第十二話 三方向への旅立ち
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第一幕 出撃の刻
「ねえ皆! 一緒にギャラクシーフルーツを食べに行こうよ!」
地球に戻ってくるなり、ミルキィは開口一番にそう叫んだ。
「……もしかして、新しいヴォイド空間ですか?」
アストラが、静かに問い返す。
「そうだよ! 早く行こうよ!」
ミルキィが目を輝かせる一方、クルーンは困ったように眉尻を下げた。
「また、突拍子もない事を……」
その様子を眺めていた三角銀河の三人が、顔を見合わせて呟く。
「美しくないな」
「ああ、銀河団に穴が空くなど……」
「美しく並べ直すか」
「い、いや、そういう問題では……」
クルーンが小さく突っ込みを入れるも、三人はどこ吹く風だった。
「ほ、本当に行くんですか……?」
不安げに呟くクルーンに、ミルキィはにっこりと笑いかける。
「それじゃ決まり! 皆で、しゅっぱーつ!」
こうして、ギャラクシーフルーツを目指す旅が、あっさりと幕を開けた。
第二幕 三方向への旅立ち
目的地であるヴォイド宇宙までは、幾つもの経路がある。効率よく、そして万一の事態に備え、一行は三つのチームに分かれて出発する事になった。
「私達は、この航路から向かいましょう」
アストラが、星図を確認しながら告げる。
「僕らは美しい隊列を保ちながら進むぞ」
トライが、いつも通りの調子でそう宣言した。
「隊列より、まずは速度を優先すべきでは……」
ラグルの冷静な指摘に、アイルがケラケラと笑う。
「まあまあ、賑やかな道中も悪くないだろ」
三角銀河トリオとアストラの四人は、そんな軽口を交わしながら、一つの航路へと飛び立っていった。
「僕とホエードは、こっちの航路ですね」
クルーンが、地図を手に確認する。
「……ああ」
短くそう答えると、ホエードは静かに体を発光させ、飛行の準備を整えた。
そして――
「よし! 私とウェルはこっちだね!」
ミルキィが元気よく宣言する。
「はい。今回も、しっかりお供します」
ウェルが、穏やかな笑みを浮かべて頷いた。銀河のナンバー1ナンバー2として共に戦い、共に学んできた二人にとって、この組み合わせは自然な流れだった。
「よろしくね、ウェル! 途中でご飯休憩、挟んでもいい?」
「もちろんです。……ちゃんと、お弁当も多めに持ってきましたから」
「さっすが!」
三方向へ、それぞれの絆を乗せた光が、静かに宇宙へと飛び立っていった。
目指すは同じ場所――だが、そこに何が待ち受けているのか、まだ誰も知らない。
第三幕 影に潜む脅威
クルーンとホエードを乗せた航路は、静かな星々の合間を縫うように進んでいた。
「ホエードは、こういう長距離の移動、慣れてるんですか?」
「……まあ、それなりに」
いつも通り抑揚のない返事をするホエードに、クルーンは苦笑いを浮かべる。
「……」
だが、ふと、ホエードの視線が鋭くなった。
「下がって」
「え?」
言われた直後、前方の暗闇から、強烈な一撃が飛来した。
「ぐ……!」
とっさに前に出たホエードが、その一撃をまともに受け、大きくよろめく。
「ホエード!?」
クルーンが驚いて叫ぶ。
暗闇の奥から、これまで出会ったどの災厄生命体とも一線を画す、禍々しい気配を放つ影がゆっくりと姿を現しつつあった。
「く……! こんな所で……!」
よろめきながらも、ホエードは体勢を立て直そうとする。だがその隙にも、影の圧力は増していく。
クルーンは、慌てて宿り木の杖を構えた。
「ぼ、僕も戦います! 一緒に――」
「――逃げて、地球の守り神!」
珍しく、ホエードが声を荒げた。
その叫びには、いつもの冷静さからはかけ離れた、切実な響きが滲んでいた。
「え……」
クルーンは、思わず動きを止める。
目の前の敵から放たれる圧力は、これまで対峙してきたどんな相手とも桁違いだった。
(この威圧感……もしかして、僕の手に負える相手じゃ……)
「ホエード……!?」
困惑したまま、クルーンはその名を呟いた。
一方、ホエードの胸の内には、暗闇の向こうに揺れる敵影と、遠い記憶の中の光景が、重なって映っていた。
(もう……悲劇は、起こさせない……!)
その決意を胸に、ホエードは再び前へと進み出た。
(つづく)
それぞれのヴォイド宇宙への旅路です。
次回は、ホエード、クルーンコンビの戦いとホエードを掘り下げる回になります。
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