ローズの決意ー溢れたダイヤ
ローズとエディのエピソードは、レジェンディアより愛を込めてでご覧いただけます。
時は少し遡る。
ニューヨークに向かう飛行機の中で、ローズは窓の外を見ていた。
広がるのは雲海と青空。そして眩しい程の太陽だけだ。
(エディが軍人ではなかったら、もっと違う関係でいられたかしら…
過去のことで色々考えてしまうなんて…。どうしようもないことなのに。)
ローズは目を閉じた。
レイコが結婚する前のこと。
夜の庭で、一人ブランデーを飲むエディがいた。
方向音痴の妹の面倒を見るのは、大変なんだろうと思いながら、ローズはブランケットをエディの肩に掛けた。
どんなことがあっても、弱音も愚痴も吐く男ではない。
時々こうして一人で考え事をしているだけだ。
それでも、側にいられるなら、それでよかった。
エディはしばらく何も言わず、視線を落としたままだった。
やがて——
静かに、頭を預けた。
一瞬だけ、時間が止まる。
「どうしたの?」
ローズは静かに尋ねた。
聞いたところで、何があったと言う男ではないが。
エディは、やり場のない思いを飲み込むかのように、グラスの酒を飲み干した。
「……少し、疲れているだけです」
短く、それだけを返して。
「そう」
ローズは頷く。
それ以上は訊かなかった。
ただ、そっと、指先で髪に触れ、ゆっくりと規則正しく撫でる。
夜風が、二人の間を通り抜け、遠くで葉がかすかに揺れる。
エディは目を閉じた。
何も考えないように、ただ呼吸だけを整える。
慰める言葉も、励ます言葉も、そこにはなかった。
ただ、その手の温もりだけがあった。
青く沈む白薔薇の中で、言葉にならないものだけが、静かに満ちていく。
(このまま、もう少しだけ)
そう思っていた。
エディからプロポーズされた時は、とても嬉しかった。
やっと振り向いてくれたのか、そう思ったりもした。
駐在武官でもあり、妹レイコの執事でもあるエディは、全てにおいて職務に忠実だった。
分かっていたのに、隣に立つことも出来ないことに、ローズは段々と孤独感を募らせていった。
(最初から違っていたのね…)
そして、ローズは、メッセージを打ち込んだ。
(エディは何も悪くないわ。彼は軍人。私は投資家。それだけのことだわ。)
飛行機は静かにランディングした。
ローズは静かに立ち上がり、メッセージの送信ボタンを押した。
(決めたわ。私は、彼の戦友として生きる。)
夫を亡くし、やっと誰かを好きになれたと思ったが、それはローズが思う幸せではなかった。
(進まなきゃ。)
この時ローズは気づいていなかった。
エディから贈られたダイヤのネックレスが切れていたことに。
ダイヤは星のように、虚しく機内で煌めいていた。
ローズが、エディがということではなく、そもそも違っていた二人。
二人が求めるものは同じでしたが、生き方の違いはどうにもなりませんでした。




