エディの後悔ー言えなかった愛してる
雨が降るロンドン郊外。
シードラゴン艦隊本部に向かおうとしていたエディのもとに、メッセージが届いた。
「ローズ?」
メッセージを開くと、そこには思いがけない言葉があった。
"あなたのことはずっと好きだった。愛してた。でも、私はあなたの1番にはなれなかった。そのことに疲れてしまったの。分かっていたはずなのに…ごめんなさい。"
エディは、それを読んでため息をついた。
(無理もない…)
ローズとは、ここしばらく会っていない。
もともと投資家ということもあり、日本やアメリカを飛び回ることは多かった。
しかし、軍人の妻となり制約が増えたのは確かだ。
それでも、友人たちに会いにいったり、市場の勉強に飛びまわってはいた。
今回もそうだと思っていた。
しかし、実際には、ローズは自分自身とと向き合うために、距離を置いていたのだった。
(君が何を考えているのか、知ろうとしなかったのは、私の甘えかもしれない…)
メッセージを読み返しながら、そんなことを感じさせず、いつもどおり明るい笑顔のまま出発ゲートに向かって行ったローズの姿を思い出す。
…結局、自分はローズの愛に甘えていただけで、何もしてやれないままだった。
(私はどうしようもない男だ…)
エディは指を動かした。
"君の愛に甘えてしまった僕を許して欲しい。僕が弱かったせいだ。でも、僕の妻は君だけだ。だからこそ、君の幸せが一番大切だ。いつも、どんな時も。"
エディは、迎えの車に乗りこんだ。
「中佐、フォックス中尉からの艦隊本部復帰願いが受理されました。
ハワード提督のご要望で、来月から本部に戻ることになります。駆逐艦に戻すかどうかは未定です。」
「日本の駐在武官の補填は?」
「まだ未定です。
レイコ様がこのままイギリスにお住まいなら、中佐がレイコ様に引き続き就くのが最善ですが、正直なところ駆逐艦で人が取られていますので…」
「人員に余裕はない…ということか。」
「はい。しかし昨今の地政学から駐在武官の補填は必要ではありますから、いずれ補填はあり得ますが。」
エディは、窓の外に目をやった。
(フォックス、君が羨ましい…)
好きなものを好きと言える若さはない。
国を最優先にし、職務を全うする日々の中にあった安らぎがローズだった。
(愛してると言えたはずなのに…。もっと言えたら良かったのにな…)
遠くに駆逐艦の姿が見えた。
その頃のニューヨークは、小雨が降っていた。
テーブルの上に置かれたままの携帯が、メッセージ受信を知らせる。
しかし、それを知る者はいない。




