海上の松ー筋肉ゴリラと可憐な乙女
筋肉ゴリラたちがなかなかいい味だしてまして、
とても和んでいる作者です。
雨上がりの午後。
BMM本社の秘書課はざわついていた。
朝、三井脩太郎会長が、富士崎社長に会いにいく、と連絡してきたためだ。
「どうしようか。二階堂副長呼ぶべき?」
「え、だって社長に会いに来るんでしょ?それに、二階堂副長たち、日向キャプテンに言われてグローリア先生の猛特訓中だし…」
「あー。死にそうな顔してたもんねー。皆ー。」
「二階堂副長から、日向キャプテンのこと聞いたのかもね。」
「社長の部屋にするって?」
「うん。ほら、社長がつきっきりだし。」
「会長に何お出ししようかなー。」
「あ、三井さんのとこの焼き菓子はどう?会長、コーヒーもお好きだし。」
「あー、いいかもね。美味しいし!」
「えー、じゃあ私フィナンシェ食べたいかもー!」
秘書たちは忙しなく動き出した。
本社近くのパティスリーGirasolは
二等航海士三井の実家である。
女性社員に人気な上、BMMといえば、Girasolと言うほど接待に欠かせない店だ。
会長の息子の1人というだけでなく、単純に店も可愛くて菓子も美味しいから、という女心をバッチリ掴んだ店なのである。
秘書課が美味しいお菓子にキラキラしている頃、影千夜と月乃は二階堂たちについて、ソブリン船内を案内されていた。
「うわぁ!スターダンサーの何倍も素敵ですっ♪」
月乃は目を輝かせて喜んでいた。
「ソブリンは、災害派遣も出来るんですよ。今まではスターフラワーだけで担ってましたけど、この船ならかなりの規模の災害支援もできます。」
二階堂は得意げにいった。
「すごいですねぇ♪何があっても大丈夫だなんて、頼もしいです♪」
二階堂と神崎は、自分が褒められたかのように照れくさそうに笑った。
「ところでお二人はん、舞台の場所見せてもらえへんやろか。」
影千夜は、さりげなく言った。
二階堂たちは、顔を見合わせると、メインホールに案内した。
そこには黒地に金の松が描かれた美しい舞台があった。
「よくもまぁ船ん中にお造りになりましたなぁ。それも、京の舞台よりも見事や…」
影千夜は見惚れた。
「こんなとこで踊るんですかぁ?」
月乃はオドオドと二階堂たちを見た。
「月乃さん、試しに上がってみませんか?大したもんはありませんけど、すぐに簡単なものなら流せます。キャプテンも時々稽古されてますし。」
月乃は驚いた。
「え?日向キャプテン、踊るんですか?」
「あぁ見えて、狂言師だったんですよ。本当なら日向葵左衛門先生の後を継ぐはずだったらしいっすけど。」
「へぇぇ〜!見てみたーい♪」
「月乃ちゃん、せっかくやから、リハーサルやと思ってやってみなはれ。」
月乃は元気よく頷くと、とことこと舞台に上がる。
神崎が合図をすると、
舞台に娘道成寺が流れはじめた。
すると、月乃は人が変わったようにしなやかに美しく踊り始める。
影千夜は、それを見て思った。
(坊ちゃんや…。あの目。あの顔つき…。そのまんまや…)
「すげぇっすね!日向キャプテンみたいっす!」
素直な神崎の感想に、影千夜はギクっとした。
(この子らでも分かるなんて…。時間の問題やわ…)
「月乃ちゃん、あとでキャプテンの踊り、見してもらおな。」
月乃は舞台の上から無邪気に返事をした。
その頃、日向キャプテンは、まだ夢の中にいた。
月乃ちゃんにデレデレな筋肉ゴリラたちです。
ちなみに、フェリーは災害支援だけでなく、時々自衛隊車両と自衛隊の皆さんも運んでいたりします。
月乃ちゃんは、フェリーで自衛官にも人気だったかもしれませんね。




