重なる面影ーひまわりの約束
まさか。もしかして。
確信持ち始めた方も多いかと思いますが、今しばらくシーッでお願いします。
しばらくして、日向兄弟がドーベルマンのカイザーとスナイパーを伴い、クルーズ部門のラウンジへ姿を現した。
二頭のドーベルマンは、迷うことなく月乃へ近寄ると、何度も匂いを嗅ぎ、鼻を鳴らしながら腹を見せた。
月乃はティーカップをそっとテーブルへ置き、嬉しそうに二頭の腹を撫でる。
「スベスベですねぇ♪ 二人とも素敵〜♡」
その様子を見た兄弟は、顔を見合わせた。
「兄貴、こいつらひっくり返ったぞ」
「見れば分かる。不思議なこともあるもんだ」
そこへ夏海が優しく声を掛ける。
「月乃ちゃん。今度乗ってもらうソブリンの日向葵一郎キャプテンがお見えどす。ご挨拶しなはれや」
月乃は慌てて立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。
「日向キャプテン、初めまして! 月乃です!!」
「ようこそ、BMMクルーズへ。君の踊り、楽しみにしていますよ」
月乃が顔を上げた瞬間、小さな向日葵のネックレスが揺れた。
日向キャプテンは、そのネックレスへ視線を留める。
「月乃さん。そのネックレスは?」
「あ、これですか? ママの形見なんです! お着物に似合わないかなって思ったんですけど、これしかママのものがなくて……」
少し寂しそうに笑う月乃を見て、日向キャプテンは静かに席へ座るよう促した。
「いや、とてもよく似合っていますよ。お母さんも喜ぶでしょう」
月乃の隣では、影千夜が紅茶を飲みながら、その様子を静かに見つめていた。
(坊ちゃん……気づきはったやろか……)
影千夜の心配をよそに、夏海はモニターへ月乃の舞台映像を映し出した。
その瞬間、日向兄弟の表情が変わる。
「……これは……」
「踊りを教えたのは、影千夜さんのお師匠さんか?」
「へぇ。うちの妹弟子ですわ。筋がえぇと思いますやろ?」
モニターに映っていたのは、先ほどまで犬たちと無邪気に戯れていた少女ではなかった。
別人のように凛々しく、艶やかに舞う月乃の姿。
年齢に似合わぬ色気を帯びたその舞は、どこか月夜を思い出させるものだった。
「これなら今回のゲストも満足されるでしょう。後ほど船をご案内します。今夜はゆっくり休んでください。必要なものがあれば、夏海さんへ言うといい」
日向キャプテンは、それだけ告げると静かに立ち上がった。
カイザーが、その姿をジッと見上げた。
もう少し遊んでいたい、と言うように。
日向キャプテンは少しだけ腰を落とし、カイザーの頭を撫でた。
「お前は好きにするといい」
カイザーは返事の代わりに、ぺろりとその手を舐める。
月乃は嬉しそうにカイザーの首元をわしゃわしゃと撫でた。
「カイザー♡ もう少し遊びましょー♪」
影千夜は見逃さなかった。
日向キャプテンが、まるで妻を見る時のように優しい表情をしていたことを。
傍らにいたハンドラーも、同じことを思っていた。
(まるで……親子だな……)
やがて晴海に夜が訪れる。
船たちは、静かに出港していった。
日向キャプテンの過去の出来事。
少しずつ明かされていく切ない恋。
無敵の艦隊統括が過去に愛した女とは




