表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/57

生き直せーブラッドフォードの手紙

父失脚を知ったクリストファー。

生き直すことを選べるでしょうか。

シンガポールからおよそ半年。クリストファーは、ロフォーテンにいた。


「クリストファー様!どうにもフレルセルが言うことを聞いてくれませんで。今日は獣医が来る日だってのに、馬房に籠もって出てきやせん!」


厩務員が、額の汗を拭いながら訴える。

クリストファーは、フッと口元を緩めた。


「仕方のないやつだ。だが、俺も医者は嫌いだ」


 厩務員とともに馬房へ向かい、フレルセルに声をかける。


「フレルセル。俺も医者というものは嫌いだ。気が沈むからな。だが、お前も俺も、そうしないとエヴェリーナが心配する。そうだろう?」


 フレルセルは耳を動かし、抗議するかのように鼻を鳴らした。


「これが終わらなければ、外に出られないぞ」


 しばしの間のあと、フレルセルは渋々と頭絡を受け入れる。納得したわけではないが、クリストファーに鼻面を撫でられると、それ以上は抵抗しなかった。


「さすがはクリストファー様!あっしらじゃ、毎回蹴られるし噛まれるしで、手に負えませんで」


「それは何よりだ」


「定期健診なので時間はかかりません。乗られますか?」


「そうだな。馬装を頼む」


 馬房を離れ、部屋へ戻る。テーブルの上に、一通の手紙が置かれていた。


"マーカス・ブラッドフォード"


「……叔父上か」


“クリス。ヘルストレームの呪縛は終わりだ。君を私の養子に迎えたい。全ては君の選択だ。私は、君が笑顔を取り戻すなら、それでいい。”


それだけだった。


「ヘルストレームの呪縛、か……」


 手紙を置き、短く息を吐く。


(呪縛が解けたところで、俺の罪が消えるわけではない…)


 DMCに戻れとは書かれていない。ヘルストレームの名を捨てろと、それだけを示している。


 何度、そう望んだだろうか。


「……父が、失脚したのか…」


呪縛の終わり。それは、父の影響力の消失を意味していた。


「クリストファー様」


扉越しに、エヴェリーナの声がする。


「フレルセルとお出掛けになると伺いました。わたくしもご一緒してよろしいかしら」


「ああ」


 窓の外には、馬装を終えたフレルセルと、尾花栗毛の馬が繋がれている。


「見ない顔だな」


「あれは、わたくしの馬ですの。気性が荒く、何度も持ち主が変わりましたので引き取りました。あんなに大きいのに、今ではすっかり甘えん坊ですけれど」


(居場所がなかった馬か…)


「そうは見えないが。」


「馬も人も、いるべき場所に戻れば安らぎを知るものですわ」


 クリストファーは視線を外し、手紙を手に取った。


「……エヴェリーナ、話がある。」


 エヴェリーナはその手紙に目を通し、何も言わずに微笑んだ。


「あなたがどのような選択をなさっても、あなたはあなたですわ。わたくしは、いつでもあなたの帰る場所で在り続けるだけです。」


「俺の帰る場所……?」


「ええ。ですから、安心してお考えになればよろしいかと」


それだけ言って、彼女は部屋を出ていった。


クリストファーは、手紙を握りしめて溜息をついた。


(俺に、あの女の光を求める資格などない)


 生きる選択。未来への道。どちらも彼にとってはまだ荊のままだった。


 それでも——捨てることは、もうできなかった。

エヴェリーナとクリストファー。

そこに恋や愛があるかは分かりませんが、クリストファーにとっては大きな存在ではあるようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ