ニューヨーク着岸ー薄霧と巨船
ソブリン、ニューヨークに到着ですが、何やら葵左衛門さんの様子が…
ソブリンから、サプライズ承認連絡を受け取ったニューヨーク支社は、すぐさまハリスに電話をいれた。
「…というわけですが、いかがでしょうか?大まかな流れは、メールでお送りしたとおりです。」
電話の向こうのハリスは、上機嫌だった。
『ありがたい!キャプテン日向に礼がしたい!』
「ありがとうございます。ですが、本船キャプテンへのお気持ちは、プロポーズが無事成功してからということで。」
『それもそうだな。BMMクルーズのご協力に感謝する。富士崎社長にも、よろしくお伝え願いたい。』
ご満悦な様子のハリスとは裏腹に、入港直前のソブリンは、慌ただしかった。
「二階堂、やり直しは許されん。
慎重にいけ。」
日向キャプテンは、正面を見たまま指示を出す。
「了解。速度減速10ノット。タグ準備。」
「速度10ノット。タグ準備。」
コマンドが飛び交い、巨船はゆっくりと速度を落としていく。
モニターには、周囲の映像が映し出されていた。
「周囲視認よし!異常なし!タグ準備完了」
「更に減速3ノット!」
「減速3ノット!」
「回頭を開始する!スラスター準備!」
「スラスター準備よし!」
タグの補助を受けてゆっくりと船首が回り始める。
自衛隊出身者に操船を任せているためか、ブリッジも着岸準備も護衛艦のようにキビキビしていた。
それでも、優雅に回頭するソブリンは、とても美しい。
埠頭で待機していたヘンリー船長たちは、その様子を静かに見守っていた。
「半端ないっすね。」
三井はボソっと呟いた。
「訓練とは違うぞ。これまで以上に慎重にやるのだ。」
ヘンリー船長は、三井の肩を叩きながら言った。
やがて、ソブリンの係留ロープが降ろされる。
「よし、すぐに乗船して引き継ぎと準備を行え。ヴァルナーは、日向と交代しろ。」
リヒトは、制帽を被り直した。
「イエッサー。」
その頃船内では…
「先生、ご気分優れまへんか?」
弟子が心配そうに葵左衛門を支えた。
ニューヨークが近くなってから、葵左衛門の体調が優れない日が続いていた。
傍目には元気に見えるのだが、食は落ちていた。
時折呼吸が荒くなることもある。
年齢のせいでもあるだろうが、弟子たちは、不安が隠せない。
「心配しすぎや。ワシも年やからな。久しぶりの船やからなぁ、疲れただけやさかい。」
「交流会は…」
「陽司もおる。大丈夫や。それより、久しぶりのニューヨークや。少し楽しませてもらおか。」
ニカっと笑う葵左衛門に、弟子たちは少し安堵した。
滞在は3日程。
ニューヨークの摩天楼は、白い巨船を見下ろしながら、今日も薄い霧に包まれていた。
筋肉ゴリラたちも、ちゃんと仕事してますヨ。




