聖女の苦悩ー大帝国の決断
企業再生の裏側と、エヴェリーナの苦悩。
漆黒の艦隊は、残存か消滅か。
その日、ロフォーテンは雨だった。遠くは白く霞み、輪郭がほどけていく。まるで夢の中のような景色だった。
エヴェリーナは一人、教会にいた。小さな礼拝堂には、雨垂れと風の音だけが満ち、質素な祭壇に灯る蝋燭の炎が揺れながら壁に影を落としている。
「神よ……わたくしはどうすればいいのでしょう。わたくしの思いなど、クリストファー様の負担にしかならないというのに……」
生きて欲しい。
その思いだけは確かだった。
だがエヴェリーナは、穏やかに過ごすクリストファーの姿を見て、それがこのまま永遠に続けばいいと思い始めていた。
自分の隣で安らかな寝息を立て、子供のように甘える姿は、おそらく自分だけしか知らない。
「神よ……いつか彼が戻る日が来たとしたら、わたくしは笑顔で見送る自信がありません……」
祈りは静かに、深く沈んでいった。
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その頃、イギリスでは更なる激震が走っていた。
“DMCホールディングス、ヴェガルド・ヘルストリーム氏死去。後継者クリストファー氏は?”
その見出しが、各所に踊る。
取締役たちは、決断を迫られていた。
「副社長を呼び戻すしかありませんな」
「さよう。急がねば、手遅れになる」
「ブラッドフォード様、いかがなさるおつもりですか?」
腕を組み、目を閉じていたブラッドフォードが、ゆっくりと口を開いた。
「私がしばらくCEOを務めよう。クリストファーが戻るかどうかは、本人次第だ」
「何ですと?!」
ざわめきが広がる。
「キャピタル・ウォーデンを含めた大株主たちは、経営陣の刷新を要求しているだけで、クリストファーを後継者にしろとは言っていない。彼を呼び戻すとしても、何もかも刷新してから、新たなDMCグループにすることが筋であり、責任だ。それまでに、彼はきっと自分を取り戻すはずだ」
「副社長の処遇はいかがなさるおつもりで?」
「そのままにしておこう。今の彼は、それすらも苦痛なのだから」
遠くで鐘の音が鳴る。
それは、大帝国の試練の時代の幕開けを告げる音だった。
おそらく…エヴェリーナとクリストファーは両片思い。
BMMとDMCは和解することが出来るのでしょうか。




