早く言え!ー二つの共有事項
ハリス社長は、過去編でも登場しています。
ニューヨークでリヒトと合流したヘンリー船長たちは、様々な準備に追われていた。
「ゲストのメンツがスゲェっすね!!俺大丈夫かなー。」
三井は大きなハンバーガーを齧り、コーラをがぶ飲みしながら、もくもくと資料データを見ていた。
ちなみに、ハンバーガーはこれで二つめである。
「お前、そないデカいハンバーガーなんぞ、よう食うな!食い意地だけじゃ、女の子にモテへんぞ!」
栗栖は横目で見ながら言った。
自分は大きなクレープに齧りついているのに、だ。
「いいんでふよ!僕はこれがたのひぃんれふ!」
もぐもぐと美味しそうに色々食べている三井を見ながら、シンシアは言った。
「今のうちだけよ。こんなことできるの。見なさいよ、晴海本社から届いた追加情報。」
シンシアが端末を見せると、三井は思わず、もぐもぐしていたものを綺麗にごっくんと飲み込んだ。
"ソブリンに乗船している元狂言師の日向葵左衛門先生は、日向キャプテンの祖父君。芸者の月乃さんは同キャプテンのご令嬢。各位、留意するように。"
さらに下にスクロールしていくと、三井会長の名前もある。
"BMMグループ前社長 三井脩太郎氏"
「あれ?じいちゃん?!
三井は目を丸くした。
「じいちゃん?」
シンシアは怪訝そうな顔で尋ねた。
「三井脩太郎って、俺のじいちゃんなんすよ♪ちなみにソブリンの副長の雄馬は従兄弟なんっすよ。筋肉ゴリラ!」
ヘンリー船長も含め、その場にいた全員が固まった。
「…あれ?どしたんすか?」
三井はシェイクを飲みながら、ニコニコと資料に目を通しつづけた。
その頃、ニューヨーク支社にいるリヒトのところに、思わぬ客が現れていた。
「やぁ!久しぶりじゃないか!今はキャプテンと呼ばないといけないな。」
颯爽と現れたのは、クリスタニアの以前の所属先ブルーリッジクルーズのハリス社長だった。
「社長、お久しぶりです。」
握手を交わすと、ハリスは上機嫌に言った。
「あの暴馬を名馬にするとは、恐れ入ったよ!今回は、あの日向キャプテンが船を連れてくると聞いて、恋人とデートついでに会いに行こうと思ったんだ。」
リヒトは思い出した。
(そういえば、連れの情報がないと支社が嘆いてたな。)
「社長お連れ様の情報をいただけませんか?お食事やアメニティを整える必要がありますので。」
それを聞いたハリスは笑いながら肩をすくめた。
「その必要はないよ!だって、私の愛する恋人はもうソブリンに乗ってるからな!」
「は?」
背後で話を聞いていた社員たちは、一斉に振り返る。
「芸妓の影千夜だよ!本当は美月というんだがね。」
ニューヨーク支社は静まり返った。
影千夜といえば、祇園の大姉さんにあたり、日向キャプテンと付き合いのある踊りの名手だと聞いている。
どこをどうやったらこの人と恋愛関係になるんだ?
全員がそんな顔をしていた。
「ビックリしすぎだぞ!」
リヒトは笑顔を貼り付けたまま言った。
「それは、もっと早くお聞かせ願いたかったですねぇ…」
(あの時…別の人だったよな…。まぁ昔の話か…)
影千夜はなぜかクシャミをしていた。
「影千夜姉さん、どないしはりました?風邪やと大変やから、休まれた方がよろしいのとちゃいます?」
夏海は心配するように声をかける。
「いや…うちの噂しとるお人がおるだけやから…。心当たりはあるんやけどねぇ。」
影千夜は鼻をスンスンと啜りながら言った。
「あららぁ♪姉さん♡もしかして、彼氏さんですかぁ?」
夏葵は、着物の袖で口元を覆い、ニマニマしながら言った。
影千夜は、大姉さんらしくツンとしながら、側にいた警備犬カイザーに声を掛けた。
「カイザー、あんたは賢いねぇ。うちの気持ち分かってくれはるもんねぇ。」
カイザーは一声だけ吠えた。
まるで、知らん!と言うように。
カイザーにとって今大事なのは、影千夜がおやつをくれるかどうか、である。
影千夜姉さんと、ハリス社長。
なんでそうなったの?というのは作者も謎です。




