プロポーズ大作戦ー聞いてへんわ!
ハリス社長のプロポーズ大作戦!
ハリス社長の恋人が、実は芸妓の影千夜だと分かった支社は慌てた。
そもそも、ソブリンの演者としてしか準備していなかったからだ。
取引先クルーズ会社の社長の恋人となれば、話は別だ。
しかも、プロポーズしたいから協力してくれ!などと言われては、協力しないわけにもいかない。
「大変!影千夜さん、パーティー出てもらわなきゃいけないじゃん!
船内のドレスショップとサロンに連絡しなきゃ!」
「影千夜さんのサイズなんか分かんないって!」
「夏海さんがいるから、多分大丈夫!」
「あー!待って!日向キャプテンにも伝えなきゃじゃん!!」
「私お花手配してくる!」
「すんごく豪華なやつだよ!」
「分かってるーっ!」
同じ頃、ソブリンブリッジは、ニューヨーク支社からの連絡に固まった。
「…影千夜さんが…」
「ハリス社長の…」
「「「恋人?!」」」
「サプライズ!?」
連絡を受けた日向キャプテンは、眉間を押さえた。
「すぐに各部門に共有しろ。」
ブリッジから、すぐさま各部門にインカムが飛んだ。
「はぁ?!」
話を聞いた夏海は思わず、簪を落とした。
琴を弾く時間が迫っていたため、身支度の真っ最中。
本来なら、自分がサロンやドレスショップに行くべきなのだが、とても間に合いそうになかった。
夏海は急いでメモを書くと、社員に指示した。
「影千夜姉さんに合いそうなドレス、いくつか用意してもろて!サロンにも共有しとくれやす!ニューヨークでのパーティーのプログラムも変更せなあかんえ!姉さんのサイズなんか知るわけないやないの!
それから、うちの人にも伝えておくれやす!手伝ってもろて!」
社員は部屋を飛び出した。
「聞いてへんわぁ。まさか彼氏がハリス社長やなんて、んもう!」
盛大な溜息をついてすぐ、夏海はいつもの笑顔を貼り付けた。
ソブリンが慌てているとは知らず、ハリス社長は行きつけのジュエリーショップにいた。
「これなら、美月も絶対喜ぶはずだ!」
受け取った指輪を見たハリス社長は、満足そうに微笑んだ。
「社長、スタッフ一同全力で応援していますわ!」
ジュエリーショップの店長は、ガッツポーズをして見送った。
(お願いだから、うまく行きますように!!)
彼女たちは、爽やかに立ち去るハリスの背中を見ながら、これまでの苦労を思い出したのだった。
何度彼が女性に平手打ちされたのを見ただろう。
修羅場になったのも、一度や二度ではなかった。
寝言で以前の恋人の名前を言ってしまったハリスが、今の恋人にボコボコにされた挙句、日本に帰ってしまった恋人を追いかけて、ヨレヨレになって飛行機に飛び乗った、というのは有名な話だ。
もっとも、数年は交際しているから、間違いなく本気だろう、とは思っていた。
売り上げとして見れば、確かにありがたかったが…。
「平和が一番よ。うん。」
ニューヨークまであと四日ほど。
そこで、また騒動が待ち構えていることなど、誰も知らない。
ハリス社長が影千夜姉さんLOVEなのは分かります。
かなりマイペースな男です。
一応頭はキレるビジネスマンなんですよ、えぇ。




