賑やかな再会ークリスタニアはバルセロナへ
レジェンディアより愛をこめて
で、三人娘のワチャワチャをお楽しみいただけます。
こうして一週間後。エディとフォックスを伴い、レイコは再びクリスタニアに乗り込んだ。
タラップを上がった瞬間——
「レイコさぁーん♪」
「わぁ!ホントにママじゃん!」
「やったじゃん!キャプテン!」
懐かしい声が一斉に押し寄せる。
「ミカエラ!リサ!アレックス!クリスタニアに来てくれたのね!」
レイコは思わず声を上げた。
その横で、リヒトは額を押さえる。
「……静かに出来ないのか」
「むりー」
「無理無理!」
「だってめでたいじゃん!」
三人娘はまったく意に介さない。
「はぁ……」
その時、ヒールの音が規則正しく響いた。
「ほんと、あんたたちっていつになっても喧しいわね。ここはクリスタニアよ」
リヒトが顔を上げる。
「……エレクトラ」
「ヴァルナー、あんたもやっとパパになったのね」
軽く肩をすくめて笑う。
「日向キャプテンのご命令よ。しばらくの間、私たちが交代でロゼリアとクリスタニアに入ることになったの。長距離ではないけど、万全を期すようにって。」
「それは助かる。見ての通り、色々心配ごとがあるんだ」
「世話の焼けるキャプテンだこと。でも大丈夫よ」
エレクトラはにやりと笑った。
「中のことは私に任せて、あんたは船に集中してなさい」
その言葉に、リヒトは一瞬だけ表情を緩める。
「エレクトラ、君には感謝しかない」
「えぇ、ちゃんと感謝してちょうだい」
パンパンと手を叩く。
「さ、ゲストが乗船する時間よ!スタンバイして!」
三人娘が一斉に動き出す。
レイコはその様子を見つめ、目を輝かせた。
「あれがエレクトラさんなのね。素敵だわ……」
無駄のない所作、整えられた制服、流れるような歩き方。通路を進む姿は、まるでモデルのようだった。
「相変わらずだな」
リヒトは肩をすくめる。
「レイコ、部屋に行こう。俺はブリッジに入る」
振り返ると、フォックスがぼうっとしていた。
「ロバート、どうした?」
「は、はいっ!」
慌てて鞄を持ち直す。
「お姉様、行きましょう!」
エディは顎に手を当て、くすりと笑った。
「なるほど……これは面白い航海になりそうですねぇ」
⸻
部屋に入ると、空気が一変する。
毛足の長いカーペット。安定感のあるソファ。白薔薇の刺繍が施されたクッション。
「まるでレジェンディアのようだわ!」
「ヘンリー船長が指示したそうだ。君がいつでも思い出せるように」
レイコは嬉しそうに部屋を見渡した。
「それなら、船長夫人としてしっかり仕事しなくちゃね」
くるりと振り返る。
「お兄様、エンパイア出してくれない?ネイビーのあれよ」
「レイコ、今回はタンゴはダメですよ」
「ワルツにするわ。ノクターンよ」
リヒトがわずかに笑う。
「カナダで踊ったな。本当に大丈夫なのか?」
レイコは腰に手を当て、ふふんと笑った。
「久しぶりに、レジェンディア気分を楽しみたいの」
⸻
出迎えはリヒトに任せ、レイコはパーティーまでティータイムを過ごすことにした。
やがて出港時間が迫り、リヒトはブリッジへ向かう。
部屋には、エディとフォックス、レイコの三人だけが残された。
フォックスはカップを持ったまま、ぼうっとしている。
「ねぇ、ロバート。どうしちゃったの?なんだか変よ」
エディがすぐに口を挟む。
「フォックス、お兄様が聞いてあげますよ」
「ちょっと!お姉様もいるわよっ!」
フォックスは顔を真っ赤にして立ち上がった。
「な、なんでもありませんっ!」
そのまま部屋を飛び出していく。
「変なロバート」
「ま、そのうち分かりますよ」
エディは意味ありげに笑った。
⸻
低く長い汽笛が鳴る。
クリスタニアは社旗をはためかせながら、静かにサウサンプトンを離れていった。
いつかのレジェンディアのように。
フォックスは誰に恋したんでしょうねぇ。




