表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/97

フォックスの覚悟—シードラゴンの名に賭けて

わんこ系男子だったフォックスが、艦隊に戻る決意をします。

切ない恋でもありますが、切ない恋はフォックスだけではありませんでした。

白い満月が海を照らし始めた頃、クリスタニアのボールルームは、色とりどりのドレスが咲き誇り、現実を忘れるほど美しく輝いていた。


 本来であれば主席船長であるリヒトが挨拶を務めるべきだったが、今宵はバルセロナの夜。

レジェンディア時代からこの海を知るヘンリー船長が、名誉船長として壇上へ立った。


「皆様。本船のパーティーへご参加くださり、ありがとうございます。我が愛船レジェンディアに続き、我が社の旗艦クリスタニアを愛してくださる皆様へ、心より御礼申し上げます」


 穏やかな声に、何人ものゲストが感慨深げに頷いた。


「今宵は、我が弟子キャプテン・ヴァルナー夫妻に代わり——我が船が誇る素晴らしいダンサーと、愛すべき友ロイヤルネイビーの若き中尉によるダンスから始めることにいたしましょう」


 大きな拍手と共に照明が落ちた。


互いに反対側から歩み出た二人は、中央で深く礼をし、静かにホールドを取る。


 その姿を見たリヒトとレイコは、思わず目を見開いた。


「素敵だわ……!」


「驚いたな。完璧なホールドだ」


 そこにいたのは、普段の子犬のようなフォックスではなかった。


 若きロイヤルネイビー士官そのものだった。


 低く情熱的な“黒い瞳”の旋律に合わせ、エレクトラは完璧なタンゴを踊り始めた。


 大きく上体を反らし、鋭く脚を振り上げる。


 そして、美しいホールドのまま流れるようにステップを踏む姿は、まるで駆逐艦そのものだった。


 海軍士官と踊るその光景は、ゲストにクリスタニアとロイヤルネイビーの深い絆を思い出させていた。


エディは、その姿を見つめながら複雑な表情を浮かべた。


(フォックス。君の気持ちはよく分かるんですよ…

あなたに出会わなければ……こんなに苦しむことはなかったのに、とね)


 黒い瞳の旋律が静かに終わると、ホールは大きな歓声と拍手に包まれた。


 フォックスは数歩下がると、エレクトラへ向かって敬礼した。


 エレクトラは、それを受けて深く膝を折る。


 そして、小さな声で言った。


「フォックス中尉。あなたが次に踊る時は、私をパートナーに指名してください。ロイヤルネイビーのパートナーを務めることは、最高の名誉ですから」


 フォックスは、静かに微笑んだ。


「あなたに相応しい踊り手になります。シードラゴンの名に賭けて」


その夜。


イギリスのハワード提督のもとへ、一通のメッセージが届いた。


『私を艦隊へ戻してください。今がその時なのです。

 ロバート・フォックス・ハワード』


 イギリスの夜は、星が美しかった。


暗闇に浮かぶ駆逐艦たちは、若者の覚悟を静かに受け止めるように佇んでいた。

レジェンディア史上最高のロマンスでもあった、リヒトとレイコのタンゴでしたが、

クリスタニア史上、おそらく最高のタンゴになるのは、エレクトラとフォックスかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ