一撃が放たれる。前に出て受け止めたホエードは、大きなダメージを負った。

「く……! 強いな……」

 想像を超える威力に、焦りが滲む。

 体勢を立て直す間もなく、災厄生命体の容赦ない光弾が、再びホエードへと放たれた。

「――しまった」

 大ダメージを覚悟した、その瞬間。

 目の前で、大きな爆発が巻き起こった。

「無事かい……?」

 聞き慣れた声に、ホエードは嫌な胸騒ぎを覚える。

「!」

 目の前には、光弾を身をもって防いだ猫型の守り神が、笑顔のまま、じわじわと真っ黒に変色していく姿があった。

「ねえ、ホエード。一緒に戦えば……怪我せずに済んだんだよ……」

 その言葉を最後に、猫の姿をした惑星の守り神は、静かに消滅した。


第二幕 焦りと決意

 ホエードは、遠い記憶を振り切るように意識を集中させる。

 目の前には、今まさに対峙する災厄生命体。そして――後方には、クルーンの姿があった。

(戻らない時間を、あの子の分まで……)

 現実の敵が、容赦なくホエードへと襲いかかる。

 ホエードは瞬時に空間転移で攻撃をかわし、針のように鋭く伸ばした指を突き刺した。

「……計り知れない奴だ。体力を吸収したのに、全く応えていない」

 災厄生命体はすぐに振り返り、反撃の一撃を繰り出そうとする。

「ホエード!」

 クルーンが叫び、全身に青いオーラを纏った。決勝戦で見せた、あの力だ。

 杖から放たれた惑星サイズの青い光弾が、災厄生命体に直撃する。

 だが、敵は僅かにのけぞるだけで、まるで虫が体当たりしてきたかのように、平然とクルーンの方を見た。

「まずい!」

 ホエードは即座に空間転移し、災厄生命体の眼前に割って入る。

「僕が相手だ。安心しなよ、退屈はさせないよ」

 だが、その内心は焦燥に満ちていた。

(僕の能力は、連携には向いていない。空間転移は、自分の体を彼方に飛ばしたり戻したりするだけの力。仲間には使えない。攻撃も、持久戦でジワジワ体力を削るだけ。仲間を守れるとしても、盾になるくらいしかできない――僕は、単独行動に特化しすぎているんだ)

(もし、僕と地球の守り神が同時に狙われたら――僕は、彼を守れない。それだけは……!)

 ホエードは指先を鋭く伸ばし、災厄生命体に突き刺し、僅かに体力を奪う。

 だが、その瞬間、反撃を受けて大きく吹き飛ばされた。

「し、しまった……!」

 すぐに体勢を立て直すホエードの背筋を、悪寒が走る。

「く……! 地球の守り神の力、あんなもんじゃないぞ……!」

 災厄生命体に睨まれながらも、精一杯の虚勢を張るクルーンの姿があった。

「お前の相手は、僕だ! 来い!」

 ホエードは叫びながら、災厄生命体へ向けて疾走する。

 だが、災厄生命体はすでに、エネルギーを込めた手をクルーンへと向けていた。

「く……!」

 クルーンが再び、青く輝くオーラを纏う。

「その程度の力では、届かない! やめろ、僕に撃て!」

 ホエードが、必死に叫ぶ。

(間に合わない……どうすればいい……!)

 焦るホエードの耳に、懐かしく、温かい声が聞こえた。

「相変わらず、共闘が苦手なんだな」

「その声……!」

「惑星の神はね、誰かに力を分け与える能力を持ってるのさ。それは、君の心にいる僕だって、同じ事だよ。さあ――君の力を、あの子に」

 ホエードは、その声に導かれるように、力をクルーンへと放った。


第三幕 継がれた力

「今度はダメかもな……ごめんよ、ミルキィ」

 クルーンは、青いオーラを纏ったまま、敗北を予感していた。

 だがその時――未だかつて感じた事のない力が、体の内側から溢れてくる。

「な、何故だか急に、力が湧いてくる!?」

 クルーンの纏う青いオーラが、一段と大きくなり、まるで飴玉のようなつやを持つ球体へと変化し、彼の全身を包み込んだ。その姿は、まるで小さな地球そのもののようだった。

「僕の力を、分け与えた。打ち抜け、地球の守り神!」

 ホエードが、力の限り叫ぶ。

 クルーンを包む輝く球体から、光の波動が弾けるように飛び散った。

「なるほど……! これで戦えって事だね!」

 スターナイツの力を一時的に宿したクルーンは、絶大な力の高まりを確信し、拳を構える。

「いくぞ! これが地球の神の本気の姿――キャンディクルーンだ!」

 その名の通り、クルーンを包むオーラは、飴玉のように艶やかな球体から、輝く波動を放っていた。

「強いのか、わかり難い名前だな」

 災厄生命体が、突然、随分とラフな口調でそう漏らした。

 だが、次の瞬間には、その視界からクルーンの姿は跡形もなく消えていた。


第四幕 キャンディウェーブ

 災厄生命体は、視界がおかしい事に気づいた。

 そこにあったはずの光景――惑星も、遠くに見えた銀河も、そしてクルーン、ホエードの姿さえも、どこにも見当たらない。

 自分が高速で吹き飛ばされ続けている事に気づいたのは、遅れて痛みが襲ってきてからだった。

 視界が歪み、遅れて激痛が走る。その繰り返しの中で、災厄生命体は自分の体が少しずつ削られていく感覚を覚えた。

 やがて視界の端に、飴玉のように輝く球体が一瞬だけ見えた。

「キャンディウェーブ!」

 それは、先ほどまで虫けらのように見下していた、あの小さな存在だった。

「幾多の星々を、恐怖に沈めたこの俺が……こんな、可愛らしい技で散るのか……!?」

 災厄生命体は、そう叫びながら大きく吹き飛び、地に伏した。


 だが――完全に沈黙したわけではなかった。

「が……はっ……。まだ、だ……」

 ボロボロになりながらも、災厄生命体はゆっくりと体を起こそうとする。

「そ、そんな……この力をもってしても、倒せないのか……!?」

 クルーンの声に、明らかな怯えが滲んだ。

「まだ終わってない!」

 誰よりも早く反応したのは、ホエードだった。

 瞬時に間合いを詰め、両腕を鋭く伸ばして災厄生命体の体に突き刺す。

「ぐああああ!」

 悲鳴と共に、災厄生命体の体力が、みるみるうちに吸い取られていく。

 弱りきった敵は、それでも最後の力を振り絞り、ホエードへ向けて反撃を放った。

 力の大部分を一時的にクルーンへ譲り渡していたホエードだったが、たった今吸収した体力によって、ある程度の力を取り戻していた。

「くっ……!」

 その一撃を、正面から受け止める。

 そして――

「これで、終わりだ!」

 渾身の回し蹴りが、災厄生命体の体を捉えた。

 鈍い音と共に、その巨体が地に沈む。今度こそ、二度と動く事はなかった。


第五幕 継がれた想い

「や……やったのか……?」

 クルーンが、恐る恐る呟く。

「ああ。終わったよ」

 ホエードが、静かに答えた。

 オーラの光が徐々に収まり、クルーンはいつもの小さな姿へと戻っていく。

 その姿を見つめるホエードの脳裏に――あるはずのない光景が、鮮やかに広がっていった。

 かつて、共に笑い合いながら食事をした日々。

 肩を並べて戦った、幾つもの戦場。

 小さな体で、いつも一生懸命だった、あの猫の姿。

「……」

 ホエードが立ち尽くしていると、心の奥から、聞き慣れた温かい声が響いてきた。

「君の知ってる、一番強い惑星の神は――もう、僕じゃないよ」

「!」

「前を向いて、ホエード。強く、生きて」

 その声は、静かに、けれど確かな温もりを残して、遠ざかっていった。

「ホエード……? 大丈夫ですか?」

 心配そうに顔を覗き込むクルーンに、ホエードはゆっくりと視線を戻す。

「……ああ。大丈夫だよ」

 その口元には、ほんの僅かに――これまで誰も見た事のない、柔らかな笑みが浮かんでいた。

「あはは……でも、技名は自分でもちょっと、ダサいと思いました」

 クルーンが照れくさそうに笑う。

「……いや」

 ホエードは、小さく息を漏らすように笑った。

「悪くない、名前だと思うよ」

 その一言には、遠い記憶の中の誰かへの想いが、静かに重ねられていた。

 二人は、しばし無言のまま、星の広がる空を見上げていた。

 旅は、まだ始まったばかりだった。

(つづく)


次回は三角銀河トリオとアストラの息抜き回です。

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