天使は抗議するーパパと行くの!
ルイとエリコ常務のベビー。
ブログでビジュアル公開しています。
とても可愛いので、ぜひご覧ください
フランス、マルセイユ。
岸壁には、白い船体に薔薇の花びらが散る艶やかな大型船「ロゼリア」が静かに佇んでいた。
「ブランシュ〜♪見てごら〜ん♪パパの船だよ〜♪」
ルイは赤ん坊の小さな手をそっと持ち上げた。
「とっても綺麗だろう?」
「まだ分からないわよ」
エリコは笑う。
「この子、寝るのが仕事よ。」
「そんなことないさ!この子はクリスタニアと旅したんだから!」
ルイは少し誇らしげに続ける。
「海は、覚えてる」
「ふふ。あなた、ずるい言い方ねー。」
エリコは視線をロゼリアに戻した。
「でも、本当。クリスタニアがいなかったら、こんなに素敵な景色は見れなかったわね。」
「クリスタニアに初めて会った時、マイアミで君に初めて会ったときと同じくらい、衝撃だった」
ルイは肩をすくめる。
「いや、もっとかもしれない」
「大げさよ。」
「本気だよ!」
少しの沈黙。波の音だけが寄せて返す。
「ねえ、ロゼリア。マイアミに行くかしら」
エリコはふと呟く。
「君が望むなら、どこへでも。」
即答だった。
エリコは笑って、何も言わなかった。
腕の中のブランシュは、スヤスヤと眠っていた。
⸻
同じ頃、サウサンプトン。
「いやよ!絶対に行くわ!」
レイコの声が先に飛んだ。
「レイコ!クリスタニアにはいつだって乗れるだろ!」
リヒトは両手を広げる。
「いやよ。今なの!」
一歩も引かない。
「あなたのキャプテンらしいところ、見せてあげたいの。汽笛も、エンジンの音も、全部!——これは胎教よ!」
「都合のいい言葉を使うな!」
リヒトは即座に切り返す。
「ソブリンと違って、クリスタニアにはヘリポートがないんだ!何かあったら——」
「この子はお利口さんだから大丈夫よ!」
「俺が大丈夫じゃない!!」
後ろで見ていたヘンリー船長が、こめかみを押さえた。
「……出港一週間前に、これか…。船長としては乗船許可できるが…」
「キャプテン!甘やかさないでください!」
リヒトが振り返る。
「ハァ…レジェンディアの頃から散々甘やかしてきたお前が言うな…。」
ヘンリーは溜息をつきながら続けた。
「社内規程では禁止されていない。条件つきだが。」
「主席は自分です!」
「ヘンリー船長が許してくれたのに!なんであなたがダメなのよ!」
火花が散る。だがどちらも目を逸らさない。
レイコはふっと笑って、お腹に手を当てた。
「ねえ〜♪お父様と行きたいわよね〜♪」
その瞬間だった。
「……!!」
レイコは固まった。
「どうした!
リヒトの声が低くなる。
「今…」
レイコは息を呑む。
「返事したのよ!」
「は?」
「動いたの!!」
リヒトは反射的に手を伸ばす。
触れた瞬間——内側から、はっきりと押し返された。
「……おい」
もう一度。今度ははっきりと、蹴る。
沈黙が落ちた。
「……頼む。いい子だからママと留守番してくれ」
返事の代わりに、また動く。
まるで『やだ!!』と抗議するように。
ヘンリーが堪えきれず笑った。
「はは……これは降参だ。天使が“乗る”と言ってる」
「キャプテン!」
「決まりだ」
ヘンリーは即断する。
「特別室を整えろ。医療連絡線も確保。——白薔薇の天使が乗船するぞ!!」
クルーが一斉に動き出す。
リヒトは額に手を当て、ため息をつく。
それでも手は離さない。
「……お前は、本当に——」
小さく呟く。
「ママそっくりだな…」
レイコが勝ち誇ったように笑う。
岸壁の向こうで、クリスタニアが社旗をはためかせていた。
船長室の天使は、いたずらっ子のように無邪気に笑っていた。
案の定、リヒトが心配症過ぎました。
リヒトパパと白薔薇の天使は、早くも仲良しのようです。




