砂漠の巨船—Brought to Light—
ブルーリッジサガのエピソードは、過去編でご覧ください
ニューヨークの、とある高層ビル。
ブルーリッジクルーズ本社が入るワンフロアの一室で、社長ハリス・ブライトマンと、大型船ブルーリッジ・ストーム船長ジェラルド・サリバンが向かい合っていた。
ジェラルドはソファーへ深く腰掛け、コーヒーカップを手にしたまま口を開く。
「in a dreamを、本当に買う気なのか?」
「買ってやる、と言った方が正しいな」
ハリスは資料の束を捲りながら笑った。
「ドバイから脱出出来ない超大型船。支出だけは膨大で、稼ぐことも出来ない。まして、あのDMCの船だ。船長のヘルムートは野心家で欲深い男だしな。今のまま恥を晒し続けるなど、耐えられる筈がない」
「まぁ、そうだな。だが、うちがあれを買うメリットはあるのか?」
「簡単だ。ブルーリッジ山脈の宝石にすればいい。ストーリー性も抜群だ」
ハリスは、机へ資料を放り出した。
「あのサイズを新造すれば莫大な金が必要になる。だがDMCは三億ドルで売りに出した。何がなんでも売り払いたいということだ。いい買い物だと思わないか?」
「それはそうだろうが、あのヘルムートがおとなしく従うとは思えんぞ」
「何を言っている。あの船の船長は、お前だよジェラルド」
ハリスはにやりと笑った。
「ヘルムートを叩き出して来い」
ジェラルドは肩をすくめる。
「つまり、お前はあの船を買った後のことまで、既に計画済みってことか」
「そういうことだ。サガをBMMへ売った時と同じように、更なる利益拡大へ繋がるだろう」
ハリスは壁の大型スクリーンへ目を向けた。
そこには、かつての所有船だったクリスタニアが映し出されている。
「とんだ暴れ馬だったが、BMMが気に入ってくれたおかげで、うちの品質を底上げ出来た上、日本行き航路まで作れた。結果、サガの建造費は、まもなく回収完了だ」
ジェラルドは低く笑う。
「うちのボスは、なんとも素晴らしいビジネスマンだな」
「親友の言葉が一番嬉しいな」
ハリスは机に置かれたBMMからの招待状を眺めながら続けた。
「それじゃあ、君に相応しい船名を贈ろう」
一瞬の間。
「“Brought to Light”——砂漠から掘り出された光だ」
その名を聞いた瞬間、ジェラルドは堪えきれず笑い出した。
「相変わらずいい性格だ!あの世でヴェガルドが、さぞ腹を立てることだろうよ」
同じ頃。
東京・晴海のBMM本社では、ソブリン出港を控えた日向キャプテンのもとへ、ある知らせが届いていた。
「……どういうことだ」
その声は低く、明らかに機嫌が悪い。
「ですから、社長が今回のソブリン航海へ同行されると……」
「そこではない」
秘書は一瞬言葉を詰まらせる。
「日向葵左衛門先生がお乗りになると……」
「何で祖父が乗るんだ……」
日向キャプテンは珍しく額を押さえた。
BMMでもっとも恐れられる男——日向葵一郎。
その男が、初めて部下たちへ見せた“困惑”の表情だった。
そして、その原因は——京都にあった。
珍しく日向キャプテンが困り果てていますが、日向キャプテンの意外な事実が明らかに。
続きをお楽しみに!




