おっちゃんたちの涙ーなっちゃん良かったな
フェリーのおじさんたちは、可愛いなっちゃんがお父さんに会えたことを聞いて、グズグスに泣きながら運航しています。
スターフラワーミラと反航したソブリンは、北上を続けていた。
船内は、可憐な月乃の美しく艶やかな舞に目を奪われたVIPたちが感嘆の溜息をついていた。
それを見ていた一人の紳士が、近くにいた航海士に声を掛けた。
「つかぬことを聞くが、あの娘の両親のことを知っているかね?」
航海士は、畏って答えた。
「あの方は、日向キャプテンのご令嬢と聞いております。」
紳士はその名を聞いて目を細めた。
「日向…。そうかそうか、あの子がなぁ。」
そこに和服姿の老人がやってくる。
「三井会長、えろぅお久しぶりどすなぁ。いつぶりやろか。」
「おぉ、葵左衛門先生!ご無沙汰しております!ソブリンはいかがですかな?」
「よぅもこないに作ったもんやと感心しとったところや。我が孫ながら、ほんに見事や。ところで…」
葵左衛門は、舞台にいる月乃を見た。
「あの娘、ひどく葵一郎に似ておると思ってなぁ。あの目、顔つき。若い頃の葵一郎に、ほんまによぅ似ておる…。何より見事な舞や。」
「先生、答えはすぐに分かるでしょう。」
「そうやなぁ。葵一郎はどこにおるやろか。渡すもんがあってなぁ。」
三井会長は、航海士に、日向キャプテンを呼ぶよう命じた。
少しして、紋付袴姿の日向キャプテンが現れた。
「お祖父様。お呼びですか?」
「おぉ、葵一郎。忙しいやろうに、すまんのぅ。お前に渡すもんがあってなぁ。」
葵左衛門は、袂から美しい布の包みを差し出した。
その布を解くと、黒地に金の松と月が描かれた見事な舞扇があった。
「これは…」
「お前の死んだ親父の遺言でなぁ。いつかお前の船で芸を見ることになったなら、これを贈るように言われとった。」
「頂戴します。」
「うむ。あとでゆっくり話そう。
楽しみにしとるぇ。」
その頃、ソブリンよりも先行して北上しているスターフラワーのスターダンサーのブリッジは、男たちが涙ぐんでいた。
「なっちゃん、お父ちゃんに会えたってよぉ…」
「お父ちゃんに会うまで頑張るんだって、やってたもんなぁ…」
「なっちゃんの父ちゃん、どんな人なんだべなぁ…」
船員の喜ぶ様子を見ていたキャプテンは、言い出せなかった。
(こんなに感動的なとこで、なっちゃんの父ちゃん、日向キャプテンじゃね?なんて言えるわけねーだろーがよ…)
彼らがそのことを知るのは、もう少し後のことだ。
フェリーのおっちゃんたちは、いい人です。
次はいよいよ、日向キャプテンが舞を披露します。。




